――あともう一つ、第5話の久留島先生(市川実和子)の「これは私の社会へのリベンジだから」というセリフに、大森さんの思いがすごく乗っているように感じます。もしかしたら『ぼくほし』は、大森さんの現代社会へのゆるやかな挑戦状なのかもしれないと思ったセリフでした。
大森: 照れますね(笑)。一番の思いは、ドラマを見た人に少しでも楽しい気持ちになってほしい。応援したいんですよね。社会に復讐(ふくしゅう)しなくていい。ただ、応援したい。みんなが生きづらい世の中で、どの作品の中にも「明日はいい日になるといいですね」「どうお過ごしですか?」みたいな気持ちが根底にあります。『ぼくほし』は、より多くの人に対して、そう思っています。
岡光:山口監督とクランクインする前に、明日死のうと思っていたけれど、このドラマを来週見るまで死ねないな……と思えるような作品をつくりたい。そういう人達の心を救えるドラマをつくりたいですねと話していて。
大森:そうそう。
岡光:健治さんも珠々さんもそれぞれ不完全で、生きづらさがあって、生徒たちにも、先生にもさまざまな悩みがある。でも欠けているもの同士が埋め合わせられる場所はあちこちにあるよ、と。どんな人生も尊く、オリジナルな彩りがあるのだと。そういうドラマにしたかったです。ただ、そんなことを言いながら…難しいことは考えず「しんどいときは空を見上げて星を見よう」と思っていただけたら嬉しいです。
大森:私も今まで視聴者の方からいただいて特にうれしかった言葉は、「いろいろあるけど、明日もドラマがあるからとりあえずそれまで頑張って生きてみます」とか「ドラマ見てちょっと元気が出ました」というものです。監督やみなさんとその思いが共通していることが、ほんとうにありがたい。こんな方々に出会える機会はなかなかないです。
そして、脚本では伝わらない部分を、お芝居や演出で広げてくださっていて、とてもうれしいです。
――視聴者の方へ、最後にメッセージをお願いします。
大森:あまり私が書いているとか思わず、登場人物たちを見守ってくれたらうれしいです。健治さんもみんなも物語の最後の最後まできらきら生きています。ぜひ見届けてください。
岡光:生徒会元副会長の斎藤が巻き込まれたトラブル、山田先生をはじめとする教師の労働問題、健治と父との確執、健治と珠々の恋の行く末、そして生徒たちの卒業、健治と理事長の直接対決など、最終回までまだまだ盛りだくさんです。ぜひ最後までじっくりご覧いただけたら幸いです。