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「誰もがオンリーワン」愛希れいかインタビュー

2025.01.19

「誰もがオンリーワン」愛希れいかインタビュー
元宝塚歌劇団月組トップ娘役の愛希れいかが出演するテレビドラマ『未恋〜かくれぼっちたち〜』が1月9日よりスタート。同作は、伊藤健太郎演じる漫画雑誌の編集者・高坂健斗、愛希演じる編集部の派遣社員でシングルマザーの鈴木(柿沼)みなみ、弓木奈於(乃木坂46)演じる売れっ子漫画家・深田ゆずらの関係性や、それぞれが自分の本心を見つめ直していく姿を描いています。そこで今回は愛希さんに、この作品について話を聞きました。
―愛希さんは、今回演じたみなみをどういう人間だと捉えていらっしゃいますか。
気持ちや物事を言葉で表現するのが得意で、豊かな想像力を持ち、自分の世界観をちゃんと持っている女性です。また、意志の強さも感じられました。自分がやりたくないこと、関わりたくものとはしっかり距離をとる。そういうところに芯の強さがあります。演じている中で、「文章を書ける人ってそういう意思の強さが必要なんだな」という気がしました。
―揺るぎなさを持っているからこそ、小説家を断念して別の仕事に就いているみなみのもどかしさも痛切に感じられますよね。
仕事のこともそうだし、シングルマザーとして子育てをしている部分なども、自分は結婚や出産を経験していませんが、でも「なんだか分かるな」と思えます。この作品は、同じ立場ではなくても、誰もが一度は通る感情が描かれています。だからこそ物語が刺さるし、好きなことができる幸せや難しさなんかも感じられるのではないでしょうか。

愛希れいか(ドラマ『未恋~かくれぼっちたち~』)2024年12月

―なにより愛希さんが今回のような「現代を生きるキャラクター」を演じるのは珍しいですよね。宝塚時代や退団後も、いわゆる時代劇などが多い印象ですから。
そうなんです、ほぼ初めてと言って良い気がします。舞台で現代劇に出演したこともありますが、でも海外のキャラクターだったりしましたし。そういう意味で、自分にここまで近い役は本当に初めて。だから、役作りらしいことはあまりやっていないかもしれません。そういうやり方は、私としてはとても珍しいんです。逆に、本当の自分に近すぎて「これで大丈夫なのかな」と考えたり。というのも、演じるときに「自分自身が出すぎるかもしれない」と思えたんです。それくらい、生身の感覚がありました。
―みなみには、作品を象徴するような印象深いセリフもたくさんあります。たとえば「普通であることを恐れる」というようなものとか。そういうみなみの言葉から「そもそも普通とはなんなんだろう」と考えさせられる部分もあります。
「普通」という言葉って、ついつい使っちゃいがち。でも私はできるだけ慎重に口にするようにしています。やはり、悩み、苦しみなどは人それぞれで比べられないものだし、比べてもいけない。そんな中「ひとくくりに普通と表現していいのだろうか」って。やはり、みんな誰もがオンリーワンですから。
―おっしゃる通りですよね。
俳優業に限って言えば、やはりオンリーワンの個性が求められます。その個性は誰かと競争するものではない。一方、自分も若い頃は競争心がありました。誰かに勝ちたい、もっとこうしたいという気持ちを抱えていました。それ自体は悪いことではありませんが、でもそれ以上に唯一無二であることが大事だと気づいたんです。私にしかできないことはなんだろうとか、それを見つけ出したくなった。そういうときに「あ、競争をするのはやめにしよう」って。「普通」についてのお話とちょっと外れてしまいますが、でも先ほどお話ししたように誰もがオンリーワンなんですよね。

愛希れいか(ドラマ『未恋~かくれぼっちたち~』)2024年12月

―そんなみなみにとって自分の素が出せる数少ない存在なのは、伊藤健太郎さんが演じた高坂健斗です。
健斗とみなみはお互い、もともと小説家志望とあって言葉が得意。そんな二人なのに、言葉で語らなくても通じ合える不思議な空気感を持っている。それが素敵だなと感じます。演じていても、沈黙が心地良かったというか「これが健斗とみなみの間なんだな」という瞬間が何度もありました。それは、伊藤健太郎さんが撮影現場でも全然壁を作らず、いろんな気遣いもしていただくなど、たくさんコミュニケーションをとってくださったからこそ生み出せたものだったと思います。
―ちなみに健斗のように休みなく、とにかく仕事に打ち込むことってどのように感じますか。
私はすごく理解できるんです。自分もお休みがあると結構不安になるタイプ。特に宝塚歌劇団のときは次々と作品に取り組まなくてはいけませんでしたし、それが体に染みついていたので、退団後「大丈夫かな」となることもありました。今でも「果たして止まっていいのか」と思うこともあります。それでもやっぱり、たまに止まることは大事。そこでいろいろインプットできますし。

愛希れいか(ドラマ『未恋~かくれぼっちたち~』)2024年12月

―でも仕事漬けで過ごしていると、休みの日になにをしていいのか分からなくなったりしませんか。
そうなんです、私も趣味らしい趣味がほとんどなくて(笑)。ふらっと動画を見ていても、結局は仕事関連のものになっちゃうし。結局、仕事が好きなんでしょうね。だけど好きだからこそ、一生懸命にやりすぎて嫌いになりかけたこともあったんです。だから、『未恋』に出てくるそれぞれのキャラクターの気持ちがすごく理解できます。いろいろもがく中で、道は見つかるものなんだなって。
―だからこそ愛希さんにとっては、猫ちゃんの存在が大きいんじゃないですか。というか、“仕事人間”はみんな猫を飼うべき!
まさしく! 私も猫ちゃんを家族に迎えてから、いろいろ変わりました。それまでは一日中、仕事のことばかり考えていたけど、猫がいると必然的にそれと向き合うことになる。その瞬間だけは仕事のことはすべて忘れます。それがリフレッシュにつながっている気がします。

愛希れいか(ドラマ『未恋~かくれぼっちたち~』)2024年12月

―私ごとですが自分も猫と暮らしていて、愛希さんと同じく、そのときだけは仕事のことはそっちのけです。
うちには、お迎えして3年目の子と半年くらいの子がいます。私は結婚をしていないし、子どももいませんが、でも大切な存在を愛情たっぷりに育てている感覚はすごくあります。だからみなみが置かれている状況って、対象は違いますけど共感できたんです。猫のことを何度も思い出しましたから。だけど、いろんな人によく言われるんでんす。「猫がいるとなかなか結婚はできませんよ」って! でも、その通り(笑)。
―『未恋』は、愛希さんがおっしゃるように自分と重ねて楽しめるところが多くあるドラマですよね。
仕事、家事、子育てなどがひと段落して、ホッと一息ついたときに見ていただきたいです。とてもポップな物語だし、リラックスした気持ちでご覧いただけます。でも、その中にグサグサと刺さるものがきっとあります。私もこの作品に携わって仕事に対する考え方が変わりましたし、「よし、仕事を頑張ろう」と前向きにもなれました。どういうところがグサッと刺さるか、ドラマを見て確かめていただきたいです。

愛希れいか(ドラマ『未恋~かくれぼっちたち~』)2024年12月

『未練~かくれぼっちたち~』 https://www.ktv.jp/miren/
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インタビュー&文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
miyoka
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