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中島裕翔が一人二役の熱演、國村の狂った愛が板垣をかき乱す

2025.02.10

中島裕翔が一人二役の熱演、國村の狂った愛が板垣をかき乱す

『秘密~THE TOP SECRET~』第3話 レビュー(Xの反応あり)

他に道はなかったのか。あまりに切なすぎる、薪(板垣李光人)と鈴木(中島裕翔)の別れ。友人以上の感情を抱く大切な存在を自ら殺めてしまうという悲劇が、薪にどれだけの苦痛を与えたことでしょう。

心に宿った闇を打ち消すかのように、捜査に打ち込んでいた薪。しかしその3年後、抑え込んでいた彼の思いを揺さぶり起こすような出会いが待ち構えていました。出会った瞬間から、注いでいたコーヒーをこぼすほどの動揺を見せる薪。目の前にいる青木(中島裕翔 一人二役)から、鈴木の面影を一瞬で感じ取ってしまったのでしょう。開口一番、「第九は合わないんじゃないかな」と冷たく言い放つのも、貝沼(國村隼)の脳を見たことで悲痛な最期を遂げた青木を重ねてしまったからなのかもしれません。

薪剛(板垣李光人)

青木の配属後、最初に捜査することとなったのは、9人の少年の謎の死亡事件。いくつかの共通点を持つ彼らの死の真相を探るため、早速全員の脳内記憶を調べていきます。見たままの映像をうのみにする青木を、薪は激しく叱責(しっせき)。「見たまま、聞いたままをそのまま信じようとする人間は、狂った脳に引きずり込まれる」という薪の言葉に、第九の捜査がどんなに危険なものなのかが伝わってきました。薪役の板垣さんが現在23歳だということを忘れてしまうほど、貫禄(かんろく)と迫力に満ちた演技にこちらが引きずり込まれそうです。

薪剛(板垣李光人)、青木一行(中島裕翔)

人が死んだり、殺されたりする映像を、何日にも渡って見続けるなんて、正気の沙汰ではありません。しかもそれらはフィクションではなく、すべて現実に起こったことや、脳の持ち主の持つリアルな記憶。中には恐ろしい幻覚が入り混じっていることもあるなんて、精神を病んでしまって当然です。

捜査を続ける中、衝撃的な人物の登場に倒れる薪。心から尊敬し、信頼しきっていた存在が、まさかの凶悪殺人鬼であった絶望。普段は凛としている薪が、恐怖におののき、あれだけの混乱を見せるなんて。一体どれほどの重圧と戦っているのでしょう。青木とともに背中をさすってあげたい……。

青木一行(中島裕翔)、薪剛(板垣李光人)

亡くなった9人とともに貝沼の催眠術を受けていた少年がもう1人いるという事実を突き止め、ヘリで急行する薪と青木。操縦かんを握る青木は、なんと鈴木の脳内記憶から貝沼の脳をのぞき見てしまっていました。青木は錯乱状態に陥り、ヘリは制御不能に。「まだ連れて行くな、鈴木……!」という薪の祈りが届いたのか、ギリギリのところで青木は正気を取り戻します。薪の表情から、鈴木に対する冷たい記憶が少しだけ解けたような、あたたかな印象を受けました。それにしてもこのドラマ、サスペンス要素だけでなく、手に汗握るアクションまで楽しめるなんて、ぜいたくすぎる。

そして、最後ですよ。もう、貝沼怖すぎませんか……。狂うほど執着され、恐ろしい形でその愛をぶつけられてしまった薪、とんでもなくトラウマすぎる。そしてこんな映像を見てしまっては、正義感の強い鈴木が大切な親友を命がけで守りたいと思うのも無理はないと思ってしまいます。膝から崩れ落ち、うめくように泣き続ける薪の姿に「もうやだ、つらい……」という声が漏れました。どうやったら薪は救われるのでしょう。

薪に強い憧れを抱く青木に対して、今は亡き鈴木の面影にとらわれている薪。どんなに慕い、力になろうとしても、薪の視線の先には鈴木がいる。鈴木の名前を呼ぶ薪に「いいえ、青木です」と答える表情は、もの寂しさと切なさをはらんでいるように見えました。セリフのないラストシーンも、言葉以上に語るものがあったように感じます。

青木一行(中島裕翔)、薪剛(板垣李光人)

今回、かつての薪の相棒だった鈴木と、彼の死後新たに第九に配属となる新人捜査員・青木一行の二役を中島裕翔さんが熱演。同じ俳優が演じるという以上に、難事件への捜査に期待を膨らませる青木に重なる鈴木の面影を、見事に演じ抜いていました。

青木一行(中島裕翔)、岡部靖文(高橋努)

Xでは、「李光人くんの演技力の幅広さが素晴らしい」「中島裕翔くんの演じ分けが凄すぎて腰抜かした」「貝沼が狂気に満ちていてほんと怖い」など、実力派俳優陣への厚い評価があふれていました。

ついに次週、かつて鈴木の婚約者だった雪子(門脇麦)が、青木と初対面を遂げるようです。雪子も薪に特別な感情を抱く1人のようですが、人間模様はどう動いていくのでしょうか?連続殺人の裏に隠れた正体不明の感染症に関する謎にも注目です!

ちなみに、第3話からオープニング映像にとある変化が生まれていたこと、皆さんはお気づきでしょうか?見逃してしまった方は、ぜひ見逃し配信で2話と3話の違いを確かめてみてくださいね!
文・神田 佳恵
フリーライター 兼 一児の母。
取材・インタビュー、エンタメ記事、エッセイなど、複数媒体・分野で執筆中。
miyoka
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