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[天満のひと]天神橋三丁目商店街 に「書」で華を添える(書道家・今柄紫峯さん)

2023.10.12

[天満のひと]天神橋三丁目商店街 に「書」で華を添える(書道家・今柄紫峯さん)
天神橋三丁目商店街と関わりの深いアートをご存じでしょうか?
イベントの時に上がる幟やスタッフが着用しているポロシャツの背中に書かれたロゴ。
実は書道家の今柄紫峯(いまがら・しほう)さんが手がけられています。
―「書」を始めたきっかけは?
小さいころに習字を始めました。先生に字を習うのが好きだったので、毎週楽しみに通っていました。
継続して習っているうちに書道師範の資格をとり、大学生のころから家族や親しい人たちを相手に、書道を教える練習を始めていました。20代前半は迷いもありましたが、結局は書の道に進もうと決めたのです。

京都で書道の家庭教師をしようと、知り合いのカフェにお知らせのポストカードを置いてもらいました。1年半くらい経った頃に、そのカードの書体を気に入ってくださった蔵元さんから連絡をもらい、お酒のラベルの文字を書いてほしいというご依頼をいただいて、初めて習字ではない「書」に挑むことになりました。それが藤岡酒造「蒼空」のラベルです。その時初めて「書」で自分や相手の思いを表現する、という世界があることを知り、思いに寄り添う「書」の面白さに気が付きました。
―茶筌MOJI(ちゃせんもじ)との出会いは?
茶筌MOJIとは、茶筌を作る工程で何らかの理由で商品としてクリアできなかったものを使って、書画作品に仕上げたものをさします。
私が住む奈良県生駒市には、高山地区というところがあり、そこは「高山茶筌」をはじめ茶道具や竹製品など伝統工芸が盛んな地域です。かつて茶杓作りの体験をしに行ったところ、そこの茶筌師さんが書道を習いたいとおっしゃって、それからお付き合いが始まりました。茶筌はかなり繊細な工芸で、ちょっとしたことで商品にできないことが多いことを伺い、処分するくらいなら筆として使用できないかなと思ったのがきっかけです。

これまでも、い草やアダンなど植物を筆にした文字を書いたことがあるのですが、それら以上に茶筌はなかなか手ごわいです。筆にするには竹が硬すぎて紙が破れてしまいます。お湯につけて柔らかくしたり、書く時の力加減を工夫するなど試行錯誤を繰り返しました。
流派やお点前によって竹の種類や形状が異なる茶筌は、それぞれにくせがあって扱いにくいのですが、茶筌の動きに身を任せると、思いもかけない楽しい線が生まれます。一般的な筆とは違って、書く角度や動きを変えると想像もしなかったいろんな表現ができることがわかりました。
書道は一度で書くのが基本ですが、茶筌は墨を吸わないので二度書き三度書きすることになります。でも見方を変えて、茶筌MOJIという新しいジャンルのアートととらえたら、それもアリなのかなと。絵を描く感覚で「書」から飛び出してアート作品を制作することに無限の可能性を感じています。きっともっといろんな表現が引き出せると思いますし、茶筌MOJIの世界をもっと探求していきたいです。
―天三とおつき合いが始まったきっかけは?
2010年に関西大学社会学部の先生方が地域研究と社会連携を目的としたリサーチアトリエを天三に開設され、そのオープニングイベントで書の作品をご来場者の方にプレゼントをするお手伝いをさせていただいたのが始まりでした。それ以降、大学を通して「書」で商店街さんと関わることが多くなりました。
例えば、南森町の銀行前で、違法駐輪をなくすために木のベンチを置くという社会実験が実施された際には、一緒に設置される木板に文字を書くお手伝いをしました。でも、より関係が深まったのは2016年からリサーチアトリエが閉鎖されるまでの約2年間、常駐スタッフとして就任したことです。その期間中は、「書く」以外にも商店街の清掃活動を行ったりもしていたので、自然と店主さんたちと挨拶をきっかけに親交が深まっていきました。
現在も商店街でお祭りなどのイベントがある毎に、ポスターのタイトルを書いたりするボランティアを続けています。

―今月、商店街にある“天三おかげ館”で「茶筌MOJI展」を開催されますね
初日は天満音楽祭も地域で開催される予定です。一緒に商店街の賑わいに華を添えられたらうれしいです。
たくさんの方にこの地域の魅力を感じていただきたいので会期中、商店街のお店でお菓子を買って会場に来てくださった方には茶筌でたてた抹茶をお出ししたり(無料)、茶筌づくり体験会(24日のみ・有料)も開催する予定です。
天神橋三丁目商店街振興組合・築部健二理事長よりひとこと
今柄さんには天三の幟やイベント時にスタッフが着るポロシャツのロゴなどを作ってもらっています。
「ホッとする町」というのが天三商店街のひとつのコンセプトで、「なんか落ち着いて買い物ができる」「なんかほっとするな」とみなさんに感じて欲しいという思いを文字で表現したくて、ポロシャツのロゴをお願いしました。結果、「天三」っていう文字が踊っているようで賑わいを感じる、そして地域を大切にするんだという僕たちの気持ちがあふれ出るようなそんなロゴになり、とっても満足しています。イベントに参加されて「このポロシャツが欲しい」と言ってくださるお客様がいるほど人気です。今度の展示会では、天満音楽祭から続いて、書に親しんでもらい、「カルチャーを楽しめる商店街」として多くの方に訪れてもらえたらうれしいです。
開催概要
「茶筌MOJI展」今柄紫峯 Solo Exhibition   今柄紫峯Instagram
【日時】2023年10月22日(日)~25日(水) 11:00~19:00(最終日のみ17:00まで)
【場所】天三おかげ館 大阪市北区天神橋3丁目5-15(天神橋筋商店街内)

miyoka
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