『あなたを奪ったその日から』第8話 レビュー
記者の東砂羽(仁村紗和)が紘海(北川景子)の自宅に訪ねてきたところから始まった『
あなたを奪ったその日から』第8話。砂羽からの取材協力の要請を受けたあと、紘海は結城(大森南朋)から食品事故への懺悔(ざんげ)を聞き、大きく葛藤することに。食品事故の真相と紘海の秘密が明らかになる日が近づいていることが伝わり、痺れる回になりましたね。
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紘海は美海(一色香澄)から「何か隠していることがあるよね?」という手紙を受け取っていました。かくしごとをしていて、美海に悪いと思いながらも、何も言えない紘海。紘海自身は秘密を明かせないのに、母親としての心配故に、つい美海の行動を制限するようなことを言ってしまい、美海は家出をしてしまいます。一方結城の長女・梨々子(平祐奈)は、何者かから受けとった連絡に大きく取動揺し、オーバードーズによる自殺未遂を起こします。そのまま入院することになりますが、梨々子は結城との面会を拒否。奇しくも二人の娘が家を空け、紘海と結城は娘から距離を置かれる展開になってしまいます。
結城と紘海が現実逃避に選んだのは、会社での残業でした。終電が近づく夜のオフィスで二人は、トラブル解決に向けて一緒に仕事をすることに。そしてオフィスで二人きりの晩酌。ビールを飲んで咳き込んだ結城は、これが10年と10ヶ月前、Yukiデリの商品が3歳の女の子・皆川灯(石原朱馬)ちゃんの命を奪った日以来の飲酒だと明かし、食品事故への懺悔を口にします。事故の原因は特定できていないのでは?と聞く紘海に、かたくなに「僕の責任です」と言い切る結城。結城は食品事故のすべてを知ったうえで、誰かを庇っているのでしょうか。
そして、話題は萌子の失踪に。萌子を失って初めて娘がいない現実の身を引き裂かれるような苦しみを実感したと語ります。萌子を失ったことは、灯の死と食品事故を起こした罪に向き合わなかった報いだと後悔を見せながら振り返ります。第1話で砂羽からの報いじゃないかという追求に反論していた結城でしたが、10年間娘を見つけられず、絶望し続けたことで、罪の報いだと思わざるを得なくなったのかもしれません。
その話を聞く紘海の表情は、眉間にしわを寄せて怒りのようなものが浮かびつつも、涙を堪えているようにも見えました。灯の母親だと認識されていないまま、謝罪と懺悔を聞いている紘海。結城の後悔と萌子を失った苦しみに思いを寄せつつも、犯人を隠蔽(いんぺい)し続けていることがやはり許せない。紘海の中に一言では言い表せない複雑な感情が渦巻いていることが伝わってきます。
言葉が出てこない紘海。そんななか、ふいに結城の携帯から終電の時間を知らせるアラームが響きます。それは、幼い灯と萌子が好きだった童謡・汽車ポッポのメロディーでした。生前の灯と手をつないで歌った幸せな日常、幼い萌子をおぶってその歌を聞いていたことが紘海の脳裏によみがえります。「萌子が好きだったので」という結城の言葉は、紘海に萌子誘拐の罪の重さを実感させるのに十分なものでした。自分が灯との幸福な時間を奪われたように、結城から萌子との幸せな時間を奪った。その罪の大きさに耐えきれなくなった紘海は思わず、「ごめんなさい、私はあなたの……」と言いかけ、結局逃げるようにオフィスを去ってしまいます。紘海は罪悪感に苛まれすぎて萌子と暮らしていることを告白しようとしたのかもしれません。でも、今ここで罪を告白したら、美海との生活が終わってしまう。それは嫌だという感情がよぎり、逃げてしまったのでしょう。複雑な心情を表現する北川さんの表情が苦しく、罪の重さと美海への執着に近い愛情の間で揺れる葛藤が痛いほど伝わってきました。
帰宅した紘海は、美海に遠出をしようと提案します。そして、翌日紘海は会社に辞表を提出。「辞めないでくれ」と紘海を必死に引き止める結城からは、紘海に対して強い仲間意識を感じているように見えました。会社を辞めた紘海は、砂羽に協力要請を断る連絡を。結城から心からの懺悔を聞いた紘海は、もう結城を糾弾することはできません。「結城」ではなく「常務」と、旭のことを自らの上司として呼ぶ紘海から、大きな心境の変化が感じられました。
食品事故の真相も明らかになりつつある回でした。砂羽が食品事故に執着するのは、Yukiデリの調理責任者だった鷲尾(水澤紳吾)の娘だったから。鷲尾は、結城から渡された500万円に手を付けず、事件の真相を語ることもなくがんで亡くなっていたのです。砂羽の結城への執着の裏には、立派な料理人だった父に罪を共有させたことへの恨みがあったのでしょう。また、鷲尾も亡くなる前にかたくなに事件の真相を口にせず、「俺たちがあの子を殺してしまった」と口にします。俺たちとは結城と鷲尾以外に誰かがいるということなのでしょうか。
結城は玖村(阿部亮平・Snow Man)の一言から、紘海が灯の母親であることを知ってしまいます。音がピタリと止まる演出からは、結城のショックの大きさを察することができました。また、電車のキーホルダーをきっかけに、望月(筒井道隆)は結城の家の前で見た怪しい女が紘海であるのでは?と疑い始めます。住所を確認していたため、学校帰りの萌子と鉢合わせてしまうなんて展開も……?
最後に、事件の真相が明らかになる前に、事件に関わる登場人物についておさらいしておきましょう。
(「ギャラリーを見る」をクリックすると、各登場人物の詳細を見ることができます。)
そろそろ食品事故の真相が明らかになりそうな展開。第9話も楽しみです!
取材・文:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
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