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まるでウォーリーをさがせ!?奈良・壷阪寺のユニークひな人形

2025.02.25

まるでウォーリーをさがせ!?奈良・壷阪寺のユニークひな人形
ホットケーキを前に、あたかも「ナニコレ~、めっちゃうまそうやん!」という歓喜の声が聞こえてきそうなこのお人形。実は、桃の節句でおなじみのひな人形です。奈良県の壷阪寺(南法華寺)では、2月23日から、約4500体ものひな人形による圧巻の「大雛曼荼羅(だいひなまんだら)」がスタートしました(4月20日まで)。

想像を超える大規模人形供養であることはもちろん、SNSでは、約4500体のひな人形の中から、毎年増えていく、写真のようなクスっと笑えるひな人形をまるで“ウォーリーをさがせ!”的な感覚で楽しめる、ユニークおひな様として、近年人気を集めています。

原チャリに乗ったやんちゃ感あふれる五人囃子

では、「大雛曼荼羅」やクスっと笑えるひな人形とは、いかなるものか?壷阪寺執事の喜多昭真(きたしょうしん)さんに詳しくお聞きしました。

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全国からやって来た約4500体ものおひな様

本尊・十一面千手観世音菩薩を中心とした本堂の大雛曼荼羅

西国三十三所観音霊場の第六番札所であり、盲目の沢市とその妻お里の夫婦愛の物語・人形浄瑠璃「壺阪霊験記」でおなじみの壷阪寺(奈良県高市郡高取町)。同寺がある高取町が町おこしの一環で約18年前から「町家の雛めぐり」をおこなっていた関係もあり、同じ頃に人形供養として、当初は7段飾り程度のひな飾りからスタートしたそうです。

大講堂の大雛曼荼羅

「仏様と一緒にひな人形をおまつりすれば、自然と手をあわせてお参りしていただけると思い、真言宗のお寺なので、仏様を中心とした曼荼羅とおひな様をかけて、大雛曼荼羅と呼んでいます」と喜多さん。人形供養といえば、最後におたき上げをすることが多いのですが、壷阪寺では、毎年3月3日のひな祭りにあわせて、再びおひな様として飾ってもらえると口コミで広まり、東北や九州など全国からひな飾りが寄進され、今では約4500体まで増えたそうです。(現在、寄進の受け付けを中止)

灌頂堂のひな飾りの様子。来年の大河ドラマの主人公で、郡山城主「大和大納言」の豊臣秀長公(秀吉の弟)と橿原市在住の和紙工芸作家・豊田高明氏が寄進した平城京大極殿、朱雀門、薬師寺東塔・西塔の和紙模型とひな人形

昨年までは、本堂、大講堂の2ヶ所でおこなわれていましたが、今年から灌頂堂(かんじょうどう)が増えて3ヶ所になりました。それでは、各お堂のユニークひな人形をご紹介しましょう。本記事をヒントにぜひ、実際に現地でじっくり探してみてください。

【本堂】ひな人形が花見で宴会中!?「スナック ひな」も登場

「スナック ひな」で、ママとデュエット中

今年の本堂では、ひな人形たちによるお花見の宴会が開催中。なんと、「スナック ひな」も登場し、ママとデュエットを楽しんでいます。
さらに、笑い上戸なのでしょうか…?赤ら顔の酔っぱらいに見えるひな人形など、びっくりするほど表情豊かなひな人形たちが花見酒で盛り上がっています。まるで笑い声が聞こえるようです。
あれ?ひな人形ってこんなに表情があっただろうか?と思うかもしれませんが、喜多さんは、「お内裏様とおひな様は高貴な方々なので、すまし顔です。ですが、段が下がるごとに徐々に人形に表情が出てきて、一番下の段にいる仕丁(しちょう)は、身分が低く、我々庶民と同じなので、それぞれ喜怒哀楽の豊かな表情を持っているのです」と説明します。
アンパンにかぶりつきながらご満悦な彼を「おいおい…あかんて、口に付いてんで」と眺める隣の彼の何とも言えない表情!芸が細かく、にくい演出力にセンスを感じます。

人気お笑いコンビ「シャンプーハット」が番組のロケで来てくれたことからレギュラー入りした漫才びなも。

人気お笑いコンビ「シャンプーハット」が番組のロケで来てくれたことからレギュラー入りした漫才びなも。

【大講堂】その年の時事ネタひな人形に注目

イケメンが際立つ大谷翔平選手びな

もともと、コロナ前(5~6年前)に牛車に乗ったおひな様レベルで導入したユニークひな人形。徐々にエスカレートして、脱線していき、参拝者から「今年は何のおひな様ですか?」とよく聞かれるようになったことから、その年の10大ニュースなどを参考に話題のネタを盛り込むようになったそうです。「最近は悪いにニュースが多くて、ネタが少ないですね」と残念そうな喜多さん。
今年の新作は、昨年(2024年)開催されたパリ五輪からインスパイアされた槍投げ官女です。寄進されたひな飾りは、まるでひな人形博物館と言っても過言ではないほど、さまざまな年代のものを見ることができます。

マリオ!?ならぬ「ひなオ」も

喜多さんを含め、職員3~4名で約3週間かけて飾る大雛曼荼羅。年に1日だけ、希望者を募り、実際に飾るのを手伝うことができる機会があるのですが、参加者のなかには、「おひな様を実際に飾るのは初めてです」と話す20~40代女性もいて驚いたのだとか。「家族みんなで一緒にひな人形を飾る伝統的な行為そのものが失われつつあるのでしょうね」(喜多さん)。壷阪寺は、ある意味、その伝統を受け継ぎ、後世へ伝え残していると言えます。

SNSで話題の桜大仏と一緒に

桜大仏(画像提供:壷阪寺)

「大雛曼荼羅」の開催期間は、4月20日までなので、ちょうど桜のシーズンとも重なります。壷阪寺といえば、SNS映えすることで有名な「桜大仏」が大人気。あわせて両方楽しめます。「ぜひ、おひな様のたくさんの表情をご覧になって、クスっと笑って、心なごんでいただき、観音様にお参りください」(喜多さん)

本当にウォーリーをさがせる!?

ちなみに余談ですが、本当に大雛曼荼羅のなかにウォーリーがいます。かなりむずかしいのですが、ぜひとも、現地でチャレンジを!(ヒントは写真)

昨年の桜シーズン(3月末~4月上旬)の土日は、駐車場が大混雑だったとのこと。インバウンド客も多く、1週間で約2~3万人の参拝者が訪れるほどの人気ぶりです。今年の桜シーズンの駐車場は、予約制なので注意が必要です。町役場のグラウンドに駐車して、バスで来寺するパークアンドライドも導入予定です。少しでも混雑を避けたいなら、平日に訪れる方が良いかもしれません。桜シーズンの土日の駐車場予約は壷阪寺ホームページよりお申し込みください。

壷阪寺公式サイト(https://www.tsubosaka1300.or.jp/

取材・文 いずみゆか
奈良を中心に関西の文化財やミュージアムを訪ね歩くのが大好きなライター
miyoka
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