萩原監督に4年越しのリベンジ、眞栄田郷敦が語る映画『ブルーピリオド』
2024.08.22
山口つばさ原作の漫画「ブルーピリオド」(講談社)を実写化、偶然目にした1枚の絵をきっかけに絵画の面白さに目覚め、国内最難関の美術大学を目指して奮闘する若者を描いた本作。
今回は主演の眞栄田郷敦さんと萩原健太郎監督に、田中友梨奈アナウンサーが入社後初となるインタビューを敢行しました。
田中友梨奈アナ 眞栄田郷敦 萩原健太郎
(2024年8月)
【眞栄田】完成した作品を見たときは、八虎が絵に向かって努力している映像のモンタージュがいっぱい入ってテンポが上がる(ラストの)ところは感情が高ぶりましたね。
―目力がグッと出ているシーンもありました
【眞栄田】八虎にとって殻を破ることになる「縁」の絵(はじめてF100号に挑戦)と二次試験の絵(ヌードの課題)を描くシーンは、彼がある種の極限状態、ゾーンに入っているかのような雰囲気が出ればいいかなと思って演じていました。
©山口つばさ/講談社 ©2024映画「ブルーピリオド」製作委員会
【眞栄田】実は、衣装の中にいっぱい保冷剤を仕込んでいます(笑)。受験のシーンはクーラーがない施設で撮影だったのですが、現場に巨大な冷風機を数台入れてくれて、それで乗り切りました。
あ!あと、ひとつ面白いエピソードがあります。割って食べるアイスが現場にあって、世田介役の板垣(李光人)君がそれを食べようと紫色のアイスをポキッと割った瞬間、八虎の白いTシャツにビシャッてかかって。
―ある意味、アートみたいな?
【眞栄田】そうなんですよ、きれいだったからこのまま撮影できるんじゃないかなって(笑)。夏の現場ならではのハプニングでした。
【眞栄田】最初は木炭を持ったことがなかったし、机の上でしか描いたことがなかったので、立ててあるキャンバスに鉛筆とは違う持ち方で描くのはまっすぐな線一本描くのも難しかったです。油絵では(絵の具を混ぜて)『色』を作るのも未だによくわからないぐらい難しかったですね。
面白かったのは、集中して(キャンバスの)近くで描いているとわからないんですが、離れて見ると意外にすごく立体的になっていたり、いい絵になっていたりすることがあって。美術館に行った時も絵画に近づいて細かいところを見たり、離れて遠くから見たりという楽しみができました。
八虎が絵を始めたばかりのころから美大受験まで、グラデーションをつけて成長過程をしっかり表現したいと思っていたのですが、八虎が感情がのって描くシーンは、練習してきたからこそ技術的なことをそれほど意識せずに感情優先で描けたので、すごく良かったと思いました。
©山口つばさ/講談社 ©2024映画「ブルーピリオド」製作委員会
【眞栄田】なんだろう…あんまり現場ではそういうことを考えていなかったかもしれないですね。
【萩原】僕は「芸術、絵というものは才能がある人たちだけのものなのかどうか」という問いから始まっている映画だと思っていたので、撮っているときは「そうじゃない」ということを八虎を通じて言いたいと思っていました。でも、それだけじゃなくて、出来上がったものを見ると、「好きなものは好き」って言える映画になったなと。それが誰かの背中を押せたらいいなと今は思っています。
実際に撮影現場は映画やモノ作りが好きな人たちが集まっているのでみんな楽しそうだったよね。
【眞栄田】みんなでひとつのものを作っていることや、その時間を楽しんでいる感じでしたよね。
―ドラマ『あと3回、君に会える』(カンテレ制作)以来、4年ぶりの顔合わせですね。
【萩原】すごく楽しかったです。
【眞栄田】初めてご一緒した時は悔しい思いもしましたし、少しでもリベンジできたらいいなと思っていましたね。前作のときはコミュニケーションとれるほど監督と同じ目線に立てていなかったけれど、今回は同じ目線に立って一緒にモノづくりができたなという感覚があったので楽しかったです。
―話し合いながら作ったところも?
【萩原】原作と違うところは世田介と八虎の関係性なんですね。原作では二人で初詣に行ったりするなど、関係性が変わる場面があるけれど、映画にはそれがない。でもそこがないと二人が再会する時のそれぞれの態度が変わってくる。そこをどう乗り越えたらいいのか、提案してくれたよね。
…それにしても本当に世田介のこと、大っ嫌いだったよね(笑)。
【眞栄田】ホント大っ嫌い、ず~っとムカついていた(笑)。(演じている)板垣君は素晴らしい方なんですけどね(笑)。八虎からすると、世田介は性格もひねくれているし、嫌な奴だなって。でも順を追っての撮影だったので、板垣君がまとう天才的な雰囲気に対して抱く感情を、後半に向けて調整していったところがあるかも。板垣君とはコミュニケーションも取れていたので苦労はなかったです。
映画『ブルーピリオド』眞栄田郷敦 萩原健太郎監督
(2024年8月)
【眞栄田】ゼロから絵を始めた高校生が、国内最難関の美大に挑戦するというストーリーです。登場人物たちの姿を見て、自分もなにか頑張ろうと思える作品になっていますので、ぜひご覧ください。
【萩原】芸術というわかりづらいものが題材ですが、誰でも楽しめてすごく熱い気持ちになれる“スポ根”的なエンタメ映画になっています。幅広い年代の方に見ていただけたらうれしいです。
映画『ブルーピリオド』眞栄田郷敦 萩原健太郎監督
(2024年8月)
プロフィール
2000年1月9日生まれ。
映画『小さな恋のうた』(2019)で俳優デビュー。近年の出演作に映画『午前0時にキスしに来てよ』(19)、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち』(21)、『東京リベンジャーズ』シリーズ(21、23)、『カラダ探し』(22)、『彼方の閃光』(23)、『ゴールデンカムイ』(24)など。ドラマ『エルピス -希望、あるいは災い-』(22/カンテレ制作)や、NHK大河ドラマ『どうする家康』(23)で見せた好演も話題となった。2024年は『366日』(フジテレビ制作)に出演。
萩原健太郎(監督)
1980年12月13日生まれ。アメリカ・カリフォルニア州のアート・センター・カレッジ・オブ・デザイン映画学部を卒業後、2008年に帰国。長編映画脚本『Spectacled Tiger』(2013)がサンダンス・インスティテュート/NHK賞を受賞。『東京喰種 トーキョーグール』(17)、『サヨナラまでの30分』(20)、ディズニープラスのオリジナルシリーズ「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」(23)の監督を務める。
『シネマTrip!』(https://www.ktv.jp/cinematrip/)毎週土曜午前10時25分 関西ローカル ※田中友梨奈アナウンサー出演中
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