【レコードブーム】ワインとレコードを楽しむ大阪・天満のお店
2024.12.04
そこで「みよか」では、「アナログレコードの楽しみ方」をより身近に、そして程よくマニアックに感じられる特集を3回に渡ってお届けします。
今回はその第1弾。大阪・天満橋でワインとレコードの販売・提供を行う「salvis(サルビス) wine&records」(大阪市北区天満)の店主・野口一知さんに話を聞きました。
salvis(サルビス)wine&records(大阪市北区天満)
野口一知さん 2024年11月
「みなさんにとっての“1枚目のレコード”を提供したい」
ワインは分かりますが、なぜレコードも販売・提供することにしたのでしょうか。その理由は、野口さんがレコードを集めるようになった大学時代まで遡ります。先輩からドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』(1982年)のアナログレコードをもらい受け、「紙ジャケットだし、盤も傷つけたくないし、どこか神聖な感じがしました」と魅力的に思うようになり、レコード店へ足を運びはじめたと振り返ります。
ただ野口さんの印象では、専門レコード販売店の店主さんはどこか話しかけづらい雰囲気があったと言います。「最初はどんなレコードを買えば分からないからいろいろ聞きたかったけど、みなさんちょっと怖そうで」と苦笑い。それでもめげることなく、いろんな店を巡るうちに「レコード探しのおもしろさに気がついた」のだと語ります。
「それでも、店員さんに『どういうレコードを買えばいいですか』と聞きづらかった思い出は強く残っています。『こういうことを聞いたら怒られるんじゃないか』『分からない、というのが恥ずかしい』という方は、自分だけではないはず。だからこそ『なんでも聞いてくださいね』と言えるお店を自分で作りたかったんです。特に『レコードプレイヤーを購入してみたけど、1枚目にどんなレコードをかけようか』と迷っている人は、ウチへぜひお越しください。みなさんにとっての“1枚目のレコード”をお勧めしたいです。そうやってレコードをお勧めするのは、お客様のリクエストに応えてワインを選んできた経験と重なるものがあります」
お勧めのレコードとワインを“ペアリング”、アルバムタイトルと同じ名前のワインも
「たとえばプリファブ・スプラウトの青春ど真ん中な名盤『スティーヴ・マックイーン』(1985年)には、この『Trompette(トロンペット)』が合うのではないでしょうか。伝統産地であるボルドーで若い方が今からワインを作りはじめるイメージはあまりないのですが、『Trompette』はそのボルドーで、自分たちの畑で育てるのではなく、フランス全土の信頼できる契約農家さんから購入するぶどうで若者たちが作るワインなんです。つまりプリファブ・スプラウトの青春群像劇みたいなレコードには、そういった野心あふれるワインが良いと思います」
野口さんが特に絶賛する“ペアリング”は、グレイトフル・デッドの1970年発表曲と同じ名前のワイン「Sugar Magnolia」です。スペインの生産者夫婦が手掛けるワインで、なんでも醸造所にはターンテーブルも置いてあるとのこと。ワインのラベルをよく見ると、同曲の歌詞の一節も。
野口さんによると音楽好きの生産者はたくさんいるようで、「多く目立つのは、ピンク・フロイドが好きな生産者。ワインはいかに伝統を打ち破るかという精神性も持ち合わせています。だからこそ生産者はピンク・フロイドみたいな前衛的な音楽に刺激を受けるのでしょうね。先ほどお話した『Trompette』の生産者も、1977年発表のアルバムと同じ名前の『アニマルズ』というワインを作っていますし」と紹介してくれました。
salvis wine&records 2024年11月
アナログレコードは手放すことも大切、そして新しいレコードがお気に入りに」
しかし、売り物なのでいつかは手元からいなくなってしまうはず。そのことについて質問すと「アナログレコードはそれがいいんです。僕はレコードのコレクターありながら、手放していくことも大切だと考えています。手放すから、違うレコードが入ってきて、また自分のお気に入りなる。そうやって好きなレコードが順繰りで誰かの手に渡っていくという循環が、レコードを扱うおもしろさなんです」とうれしそうにレコードを眺めました。
ちなみに「salvis wine&records」では、棚の一部が“隠し部屋”に通じる扉になっています。「ウラサル」と呼ばれるその一室は、座り心地が良さそうなソファ、野口さんがお酒を作ってくれるカウンター、そしてもちろんレコード機材が設置されています。また壁にはお店を訪問してきた生産者たちのサインも。そこで開かれるのは、レコード好きが集まる会「おれおま」。毎回、決められたテーマに沿って参加者が「おれの2曲」を持参し、ラジオジョッキー感覚で曲紹介。そして「おまえの2曲」を聴く。ルールは、相手を否定しないこと。「こういう曲もええやん」と素直な気持ちでレコードと曲に耳を傾ける。開催は約3ヶ月に1度。野口さんは「聴き専門で『ききおま』というのもあります。気になる人はInstagramなどで質問してください」と呼びかける。
取材・撮影:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
salvis wine&records 2024年11月
12:00-20:00 水曜日休み
大阪市北区天満3丁目3-18 順源ビル1F
06-6356-7072
HP:https://salvis.theshop.jp/
※ウラサルの利用は完全予約制
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