行ってみよか

デ・キリコ展 内覧会レポート(神戸市中央区)

2024.09.15

デ・キリコ展 内覧会レポート(神戸市中央区)

とにかく面白い。不思議だらけのデ・キリコの世界を旅しよう

卵形のつるんとした顔のない人間の絵を見たことありませんか?きっとそれがデ・キリコだと思います。
顔のない人間、どこかゆがんだ空間、なんでここにこれが?と思わせる、どこか不安で神秘的な絵画。もしそれらが頭に浮かんでいたら、それがデ・キリコの「形而上(けいじじょう)絵画」かもしれません。
幻想的な風景や静物をモティーフに非日常的な世界を表現する、のちにシュルレアリスムなど前衛芸術に影響を与えたスタイルです。

ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)は、1910 年頃から、シンプルな構成で広場や室内を描きながらも、ゆがんだ遠近法、一見すると脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって、「日常の奥に潜む非日常」を表した絵画を描き始めます。後に「形而上絵画」と名付けた1910年代の作品は、サルバドール・ダリといったシュルレアリスムの画家をはじめ、数多くの芸術家にショックを与えました。1919年以降は伝統的な絵画技法に興味を抱くようになり、古典絵画の様式へと回帰していきます。それと同時に以前の形而上絵画の題材を取り上げた作品もひんぱんに制作するなど、なんと90 歳で亡くなるまで創作を続けました。

展示風景 © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

さあ、デ・キリコの作品とともに不思議な旅に出ましょう。

第一章 自画像・肖像

画家ってよく自画像を描きますよね。中でもデ・キリコの作品は面白いですよ。屋外の公園をバックに昔の衣装を着たコスプレ自画像です。大きい作品もあり、これを家の中に飾ったりしたのかしら…なんてことを思いながら進んでいきましょう。まだゆがんでないですよ。

《17世紀の衣装をまとった公園での自画像》
1959年、油彩・カンヴァスジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

第二章 形而上絵画

もはやすでに個性が爆発です。視覚的にどう見ても違和感のある遠近法で描かれた静物画や風景画。そしてキター!卵型のつるんとしたカオナシが。カオナシは正しくは「マヌカン(マネキン)」です。表情がないのにどこか寂しげに、そして不安げに見えるのは、こちらの心持ちが影響しているのかしら…。解説を見ていると、デ・キリコがマヌカンを描き始めたのは第一次世界大戦勃発後。無差別に命を奪われた多くの人がいる中、感情を持たないマヌカンを通して、静かながらにも内に秘める激しい怒りや苦しみや嘆きを代弁しているのでしょうか。

この第二章の部屋にはマヌカンを集めたエリアもあり、いろんな時代のマヌカンを見比べることができます。
第四章の部屋のテーマですが、デ・キリコが伝統的な絵画に回帰した時代がのちに訪れます。その時描かれたマヌカンが二人より添っている《南の島》には、細やかな筆の運びに印象派の巨匠・ルノアールから受けた影響が感じられますね。

《南の歌》
1930年頃、油彩・カンヴァスウフィツィ美術館群ピッティ宮近代美術館
© Gabinetto Fotografico delle Gallerie degli Uffizi © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

第三章 1920年代の展開

ここもまた不思議と謎だらけの作品群が集まっています。屋外にあるはずのものが中にあって、屋内にあるはずのものが外にあって。もう、ここまできたら「常識」とか「普通」というのは投げ捨てて、違和感だらけを楽しみましょう。その先に何か感じ取れることがあるかもしれませんよ。

展示風景 © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

第四章 伝統的な絵画への回帰:「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ

一番目を引くのが横たわって水浴をする裸婦の横長の絵画です。ルノワールのパロディではないです。ゆがませたり、カオナシを描いたり、謎だらけの配置でぶっ飛び続けたデ・キリコは、ここで伝統的な絵画表現に戻っていくのです。過去の巨匠たちの傑作を硏究して、19世紀のフランス絵画を強く意識した作品を描きます。違和感だらけで頭がパンクしそうな旅の途中、ちょっとここで一息つくこができます。

《横たわって水浴する女(アルクメネの休息)》
1932年 油彩・カンヴァス ローマ国立近現代美術館

第五章 新形而上絵画

90歳で亡くなるまで制作していたのですから、最後の10年余りといっても70歳超えてます。
もうデ・キリコは爆発しちゃいます。若い頃に「形而上絵画」という手法で遠近感がおかしい広場やカオナシの「マヌカン」や外にあるものを部屋の中に入れちゃったりした、そういう不思議だらけの作風を進化させます。当時描いたモティーフを改めて配置するなど、過去の作品を再解釈した新しい境地に到達したようです。「羊かと思ったら瞑想する人やん」とクレジットを見て膝がガクンとするような絵は1971年、83歳の時の作品…。会いたかったな〜、デ・キリコ。

《瞑想する人》
1971年、油彩・カンヴァス ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

デ・キリコとの不思議な旅を終えたら、楽しいグッズ販売エリアです。特にTシャツはデ・キリコの絵の具のトーンともよく似た色がベースになっていて、センスのいい街着になると思います。
グッズを堪能したら近くにはおしゃれカフェもたくさんあるし、中華もいいし。神戸の街で一日楽しんでくださいね。

デ・キリコ展 神戸市立博物館 2024年9月

開催概要

デ・キリコ展
【会期】2024年9月14日(土)~12月8日(日)
【会場】神戸市立博物館[神戸市中央区京町24番地]
【開館時間】9:30~17:30 ※金曜日、土曜日は20:00まで 展示室への入場は閉館の30分前まで
【休館日】月曜日、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
(ただし9月16日[月・祝]、9月23日[月・振休]、10月14日[月・祝]、11月4日[月・振休]は開館)
https://www.ktv.jp/event/dechirico/
 
   

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miyoka
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