【ネタバレ注意】『ぼくほし』第6話レビュー
磯村勇斗さん主演の月10ドラマ
『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)の第6話が8月18日に放送されました。
本作の舞台は、少子化の影響で共学化した私立濱ソラリス高校。同校に「スクールロイヤー」として派遣された磯村さん演じる弁護士・白鳥健治(磯村勇斗)が、学校内のトラブルや生徒たちの心に法の視点から向き合うドラマです。
第6話では、「カンニング」と「教育虐待」がテーマとなりました。
2学期がスタート、珠々への恋心を自覚する健治
共学になってから、初めての夏休みが終わった濱ソラリス高校の2学期がスタートしました。
在校生が続々と登校する中、夏休み前の保健室登校から教室に復帰すべくあいさつのシミュレーションを行う3年生の藤村省吾(日向亘)の姿がありました。そこへ現れた健治。
「……この胸の苦しさは恋でしょうか?」
唐突すぎる健治の言葉に、「ブーッ」と水を吹く藤村。
吹き出し方が漫画みたいにきれいで清々しかったです。
藤村と同じく3年生の斎藤瑞穂(南琴奈)は、謎のスペースがあります第5話の天文部合宿の時に、部の顧問の健治が国語教師の幸田珠々(堀田真由)に恋しているようだと勘づいていました。
身近な人の恋模様が気になるお年頃だよね…とほほ笑ましく思ってしまうのは、筆者が歳を重ねた証拠でしょうか。
そもそも、筆者としては、健治の珠々への恋心は「無意識に感じているもの」だと思っていました。健治が恋心を自覚していたのは、正直なところ意外でした。
「はくちょう座の嘴(くちばし)を見上げるたびにグラグラと動悸(どうき)がして……」
珠々を思い浮かべた時の胸の感覚を、星空を見上げた時の気持ちで表現するのが健治らしいです。
校舎の屋上にある天文ドームで珠々と2人きりになると目を合わせられず、挙動不審になる健治。
第5話までは直球ストレートで思いを言葉にできていたのに、恋心を自覚した途端にそれができなくなってしまいました。
初恋なのでしょうか。そんな健治を「ピュアだなあ」とうらやましく思えてしまう筆者は、どこかにピュアな心を置いてきてしまったのでしょう。
成績優秀であるはずの生徒による「カンニング」疑惑
夏休み中、模試会場で3年葵組の北原かえで(中野有紗)は、生徒会でともに活動する同じクラスの有島ルカ(栄莉弥)がカンニングするところを目撃しました。
「犯罪の現場に居合わせたかもしれない」と不安がる北原。
健治いわく、大学入試などでカンニング行為が発覚した場合は「刑法233条、偽計業務妨害罪」が成立する可能性があるとのこと。
実際に、2022年の大学共通テストで試験中にスマホで問題文を外部に送信した受験者が偽計業務妨害の非行事実で家庭裁判所へ送致された事例もあるようです。
事態を重く見た教師陣は、2学期最初の試験前にカンニング行為への注意喚起を行うことにしました。教壇に立つのは健治です。
健治は「カンニングは、犯罪になりえる行為です」と言いつつも、「優劣を測るためだけのテストで未来が決まるなら、カンニングをしたくなるほど追い詰められる若者が生まれるのも仕方ない」と主張。ざわつく3年葵組の生徒たち。
「それでも日本の大多数の若者はカンニングをしません。」
割って入ったのは生活指導担当の教師・山田美郷(平岩紙)でした。それはそう。
少なくとも筆者は学生時代、カンニング行為をしようとの発想も度胸もありませんでした。テストの点数よりも「バレた時にどうなるか」の方が重要といいますか……。
面倒なことになるのは目に見えているので、わざわざカンニングまでして良い点数を取ろうとは思いませんでした。「良い点数を取るために勉強しなさいよ」という話ではあるのですが。
個人的な主観ですが、従来の学園ドラマでは山田のような先生は、健治みたいなタイプを嫌がるイメージがあります。しかし、山田は健治の独特な感性や価値観を、厳しいながらも寛容に受け入れている印象です。
次の教室へ向かう途中の健治と珠々のやり取りのシーンでも、静かに見守っていました。
健治と珠々の関係性にも薄々気づいているのでは……。
山田の不敵な表情を見る限り、全てを見透かしていそうな気がしてなりません。
父親の過度な期待に縛られる有島、「教育虐待」の真の怖さ
有島は父・一彦から「教育虐待」を受けていました。
虐待の可能性に気づいていた有島の担任・巌谷光三郎(淵上泰史)は、「ああいう親は自分のやってることは全部愛情で、虐待だとは思っていない」とため息をつきます。
一彦も例に漏れず、「心配だから言っている」と息子・有島に詰め寄ります。しかし、一彦の言葉で有島の心が傷ついているのは明白です。
失恋をきっかけに登校できなくなった藤村の気持ちに寄り添う父親など、これまで登場した生徒の親は良識的な印象でしたが、第6話にして「厄介な親」が出てきました。
しかも、有島家の場合は父親だけでなく母親もどこか頼りなく……。
これでは家庭内に有島が安心できる場所がなさそうに思います。
有島の窮状を知った健治は「僕の生きてきた道」として自身の大学受験から弁護士になるまでの経緯を話し、「有島さんの“幸い”は何でしょうか?」と問います。
健治としては、自身も父親に価値観を押し付けられた経験から有島に寄り添おうとしたのでしょう。
しかし、有島は「うちの親を悪者にするなよ」とも反発。あふれ出した有島の黒い感情を浴びた健治は、若干パニック状態になりました。
有島が父親をかばったことに、「教育虐待」の真の怖さがあると思いました。
有島は傷つけられているはずなのに、父の行動について「僕のためを思ってやってくれている」と言います。客観的に見たら明らかに虐待でも、当事者が「愛情」だと思い込まされている点に闇深さを感じます。
「教育虐待」はあくまで家庭の問題。スクールロイヤーである健治は、有島の問題に深く介入できません。これまで生徒のトラブルを解決に導いてきた健治としては、歯がゆいことでしょう。
有島の問題は、現時点では「スッキリ解決」とはなりませんでした。唯一、「救いになったかな」と思うのは、事情を知った北原が有島に寄り添ったこと。北原は1年間、ともに生徒会として活動してきた有島を「仲間」だと思っていました。
「もう、これ以上、傷ついてほしくない。」
第6話ラスト、生徒会メンバーでバスケをしている時、有島は笑顔を見せました。生徒会メンバーが、有島にとって安心できる居場所になっていたらいいなと思います。
そして、最終回を迎えるまでには、父親の呪縛から逃れて有島自身が自分の「幸い」を見つけてほしいと願っています。
第6話では本作がドラマ初出演となる栄莉弥さんが有島の心の機微を繊細に表現していました。栄莉弥さんはメンズノンノ専属モデルを務め、2025年9月19日公開の映画『宝島』にも出演。今後の活躍が楽しみです。
取材・文:宅野美穂
都内在住のライター。主に、インタビュー記事を執筆。本とゲームと音楽が好き。
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