Q:本作はオリジナル作品で、主人公も当て書きですが、磯村さんが演じた健治はいかがでしたか?
大森: 1話を初めて見た時に、思っていた以上に男っぽくて、それでいて傷つきやすそうで、私の想像から飛び出していたこともあり「わあ、こんななんだ健治くん」と正直ドキドキしましたね。
これから先も大切に作っていかなきゃという気持ちが余計に増しました。私は、こういう人がそばにいたらいいな、と思える人を描くのですが、力強く男っぽいところがありながら、1歩間違えたら崩れてしまうような危うさや儚(はかな)さもあって。一緒に大切に進んでいきたいなと、1話を見たときに強く思いました。
「健治はこんなふうになるんだ」と毎回ドキドキしながら見ていて、刺激的でした。
磯村: 大森さんと一緒に話し合いながら役を作っていける、というわけではなかったので、すごく面白いですよね。
脚本家さんが思い描いていた健治と、実際に自分が演じてみる健治というのは、予想通りの部分もあれば、そうじゃない部分もあったりして。
「健治をこう演じます」と報告はしないですが、自分が演じて映像になることで、ひとつの報告になりますし、こういったことが脚本家さんとの会話だと思っています。
刺激的な時間を2人で過ごさせていただきました(笑)健治は僕も出会ったことのない、新しい挑戦的な役でもあったので、脚本をいただいて咀嚼(そしゃく)していくことは非常に難しい作業でしたが、刺激的でした。
大森: うれしい。
Q:大森さんはこのドラマが健治の成長物語だと話されていましたが(「社会に復讐(ふくしゅう)しなくていい」 脚本家・大森美香が『ぼくほし』に込めた私たちへのエール(後編))、磯村さん演じる健治のうれしい成長ぶりや変化などを教えてください。
大森: 一番、成長したなと感じたのは、先日放送された10話の中で、それまでは自分を守りたいという気持ちがいっぱいあった中で、生徒のために1歩踏み出そうと思える人になったところが良よかったねと思いました。
家庭裁判所のシーンで一生懸命に奮闘している健治さんを見て、「いいぞ、頑張れ」という気持ちになりました。
生徒の斎藤さんが「不処分」になった時、わーって喜ぶんじゃなくて、ほっとしている健治さんの姿を見て、もう少し喜んでいいかもしれないけれど、現実としてはまず1つ乗り越えたと感じていたところに、成長したねという気持ちになりました。
堀田真由さんが演じる珠々さんとの関係性も、向こうから来られるばかりだったのが、少しずつ積極性を帯びてきているところも、成長を感じています。
磯村:大森さんがおっしゃる通り、終盤である9話から最終話にかけて、健治の行動や生徒に対する言葉が、最初の頃とは比べ物にならないぐらい自立してきているし、自分を犠牲にしてでも誰かを救いたいと思えることは、ひとつの大きな成長だったと思います。