行ってみよか

世界遺産・二条城でキーファー展、京都だけの特別体験

2025.03.30

世界遺産・二条城でキーファー展、京都だけの特別体験
2025年3月31⽇より世界遺産・⼆条城(京都市中京区)にて「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展が始まります。
1945年にドイツで⽣まれたアンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話などのテーマを、絵画や彫刻などさまざまな表現で壮大な世界を創造する、戦後ドイツを代表する芸術家です。
1991年には高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門を受賞し、日本では1993年に大規模回顧展「アンゼルム・キーファー展 メランコリア−知の翼−」(京都・東京・広島)が開催されました。2024年には「ベルリン・天使の詩」(1987)や役所広司さんが主演した「PERFECT  DAYS」(2023)で知られるヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー映画「アンゼルム “傷ついた世界“の芸術家」が公開され、大きな話題を呼びました。

今回の展覧会はアジア最⼤規模であり、33 点の絵画と彫刻が⼆の丸御殿台所・御清所とその周辺の庭に展⽰されます。

アンゼルム・キーファー氏
2025年3月

公開に先がけて開催された内覧会に参加してきました。
キーファー本人や、音声ガイドのナレーションを担当するダンサーの田中泯さんも来場。レセプションではキーファーの大きな作品≪ラー≫の前で舞踊を披露。キーファーは「泯の踊りは私の作品に光を与える太陽のよう」と絶賛しました。
展覧会を訪れる人々は、最初に二の丸御殿台所の前庭に設置された、高さ約9メートルもある翼が生えたパレットの彫刻と出会うことになります。作品名≪ラー≫(2019)は古代エジプトの太陽神の名前です。パレットは真新しく見え、これから絵の具を絞って現れる創作物が世の中に羽ばたいてゆく希望を感じる作品です。時間帯によってはパレットの穴から太陽光が眩しくのぞき、表現の自由や喜びを象徴するかのようにも見えますが、それを支える鉛でできた柱の足元には蛇が巻き付いていて、飛び立つことを制止しているかのようにも感じられます。それとも古代エジプトやギリシャ神話で知恵の象徴とされる蛇が飛翔を援護しているのでしょうか。
私たちの感受性も翼を広げてキーファーの世界観へと導かれていきます。
扉が開け放たれた台所の入り口正面には≪オクタビオ・パスのために≫(2024)が待ち構えています。
幅約10メートルもあるこの絵画は今回のために制作された新作です。
まずその大きさと、画面からほとばしるエネルギーに圧倒されます。しばらく呆然とたたずみ、近づいてよくよく見てみると、ムンクの「叫び」のような、口をあんぐりと開けた、苦痛に歪む人の顔が。その周辺には大小さまざまな岩石が貼り付けられています。
この作品は日本への原爆投下を題材としたもので、戦後80年にあたる今年、この作品と対峙することは今を生きる私たちに、ある種の責任感を痛みを持って再認識させられる機会となるでしょう。
この作品以外にも原爆投下後の骨組みだけになった学校を題材にした≪オーロラ≫(2019−2022)も展示されています。画面に貼り付けられた乳母車から、どんなことを想像するでしょうか。
二の丸御殿御清所の部屋いっぱいに生まれた麦畑も圧巻です。
≪モーゲンソー計画≫(2025)と名付けられたこの作品は、戦後のドイツ再興を阻むよう、合衆国がドイツの脱工業化を進めて農業国にしようとした計画を題材としています。敷き詰められた砂を踏まないように気をつけながら奥に進み、麦畑を手前に、奥にある≪ヨセフの夢≫(2013)を眺めていると没入感を味わえます。金箔が塗装された穂先は動くはずもないのに、風にそよぐ麦畑の中にいるような錯覚を覚えるインスタレーションです。
台所入口や中庭に設置されているさまざまな白いドレスの彫刻≪古代の女たち≫は、ある意味この展覧会の中でホッとできるかもしれません。女性が排除されてきた歴史の中で、革新的に成功を収めた女性たちの名前を冠した作品にはそれぞれどの分野で活躍したのかわかるようなシンボルが頭部に設置されています。
この展覧会が素晴らしいなと思う点は、一部を除いて照明を使っていないところです。
室内に差し込む太陽の光だけで照らされる作品は、そのテーマ性を忘れさせるほど、あるいは時間を忘れて深く対峙できるほど物静かです。日本建築の陰影の美をうまく生かしていて、あたかも前からそこにあったかのように自然と馴染んでいます。
昨年、会場の下見にやってきたキーファーは二条城の狩野派による数々の金碧障壁画に刺激を受けて、自身の作品に金箔をふんだんに使ったそうです。その金が自然の光に照らされて薄暗い部屋の中で輝きを放つ様子はため息が出るほど美しく、移ろう時の流れの中でどう変化して見えるのか、また訪れたくなります。
この作品展につけられた「ソラリス」とはラテン語で「太陽」という意味です。
エネルギーや未来、変化、再生という言葉とつながる「太陽」の展覧会で、「作品の解釈は見るひとに委ねます」と話すキーファー。
想像の羽を広げてキーファーの作品とともに歴史や文化を旅する時間を過ごしてみませんか。

展覧会概要

「アンゼルム・キーファー:ソラリス」
【会期】2025年3⽉31⽇(⽉)〜6⽉22⽇(⽇) ※ 会期中無休
【会場】⼆条城 台所、御清所等 ( 京都市中京区⼆条通堀川⻄⼊⼆条城町 541)
【開場時間】9:00 - 16:30 *最終⼊場は 16:00 *⼆条城の最終⼊城は 16:30、17:00 閉⾨
【料金】⼀般 2,200 円 / 京都市⺠・⼤学⽣ 1,500 円 / ⾼校⽣ 1,000 円 / 中学⽣以下 無料 ほか  
*⼆条城の券売所では購入不可 (別途、二条城への入場券の購入が必要)
*⽇時指定の事前予約制 、⼊場者数制限あり。予約状況は HP でご確認ください
公式HP https://kieferinkyoto.com
公式X https://x.com/anselmjp
miyoka
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