“ウソ”と“ホラ”の境界線、一線を越えてでも番組を成立させる奥本の危うさ【大東駿介主演・絶望できない男】
スペシャルドラマ『絶望できない男』の放送が9月17日よりスタートしました(毎週木曜 深夜25:15~/カンテレ)。
原作は、テレビ番組制作者として伝説的なエピソードを残した奥川拓二さんの自伝。奥川さんは、大阪のテレビ番組制作会社勤務を経てフリーのAD(アシスタントディレクター)となり、1日に何本もの番組を掛け持ちするなど売れっ子に。その後、会社を立ち上げ、若くして成功。ポルシェに乗り、夜の街を飲み歩くなど豪遊生活を送り、テレビ番組の「関西若成金列伝」という企画に声がかかるほどでした。しかし番組制作に失敗して借金を抱えて会社は解散、ホームレス生活となります。それでもトラック運転手として身を立て直し、エンターテインメント業界へ返り咲きました。
奥川拓二(大東駿介)
ドラマ『絶望できない男』は、そんな波乱万丈な奥川さんの人生をドラマ化。主人公の奥本拓夢を大東駿介さん、奥本に師事するAD・水野秀真を八村倫太郎さん(WATWING)、奥本の元恋人・春永洋子を相武紗季さんが演じています。
春永洋子(相武紗季)
水野秀真(八村倫太郎)、奥川拓二(大東駿介)
ノリで生きるテレビ制作者・奥本を大東俊介が好演
第1話では、1991年を舞台に、奥本が大御所俳優・小田島郁人(小沢和義)の恩人探しの企画を手伝うことに。奥本はプロデューサーの遠藤(アキラ100%)から、小田島がもっとも再会を願う元天才子役のユキ(福留光帆)を見つけ出すことができれば、レギュラー番組の仕事を与えるが、見つからなければテレビ局を出禁になるという条件がー突きつけられます。その後、大人になったユキはスナックで働いていることが分かりますが、とある理由で「番組に出たくない」と断られます。
ユキ(福留光帆)
どんなにピンチに陥っても、タイトル通り、奥本は絶望しません。ノリと勢いで乗り切ろうとしていきます。ただ、そういう彼の根拠のない自信や前向きさは、「何だか気分が晴れないな」と思う人の心をほんの少しだけ明るくしてくれるかもしれません。大東さんの軽妙な演技も、奥本のつかみどころのないキャラクターを見事に表しています。
一線を越えてでも番組を成立させようとする“攻めの姿勢”
そんな第1話で特に興味深かったのが、奥本の型破りなところや危うさです。どんな状況でもノリと勢いで突き進み、「企画を成立させる」という信念のもと、かなり強引なことまでやってしまう。そうした危うさや強引さが随所ににじんでいて、それが逆に奥本という人物の魅力にもつながっています。
奥川拓二(大東駿介)
ここからはネタバレになるのでご覧になっていない方はお気をつけください。
恩人再会の番組への出演を渋るユキを、奥本が口説き落とす場面があります。彼女の心を揺り動かしたのが、小田島からの手紙です。そこには、子役時代のユキの芝居を目の当たりにしたことで自分の俳優人生が変わったということが記されていました。それを読んで、ユキは番組出演を決意します。
ところが、第1話のハイライトともいうべきその大事な手紙は、実は小田島ではなく奥本が書いた“ウソの手紙”だったのです。さらに奥本は、小田島にも口裏を合わせるように頼み込んでいました。
もちろん、これはあくまでドラマの中で描かれた出来事です。ただ、ここまでしてでも番組を成立させようとする“攻めの姿勢”に、奥本のキャラクター像がよく表れています。目的のためには、時に一線を越えてしまう。そんな正しいか間違っているかだけでは割り切れない奥本の型破りなところが、目が離せないおもしろさになっています。
奥本はこう言います。「ウソはついたらあかん、ホラは吹いてええねん」と。かなり強引な理屈ですが、奥本にとっては“ウソ”と“ホラ”には明確な違いがあるのでしょう。何としてでも番組を成立させようとする奥本の危うさと、それでもどこか憎めないキャラクターが、この言葉にもよく表れているように感じました。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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