お互いの母親に、妊娠のことを話した福と宝。福の母・晴美(石田ひかり)と、宝の母・直実(美村里江)の反応の違いが印象的でしたが、2人の母親に共通していたのは、すぐに中絶手術を考えたこと。直実は宝の話に耳を貸さず、1人タクシーで福の自宅にかけつけます。福と晴美に息子の行動を謝罪し、晴美に中絶手術費用を渡そうとします。
母親にとって高校生は、まだまだ子どもなのでしょう。福と宝の問題だけれど、晴美と直実は当人たちの意思をさておいて、大人同士で話を進めようとします。それは、保護者としての責任感からなのかもしれません。
これからのことを2人で1つ1つ決めよう、と約束した福と宝。親たちに「まだ子どもだから」と意見を聞いてもらえないことに、福も宝も苦しさやもどかしさを感じているようでした。
直実に「家で待ってなさい」と言われた宝でしたが、ノートを握りしめて福の自宅まで走ってやってきます。そして、晴美と直実に「2人で考えて選びたい」と話しますが、直実からは「未成年の2人には子どもを産むか産まないかの選択肢なんてない」と言われてしまいます。特別養子縁組、里親制度や乳児院の選択肢もあるという福と宝に「人に渡す前提で何のために産むの。妊娠も出産も命がけ」と話す直実の言葉は、まさに正論です。
「何ヶ月もおなかのなかで育てて、産まれたとき、どんな気持ちになるか……」と宝を見つめ、うつむく直実。親の立場で見ると、直実のこの言葉と表情には涙が出ました。直実も福と宝を責めたいわけではなく、ただただ2人の未来が心配なのではないでしょうか。
それでも、福と宝は母親たちに「どうすればいいか、自分たちで考えて探す時間をください」と頭を下げます。そこで直実に「私たちも、考えて探しませんか」と提案する晴美。「福は大切な娘だから、できるだけ傷つかない方法を一緒に考えて、探してくださいませんか」と、中絶費用を返します。福から妊娠のことを聞いたときには「何も心配しなくていいから、一緒に病院へ行こう」と言っていた晴美ですが、福と宝が「考えて決めたい」と切に訴える姿を見て、考えが変わったのでしょうか。
この4人の緊張感のあるシーンから切り替わって、ほっこりさせてくれたのはインタビュー映像で登場した飯田(河野純喜)でした。定食屋で食事しながらインタビューに応えるようなシーンです。ごはんをたくさんほおばる男の子って、見ているだけで幸せな気持ちになるのはなぜなんでしょう。片手に箸を持ちながら「矢沢の顔も声も性格も全部が大好き」とまっすぐ言葉にする飯田。このシーンは、きっと河野さんファンにはたまらないですよね〜。大好きな矢沢が、自分らしくいられるようになったのは、福がいたからだと話す飯田。「だから、福には感謝してる」とクラスメートへの思いをのぞかせます。
さて、次回はついに福の父・慶(野間口徹)が登場する模様。福の兄・幸(野村康太)が鼻ピアスを開けたときに、すぐリモート家族会議用URLのメッセージを送ってきた父です。予告で見るからにくせが強そうな父……波乱の予感がします。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。