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2024.12.18
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最後はあらためて、いつ頃から、なぜアナログレコードが世代問わず浸透するようになったのかを分析したいと思います。
中古&廃盤レコード・CDフェス(阪神梅田本店)
2024年12月
ウォークマン、iPodなどの登場で音楽は持ち運べるものに
なかでもソニーの大ファンだった元Apple最高責任者のスティーブ・ジョブズは28歳のとき、盛田昭夫会長(ソニー創業者)からウォークマンをプレゼントされた際、音楽を聴かずに自宅で分解・研究した逸話が残っています。そんなジョブズがのちに、「1000曲をポケットに」というメッセージを込めたポータブルデジタルプレイヤーのiPodの開発に携わり、街のいたるところにたくさんの音楽を解き放ったのはとても興味深い話です。
そのように音楽は手軽なものとなり、「内」から「外」へと広がっていったのです。
コロナ禍、「おうち時間」を充実させるという動き
そんな時期と、アナログレコードの人気再燃は重なります。日本のみならず世界的にレコードの売上が増加したのです。ちょっと手間暇をかけてなにかをやる、ぜいたくさ。レトロなものの温かみ。「おうち時間」はそういったことと向き合うきっかけになったのではないでしょうか。そのなかの一つとして、アナログレコードの熱の高まりがあったように思えます。
長年、夏と冬の年2回「中古&廃盤レコード・CDフェス」を開催している百貨店「阪神梅田本店」で催事などを担当している蓑輪菜津子さんは、コロナ禍をきっかけとする変化についてこのように話します。
「コロナ禍の制限が緩和されたタイミング(2023年)で、当催事のお客様の数もグッと増えた印象があります。コロナ禍、「おうち時間」を充実させるという動きのなかでレコードブームがやってきたと言われています。ただ「中古&廃盤レコード・CDフェス」に関しては、昔からレコードに親しんできた世代の方がお客様の中心だったこともあり、コロナ禍では外出を控える傾向があったように感じます。しかし制限緩和があり、従来のお客様がまた足を運んでくださるようになったほか、コロナ禍でレコードを聴くようになった新しいお客様もご来店いただくようになりました。それまであまり見かけなかった10代のお客様、お一人でお越しになる女性のお客様もたくさんいらっしゃいます。いわゆる「レコード好き」の数が増え、当催事も平日、休日の時間帯問わず大きな賑わいとなっています」
中古&廃盤レコード・CDフェス(阪神梅田本店)
2024年12月
「40代になって新しい趣味を見つけることができました」
また、レコード歴1ヶ月未満の40代男性は、高校生のときにスピッツのアナログレコードを購入したものの、プレイヤーを持っていなかったため、封を開けずにずっと保管していたと話します。ところが12月に誕生日を迎え、パートナーの方に「プレゼントはなにが欲しい?」と尋ねられてレコードプレイヤーをリクエスト。そこで長年温めていたスピッツのレコードを聴き、魅力に目覚めたのだと言います。
男性は「40代になって新しい趣味を見つけることができました。休日にはレコード屋さんを巡るようになりました。お店には何十年も前に発売されたものが並んでいるので、宝探しみたいな気分になれるんです。買っても、買わなくてもいい。レコード屋さんでなにかを探すということ自体が楽しいです」と答えてくれました。
中には高額な値付けがされているレコードも
2024年12月
レコード人気で、音楽は再び「外」へ
「阪神梅田本店」の蓑輪菜津子さんも「インテリアとしての用途はもちろんのこと、TikTokなどのSNSで自分のお気に入りのレコードを紹介する方もいらっしゃいます。またクラブなどでDJをされている方も、レコードでプレイする機会が増えたのか、「中古&廃盤レコード・CDフェス」によくお見えになっています。楽しみ方が広がったことで、お客様の層にもかなりのプラスアルファがあります」と近況を口にします。
音楽はもともと自宅で聴くものでした。しかし「内」のものだった音楽が、ウォークマン、iPodといったプレイヤーのコンパクト化が進んだことで、手軽に持ち運べるようになりました。加えて楽曲がデジタル配信され、サブスクなどで聴くことができるようになったのも大きな影響を及ぼしました。
しかしコロナ禍であらためて音楽を自宅で聴く機会が増えました。そのなかで「豊かな音楽鑑賞の仕方」を求めた一つの結果が、アナログレコードの人気再燃に繋がっているのかもしれません。そして現在、人々はお気に入りのアナログレコードを見つけるために、いろんなところへと出かけています。そう、また違った形で「外」へと向かっているのです。
中古&廃盤レコード・CDフェス(阪神梅田本店)
2024年12月
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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