調べてみよか

【レコードブーム】給料の〇か月分!オリジナル盤の人気

2024.12.11

【レコードブーム】給料の〇か月分!オリジナル盤の人気
世代問わずに需要が高まっているアナログレコードの魅力についてリサーチする、「みよか」の特集第2弾。前回は、大阪・天満橋でワインとレコードの販売・提供を行う「salvis(サルビス) wine&records」(大阪市北区天満)の店主・野口一知さんに話を聞きました。【レコードブーム】ワインとレコードを楽しむ大阪・天満のお店

そして今回取材したのは、アナログレコード、CD、DVD、音楽ソフトなどを販売している「ディスクユニオン大阪店」(大阪市北区堂山町)のスタッフ、岸本新也さん。同店ではどんなアーティストのアナログレコードが人気なのか。アナログレコード市場の“いま”について詳しく話を聞きました。

アナログレコードコーナー(ディスクユニオン大阪店)

若者の間で広がるレコード人気、その背景とは?

取材をおこなったのは、平日の14時過ぎ。それでも店内のアナログレコードのコーナーには、たくさんの人が商品を見ています。岸本さんは「平日でもたくさんのお客様にお越しいただいています。週末は特に店内は賑わい、廃盤セールなど貴重なものが店頭に並ぶ際は開店前から行列ができるので整理券を配布しています。レコードの売上も年々、上昇しています」と活況を説明。

近年は、アナログレコードに慣れ親しんだ世代はもちろんのこと、10代、20代にもレコードは浸透しています。岸本さんはその理由について、レコードプレイヤーが手軽に購入できるようになったことを挙げます。

「以前に比べるとプレイヤーも手に入れやすくなりました。それが、若い方がレコードを手にする機会が増えた要因の一つではないでしょうか。現在の音楽の聴き方も、サブスクとレコード、もしくはCDとレコードという組み合わせが多い印象です。この10年はそのように聴き方の幅が広がっていいます」

そんなアナログレコードには、二つの状態の“盤”に大きく分けられます。一つは「新しくプレスされたもの」。分かりやすく言うと「新品」です。かつてレコードとして販売されたタイトルを再製造・再販売したり、アーティストが新曲発表時にサブスク、CDに加えてアナログレコード盤もリリースしたり。それらが「新しくプレスされたもの」にあたります。

もう一つは「オリジナル盤」。俗に言う「中古盤」で、発売当時のものがそのまま中古市場に出回っています。ただ岸本さん曰く、アーティストによってはこのオリジナル盤の人気が非常に高いのだそう。

「発売当時の帯の“売り言葉”などが新品・再販のレコードとは違っている場合もあり、希少価値が上がります。また、オリジナル盤はお金を出せばいつでも買えるというわけでもありません。発売当時に販売枚数が少なかったタイトルは中古市場に出回ることもほとんどなく、現在手に入りづらいこともあって、高額になるんです。あと音質にも異なりがあります。プレスやマスタリング(音源加工・編集)も昔と今とでは技術が変化しており、そういうところに価値を見出す場合もあります」

オリジナル盤の中には、給料数ヶ月分の価値があるものも

特に人気があるアナログレコードは、世界中でよく聴かれているシティポップ。山下達郎、竹内まりや、大瀧詠一らのオリジナル盤はもともとよく売れていましたが、その勢いは近年加速していると言います。一方、海外アーティストで長年トップを走っているのは、ビートルズのオリジナル盤です。

岸本さんは「値段ははっきりと言いづらいのですが」と苦笑いを浮かべつつ、「高額のタイトルはいずれも、1ヶ月から数ヶ月分のお給料になると思います」と明かします。そんな高額であれば、ビートルズのアナログレコードを持っている人は「もしかすると高く買い取ってもらえるのでは?」と思うのではないでしょうか。ただ、どのようにしてそのレコードがオリジナル盤かどうかを見分けたら良いのでしょう。

「ラベルの色、ジャケットがコーティングされているかどうか。あと、帯にこういう“売り言葉”が入っているかとか。発売日の表記を確かめるのが早いですが、それでも自分が持つレコードの価値が知りたい方は、ディスクユニオンには専門スタッフがいますのでお気軽に尋ねてください」

シティポップと呼ばれ人気再燃するJ-POP

レコードの魅力は「聴くときの行為・動作」

取材に応じてくれた岸本さんも、もちろんアナログレコードを愛聴しています。岸本さんはレコードを聴く際の動作・行為に魅力を感じていると語ります。

「レコードは片面が長くても25分くらい。A面が終わったら、B面にひっくり返さないといけません。だから自然とその時間はレコードから流れる音楽とじっくり向き合うことになる。またそうやってA面、B面という風に“始まり”が2度あるのもおもしろい。このような聴くための行為・動作は、アナログレコードならではのもの。どこかコーヒーを淹れる行為に似ているかも。つまり、ちょっとした手間をかけることで生まれる味わい深さなんです。必ずしも便利がすべてではないことが、レコードを聴いていると気づかされます」

つい先日、ほとんどのビデオテープが経年劣化による“寿命”で観ることができなくなる「VHS 2025年問題」の報道が話題になりました。ただDVDはビデオテープよりも寿命が短いそう。そこで「ではCDはどうだろう」と調べると、こちらも経年劣化しやすいという意見がありました。その点、アナログレコードはオリジナル盤がずっと聞き継がれていることを考えると、保存状態さえ気をつければ、かなり長く聴くことができるのではないでしょうか。岸本さんも「レコードがなくなることはない気がします」と口にします。

「たとえば現在、主流となっているサブスクも販売元の判断次第で聴くことができなくなる場合があります。多くの音楽はそういった状況と隣り合わせなのかもしれません。しかしレコードは100年以上前からあるものですし、丁寧に扱えばずっと聴き続けることができます。つまり、永遠に残せる可能性がある。そういったことも理由として、多くの人はアナログレコードにたどり着くのかもしれません」

ディスクユニオン大阪店(大阪市北区)
岸本新也さん 2024年11月

新品を手にいれるも良し、オリジナル盤を探し出すも良し。そのアナログレコードの価値を高めるのは、あなた次第なのではないでしょうか。

取材・撮影:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
ディスクユニオン大阪店
平日 12:00-20:00 / 土日祝日 11:00-20:00
大阪市北区堂山町15−17 ACTⅢ 1F 
06-6949-9219
https://diskunion-dok.blog.jp/
miyoka
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