聞いてみよか

大谷亮平、初日に藤原丈一郎と長せりふ「気持ちが締まった」

2025.07.05

大谷亮平、初日に藤原丈一郎と長せりふ「気持ちが締まった」
霊の声が聞こえるという特殊能力を持つ青年・緋山(藤原丈一郎さん)が、事故物件を転々とする中で様々な事件を解決していく、放送中のドラマ『ロンダリング』。同作で、緋山の雇い主となる不動産会社社長の天海吾郎を演じるのが、大谷亮平さんです。大谷さんは実は「不動産を見るのが好き」で、いろんな場所に住んできたと言います。そこで今回は大谷さんに、天海吾郎役についてはもちろんのこと、住む場所についても話を聞きました。
―『ロンダリング』は撮影の大部分が大阪で行われましたが、印象深かったロケ地はありましたか。

僕自身が大阪出身で、何となしにロケの移動車に乗っていたら「あれ、ここは?」と見覚えのある場所を通って。「うえほんまちハイハイタウン」(大阪市天王寺区)でした。そこにある中華料理屋さんは、高校生時分の思い出の場所なんですけど、自分にとって人生でもっとも濃い時間を過ごしたのが、まさに高校生の時。あのときは俳優として母校の近くで仕事をするとは思っていませんでしたし、すごく感慨深かったです。

―『ロンダリング』には様々な物件が出てきます。大谷さんはこれまで、韓国、台湾などに住んで芸能活動をおこなっていらっしゃいますよね。いろんな物件に住んできたのではないでしょうか。

15ヶ所くらいは住んだと思います。2、3年に一度のペースで引越していました。韓国だけでも6、7回は住む場所を変えたのではないでしょうか。おっしゃるように台湾にも住みましたし。引越って面倒くささはあるけど、でもお得な気がするんです。

―どういうところがお得なんですか?

たとえば僕は韓国に10年住んでいました。韓国語は3年くらいである程度は話せるようになったんです。じゃあ残りの7年をどのように過ごすか。僕は、ほかの言語をいろいろ話せるようになった方がお得だと考えるタイプなんです。スポーツもそう。バレーボールを小学生の頃から現在までずっとやっていますが、ほかにも、テニス、サッカーなどが出来た方が僕はお得な気がする。人生の半分を越えたくらいからそういう思考になってきたんです。同じ10年を過ごすにしても、一つを極めるか、得意分野を増やしていくか、ということですね。

―なるほど

住む場所も、10年あれば、3、4回は変えられる。そうすればいろんな土地、人に触れることができる。「こういう場所があるんだ」と気付きがある。「良い場所だな」と思える場合もあれば、そうじゃないこともある。それも含めて思い出が増える。費用のこともあるから、そう何度も引越しはできないと思いますが、それを考えなければ、僕自身、住んだ場所が15ヶ所というのはまだ少ない。韓国、台湾、大阪、東京だけなので。もっといろんなところに住みたいという願望は漠然と持っています。

―住む物件で「これは譲れない」という条件はありますか。

スーパーマーケットが近くにあるかどうか。撮影が詰まっている時期以外は、毎日行くんです。レジの人からはきっと「この人、また来たな」と思われているはず(笑)。あと方角とか、見晴らしがいいかとか。以前、そういうところに住んだときに仕事がすごくうまくいった気がして。それからはできるだけ条件として気にするようにしています。
『ロンダリング』大谷亮平 2025年6月

『ロンダリング』大谷亮平 2025年6月

―『ロンダリング』で大谷さんが演じられた天海吾郎は利益優先で冷酷な顔も持ち合わせる人物。大谷さんは、天海をどのように演じようと思われましたか。

木村監督からは「天海にはいろいろ過去があります」と聞いていましたが、最初からそういう要素は出さないようにしました。しかしドライにいきすぎるとキャラクターの魅力が薄れると考えました。ですので、前半は緊張感を漂わせる意味でもサイボーグ的に、冷酷な風に見せています。しかし物語が進むにつれて人間性がにじみ出てくると思います。決して悪役ではないので、視聴者のみなさんに多少は共感されるところもあるかもしれない。ほんの少しくらいは、誰かの気持ちに寄り添えるような役。そういうところに、天海の魅力を感じました。

―そんな天海の下で働くことになったのが、霊の声が聞こえる青年・緋山鋭介。緋山役の藤原丈一郎さんとは撮影初日、ほぼ初対面の状態で、いきなり長せりふの場面をやったとか。

僕は結構、長せりふの芝居が好きなんです。それで芝居のペースが作れたりします。そして“何回戦”かやっていくうちに「こういうせりふの言い方にしよう」とか、ぐるぐると考えたりします。

―でも単純な質問ですが、長せりふの芝居って大変ではないですか?

芝居をしていて「自分は今、ここでなにをやっているんだろう」って、ふっと現実に引き戻されるような瞬間があるんですよね。一度そういう感覚に戻ってしまうと立て直すのが難しい。だからなんとか現実を排除します。そのためには開き直ってやるしかない。そういう意味でも長せりふの芝居のように、カットがかからずにやっていくと気持ちがどんどん入っていくんです。

―その長せりふの芝居を藤原さんとやってみて、どのような感触でしたか。

台本の読み合わせで一度は会っているものの、それでも分かることってお互いに見た目くらい。どういう感じで来るのかは、やってみないと分かりませんでした。クランクインの日の最初の撮影は、第一話の緋山と天海が初めて会うシーン。そのときに「なるほど、藤原くんはこういう感じで来るんだ」と思いました。

―演じながらも、そうやって相手の出方をうかがっているというのがおもしろいです。

「結構、強めに来るんだな」とか、「テンポは早めだな」とか。しかもそこでの緋山はまくし立てるようにしゃべるので、藤原くんも最初からなかなかの勢いで来たんです。クランクインの日の最初の撮影で、いきなり100で来た感じ。僕だったら「これがインの日の撮影の最初だったら嫌だな」と思うようなシーンなんです。だけど藤原くんは集中力もあり、この作品に入る覚悟も感じられ、みなぎるものが見えた。そこで僕もある意味、気持ちが引き締まりました。

―大谷さんも「このシーンの撮影が最初だと嫌だな」と思ったりするんですね。

現場では、俳優の間でよく出る言葉なんです。「インでこのシーン?」って。実は僕は、最初はどんなシーンでも嫌なんです(笑)。発散する感じのシーンと、しっとりするシーンってあるじゃないですか。発散する方がほぐれるんですけど、そのあとが大変。そのテンションを引きずるところがあるから。でも、人によるでしょうね。徐々に温めていきたいか、最初に感情を出す方が合っているかは。だからみんな最初のシーンの撮影は探り、探り。大げさな言い方をすると、そこにいる全員が味方なはずなのに、敵に見えたりする。だからインの前日はみんな、多少はナーバスになったりするんです。
―最後にあらためて、『ロンダリング』は視聴者にどんなメッセージを投げかける物語だと思いますか。

藤原くんが演じる緋山の成長は、ご覧になっていて気持ちが良いものだと思います。霊の声が聞こえるという、本当であれば不必要な能力が、とあることをきっかけに好転していく。それはどんな人の日常にも当てはまる気がします。つまり、どういう環境に自分の身を置くのか、どういう人と出会うのか。それによって物事が良い方向へ行くこともある。もし自分のことについてネガティブに捉えていたり、問題を抱えていたりする方がいらっしゃれば、緋山の姿をみて「必ずしもマイナスではないんだ」と前向きに思えるかもしれません。
『ロンダリング』大谷亮平 2025年6月

『ロンダリング』大谷亮平 2025年6月

インタビュー・文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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