「俺の本当の罪は、人殺しだと思っている」闇バイト組織の元ブレーン・翔太(吉田健悟)が更生プログラム「仮合格」に ドラマ【地獄は善意で出来ている】

2025.11.07

「俺の本当の罪は、人殺しだと思っている」闇バイト組織の元ブレーン・翔太(吉田健悟)が更生プログラム「仮合格」に  ドラマ【地獄は善意で出来ている】

草川拓弥(超特急)主演『地獄は善意で出来ている』第4話 レビュー

たとえば、過ちを犯してしまったあなたが、更生の意志を示せと言われたとき、どんな行動を取るだろう。反省の言葉を並べ、善行を積む。傷つけてしまった人がいるならば謝る。けれど、それは本当に他者のための行為なのか。それは本当に過去の間違いを反省しているのだろうか。世間的に“正しい”とされるテンプレートをなぞり、結局は自分が救われようとしているだけではないか。どこからが更生で、どこからが保身なのか。その境目の判断は、ひどく難しい。

『地獄は善意で出来ている』第4話は、そんなことを思わずにはいられない回だった。他の参加者から妬まれていた樹(草川拓弥)は、理子(渡邉美穂)とともに倉庫に閉じ込められる。やがて火が回り、二人はなんとか助け出されるものの、その一件でふたたび犯人探しが始まった。
倉庫に鍵をかけたのは翔太(吉田健悟)だった。樹が半グレ集団と関係しているという噂(うわさ)をネットで見かけ、危険人物だと判断したらしい。しかし樹はその疑いを強く否定する。火災の原因についても、カトウ(細田善彦)は老朽化した建物の不備だと説明するが、真相はわからないままである。
今回彼らに課されたミッションは、参加者同士の理解を深めるために、自らの罪を打ち明けることだ。いわばグループセッションのようなもので、実際の更生プログラムでも行われている手法だ。本来の目的は、第三者に話すことで、自分の過ちや向き合い方を見つめ直し、更生の道を歩むきっかけをつくることである。
意外にも、最初に手を挙げたのは翔太だった。

ドラマ『地獄は善意で出来ている』4話 堂上翔太(吉田健悟)

彼は闇バイトのブレーンを務めていた人物で、組織の末端にいた若者たちに金持ちの老人宅を狙った空き巣を指示していたという。あくまでも金品を盗むことが目的だったが、その過程でターゲットの老人が殺害されてしまう。指示役の翔太は窃盗罪で懲役4年の実刑判決が下され、実行犯の二人には無期懲役が言い渡されていたのだ。

「なんで俺だけ窃盗なんだろうな……。あのじいさん選んだのも、命令したのも俺なんだよ」

「だから、俺は、俺の本当の罪は、人殺しだと思っている」


もともと短気で乱暴な一面を見せていた翔太だが、吉田の切実な芝居、さらには野良猫にエサを与える姿も映し出されて、思わず彼の懺悔(ざんげ)を信じたくなってしまうシーンだった。たとえ自分は軽い罪で済んだとしても、別の苦しみが押し寄せていたのではないか。法では裁かれないことが、むしろ彼を苦しめていたのではないだろうかと。
素直な告白が評価されたのか、翔太は「更生プログラムの仮合格」を告げられる。だが、忘れてはならないのが、このプログラムのもう一つの顔である「被害者救済システム」だ。第1話で殺された富樫(佐伯大地)のように、被害者が加害者に直接罰を与える恐ろしい仕組みである。被害者の会で最も感情をあらわにしていた新藤栞(木下晴香)は、翔太が指示した若者に殺された老人の孫娘だったことが明かされる。
いつでも罰を下せるように、被害者たちは参加者たちの様子を日々モニタリングしているのだが、栞自身もこの復讐(ふくしゅう)を果たすべきなのか、いよいよわからなくなっていた。憎むべき対象が、自分と同じ“人間”であることを認識してしまったからである。赦すことも憎みつづけることも痛みを伴う。かといって、彼らの命を奪
うことが“救済”になるとは思えない。
どうすれば栞が救われるのかはわからないが、ただひとつ確かなのは、善意と救済を掲げながら、ままならない彼らの思いを“ゲーム”のように支配する第三者の存在こそが、真に恐ろしいということだ。翔太が誰よりも早く“合格”の扉を叩(たた)いた第4話のラスト、その音は新たな地獄への入口が開く音のようにも聞こえた。
文:明日菜子
毎クール必ず25本以上は視聴するドラマウォッチャー。
『文春オンライン』『Real Sound』『映画ナタリー』などでドラマに関する記事を寄稿。
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