『秘密~THE TOP SECRET~』第8話 レビュー(Xの反応あり)
淡路(伊武雅刀)の部屋に唯一残されていた少女2人の毛髪、自身を殺せと千堂(生瀬勝久)をあおる淡路の発言、そして薪(板垣李光人)の口から千堂に突然告げられた、咲(葵うたの)と望(羽瀬川なぎ)の正体……。謎が多すぎた今回の事件、ストーリーが進むごとに複雑に絡んだ糸が1本ずつ解けていくようで、真相が明らかになっていくのが爽快でしたね。と同時に、淡路の恐ろしい計画の全貌を知った瞬間、鳥肌が立つほどの恐怖を感じました。
「あの映像は、フェイクじゃなかった。淡路ははじめから、真実しかあなたに見せていなかったんです」
薪のこの言葉を聞いた瞬間、テレビの前でハッと息をのんだ視聴者の方がきっと大勢いらっしゃることと思います。
警察庁長官(利重剛)に働きかけ、コンテナ船に閉じ込められた少女を救うために青木(中島裕翔)を向かわせた薪。青木のまっすぐすぎるほどの純粋な正義感が薪の心を動かし、薪も同様に周囲を動かして、絶体絶命の状況を打破していく様子に、見ているこちらも前のめりになってしまいます。そしてこの青木の行動が、淡路の仕組んだ恐ろしい計画を狂わせるトリガーになるとは……。
淡路は、直接千堂の命を奪う以上に、より鋭く深く、千堂を苦しめる最悪の方法を実行しようとしていました。本人すら知らない、実の娘の命を自ら見捨てさせ、16年間自分の娘と信じ続けてきた偽りの娘のために自ら殺人に手を染めさせる。そのために、自身の余命をすべて投じてまで、緻密な計画を密かに進めてきたなんて……。伊武雅刀さんによる、淡路の内に秘められた狂気がじわじわ溢れ出てくるような演技があまりにリアルで……生命がついえる間際にもかかわらず、執念が淡路の生命力を極限まで高めているようにも見えました。千堂に殺された直後の淡路の満足そうな表情も、恐ろしすぎましたよね。
もし自分が同じ境遇で、子どもの生命が断たれてしまうようなことがあれば、どうするだろうと考えてしまいます。千堂を絶望の淵に追いやることが、失われた子どもへの弔いだとでも思うのだろうか。怨念の仇(かたき)とはいえ、相手の子どもにも手をかけて復讐しようとするのだろうか……いくら考えても答えの出ない、迷路のような問いが頭の中に反響しています。
千堂お得意(?)の手のひら返しは、今回も見事に披露されていましたね。咲が実の娘ではないとわかった途端、赤の他人だと言い捨て、自分の地位や名誉のために保身を始める。「私は16年間裏切られてきたんだぞ!」と怒りをあらわにするけれども、当の本人だって22年前に美奈子(安藤裕子)と関係を持っていながら、千堂夫人(霧島れいか)との縁談を受け入れたのですから、誰かを責める立場にはないはずです。そのうえ、一度ならず二度までも見捨てた実の娘を一目見ようと、のこのこと病室に立ち寄るなんて。都合が良すぎます。
さて。肝心の、今週の薪と青木です。青木の病室に駆け込んだ薪が、目に涙をいっぱいためながら無言で青木の懐(ふところ)に飛び込むシーン。「えぇ〜!!」っと、思わず大声が出てしまいました。なんですか、このかわいい生き物は……。その後の雪子(門脇麦)と青木のシーンが、絶妙な対比になっていて、またもやうなりました。雪子には思ったことをすぐに口にできるのに、薪に対しては気持ちをうまく言葉にできず、ただ受け止めることしかできないという……。雪子のことも、薪のことも思っているけれど、きっとそれぞれに対する思いの質感はどこか違うものなのでしょうね。特に薪に対して抱く感情は、きっと恋愛とも友愛とも違う、今までに出会ったことのない感情で、青木自身も戸惑っているのでしょう。
対比といえば、ラストシーンの咲と望に待ち受けていた結末も、対照的すぎて胸が痛みました。2人は何も悪くないのに……千堂や淡路、そして周囲の大人たちの“秘密”に振り回され、人生を狂わされてしまった。望や美奈子と対峙した千堂の手元にしっかりとかけられた手錠が、過去の千堂の過ちの重さを示しているかのようでした。実態とは裏腹に、ドロドロすぎる“秘密”に触れることのない世間は、千堂を理想の父親としてはやし立てる。背後で流れるニュース番組のアナウンサーが語る、「日本一強い絆で結ばれた父と娘」という言葉が、あまりに真実と乖離(かいり)していて、虚しさが漂っているように感じられました。
Xでは「回を重ねる事に登場人物それぞれの“秘密”が見え隠れしてる」「あと何回かで終わっちゃうなんて信じたくない」と、奥深い物語の沼にハマってしまった方の声や、「何かもうあれだ、3人で付き合おう」と薪・青木・雪子に意外な提案をする視聴者の声も見られました……!
今回大活躍だった青木ですが、次回予告の時点ですでに暗雲が立ち込めまくっていました。姪(めい)の舞を抱いて、部屋でぼうぜんと立ち尽くす青木。さらに、薪に命の危険が?!しれっと青木が雪子にプロポーズをかましていたのも衝撃!次週が来るのを楽しみに待ちましょう!
文・神田 佳恵
フリーライター 兼 一児の母。
取材・インタビュー、エンタメ記事、エッセイなど、複数媒体・分野で執筆中。
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