食べてみよか

「演出家は全員自称」という衝撃の事実「ギャンブラー」を続けて“半世紀” 資格不要の「演出家」が教える、いつもの明太子パスタを“特別”に見せる魔法

2025.08.28

「演出家は全員自称」という衝撃の事実「ギャンブラー」を続けて“半世紀” 資格不要の「演出家」が教える、いつもの明太子パスタを“特別”に見せる魔法

▶はじめに:「演出家」って一体何者?

「演出してみる」
私は日本演出者協会、関西ブロックという集団のブロック長と、協会自体の理事をやっています。
ものすごく大層な協会みたいな感じですが、要するに舞台の演出家の集まりです。「演出家って何ですか?」とよく聞かれますが、要するに芝居やミュージカル、ダンスなどを総合的に見て、色々決めていく仕事です。

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▶能・狂言・歌舞伎に「演出家」がいない日本の特殊事情

演出家という仕事が確立してきたのは近代の事で、昔は主演俳優が自分の舞台をどう見せるかということを決めていました。

演出兼主演。

なかなかできないことのように思われるかもしれませんが、日本の古典芸能の世界では今でも演出家という職業はありません。

能、狂言、歌舞伎、文楽などは今でも主役や年長者の指導があるだけで演出家は存在しないのです。

たまに新作を制作すると演出家が呼ばれることもあります。他の国の古典の世界には外から見て演出するポジションがあるので、これは日本独特の世界と言えるでしょう。

▶演出家に「資格」はいらない

ところで皆さんは、演出家という仕事はどうやったらなれるのか?という疑問がおありでしょう。ここではっきりお答えしときますが、演出家に資格はありません!
はい、そうなんです。誰でも「私は演出家です。」と言えば、その日から演出家になれます。日本演出者協会には全国500人もの演出家である協会員がいますが、全員「自称」です。

▶日本に演出家を育てる学校はない

だいたい日本には演出家になるための教育機関がありません。時々、芸術系の大学に「舞台芸術学科、演技・演出コース」なんてのがありますが、実際には演出は教えていないのが現状です。

以前京都の大学で教えていましたが「演出家になりたくてこの大学に入ったんですけど、俳優のやることを知らないと演出は出来ないって言われて、結局普通に俳優の勉強をしています」と言った生徒がいました。
私は出来る限り彼女に助言しましたが、実際に演出を教えるチャンスはありませんでした。

▶誰も教えてくれない。だから皆、手探りで道を切り拓く

日本では、ともかく芝居を前から見て、俳優の立ち位置、音楽や照明、美術セット、衣装、小道具をどうするか決めていくところから始まって、だんだんと演出を覚える。

つまり皆が手探りで始めて、独自のやり方を確立するのです。どんな職業でも専門の修行や、勉強、研究を重ねて、人に教える立場になっていくものですが、演出家はとりあえずやってみるスタイルで経験を積むというギャンブルみたいな恐ろしい職業です。

▶「この人もギャンブラーか」と思ってください

「これでいいのかな?」と日本中の演出家が自分自身を疑っていることでしょう。当然、私もそのひとりです。これから演出家を見たら「ああ、この人もギャンブラーか」と思って頂いても構いません。

▶そんな無謀な職業に一筋の光?「演出を教える」という画期的な試み

そんな無謀な仕事なのですが…演出者協会で行っている「演劇大学」というワークショップがありまして、この度、沖縄の会員さんが「演出を教わる」というコースを企画したのです。オンラインで6回やって、対面で2日間。最後には自分の演出プランをプレゼンするという画期的なものです。
戯曲を教えるワークショップはよくあるのですが、演出を教えるということは今までありませんでした。考えてみたら演出者協会なのに、何やってたんだろう?と思いますが。

▶「教えることは教わること」沖縄の若者と向き合う日々

そんなことで今、沖縄のK君23歳と、Cちゃん18歳にオンラインで演出家の仕事とは?というワークショップをしています。

まずは演出家が打ち合わせをする人たちの仕事と役割を確認するところから始めました。ざっと書きだしたら主だった相手が30以上あり、改めて自分がいつもこんなにたくさんの人と対峙(たいじ)してるのかと驚きました。
教えることは教わること、何事も勉強ですねぇ。

▶気づけば芝居人生50年。長く続けたギャンブル

彼らが今後どんな大人になっていくのかは分かりませんが、演出家の仕事は相対的に物事を捉え、形にしていくために様々なことを知り、決めなくてはなりません。

それはどんな仕事をするにしても役に立つはずです。50年前にこういうことを知りたかったなぁと思いながら向き合っている最中です。そして書いてて気が付きましたが、私は芝居を始めて今年で50年経っていました。長くギャンブルしてきたようです。

▶さて、今日の食卓を「演出」してみませんか?

さて、料理にも演出が役に立ちます。何でもない食材を引き立てるのは美味しそうに見える色合いが大切です。食べ物の色や、食器の色、形でコンビニで買ってきたものを盛るだけでも特別に見えるものです。今日は色合いを重視して作ったものをご紹介しましょう。

【紅白サラダ】
食材の彩りをいかしたお手軽&時短レシピ「紅白サラダ」/わかぎゑふの料理コラム

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(材料)
・白いトウモロコシ
・ミニトマト
・レタス

★北海道から生で食べられる白いトウモロコシが届いたので、ミニトマトと盛って、紅白にした一品。ポテサラやマカロニと合わせてもいいと思います。おめでたい日にさりげなく紅白のものを食卓に並べてみるのもいいかもしれません。

【明太子パスタ】
食材の彩りで食欲を引き立てるお手軽レシピ「明太子パスタ」/わかぎゑふの料理コラム

食材の彩りで食欲を引き立てるお手軽レシピ「明太子パスタ」/わかぎゑふの料理コラム

(材料)
・明太子2腹
・大葉2枚
・トウモロコシ
・レタス
・ヨーグルトソース

(作り方)
① 300㏄の水に麺つゆ大さじ1と塩少々を入れて沸騰させたら、パスタを入れてゆでる。
② ゆで上がったら明太子とオリーブオイルで和えて、トッピングに千切りにした大葉を散らす。
③ レタスとトウモロコシのサラダは、無糖ヨーグルトとマヨネーズ、塩少々を混ぜたヨーグルトソースで。
★ 明太子パスタのピンクに緑の大葉、レタスの緑とトウモロコシの黄色に白いソースをあしらうことで、夏らしさを演出してみました。
わかぎ ゑふ(劇作家・演出家)大阪府出身。
関西小劇場界の老舗劇団、「リリパットアーミーII」2代目座長。
芝居制作処、玉造小劇店の代表。
大阪弁のオリジナル人情劇を数多く手掛けている。古典への造詣の深さも有名で
落語、歌舞伎、新作狂言の作、演出や衣裳デザインなども手掛ける。
小劇場から大劇場まで縦横無尽に活躍する数少ない女性演出家の一人。
エッセイも多数出版。2023年には大阪市民表彰を受賞した。
miyoka
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