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樋口幸平「退屈な時間はいらない」学生時代の挫折から今…

2025.05.18

樋口幸平「退屈な時間はいらない」学生時代の挫折から今…
現在放送中のドラマ『MADDER(マダー) その事件、ワタシが犯人です』。
同作は、偏差値78超の天才高校生・仲野茜(五百城茉央)が、ある殺人事件の犯人と思われる青年・黒川悠(山村隆太)との出会いを機に小さな事件を学内で起こし、やがて学内で本当の殺人事件が発生。さらに日本を震撼させる連続殺人事件に発展し…という最強ミステリーエンターテインメント。
このドラマで茜のクラスメイト、江藤新役をつとめるのが樋口幸平さんです。
樋口さんは、2022年から2023年に放送されたスーパー戦隊シリーズ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(テレビ朝日系)で主人公・桃井タロウ/ドンモモタロウで脚光を浴びた、期待の若手俳優。
今回はそんな樋口さんに、『MADDER』のことなどについて話を聞きました。
―樋口さんにとっては今回、初の学園ドラマへのチャレンジになりますね。
ずっと「学園ドラマをやってみたい」と思っていたんです。だけど、僕が想像していた学園ドラマとはちょっと違いましたが(笑)。でも、初めての学園ドラマが『MADDER』で良かったと思っています。色々な要素が入った内容ですがその分、いろいろ考えながら演じることができました。

―樋口さんが演じた江藤がいるクラスは天才揃い。江藤自身も「中学校全国クイズ大会優勝」です。それゆえ、誰もが「この同級生は自分より上」と認めたくないはず。そういう嫉妬心、劣等感がどうなるのかがこのドラマのおもしろさの一つである気がします。
「全員天才」という設定は、この作品の中ですごく大事であり、絶対に説得力を持たせなければいけない要素でした。ご覧になる方に少しでも「天才じゃない」と感じさせると、物語の説得力も失われる可能性があります。それは本読みの段階で、全員が気を付けていた部分です。

―細かい仕草、せりふ回しなどいろんな部分で「天才」を意識するべきところも多かったのではないですか。
まず仲野茜が創立以来初めて全科目満点で入試した生徒だと伝えられたときです。全員が彼女の方に振り向くシーンは、表情含め集中して演じました。あと気を付けたのは台詞のテンポ感。相手の言葉の語尾にかぶせるように自分の話をしはじめるなど、頭の回転が早く、口もすぐに出てしまうところを表現しました。演じる中に、それぞれが競い合っている感情を出していくことに意識しました。

『MADDER(マダー) その事件、ワタシが犯人です』
江藤新(樋口幸平)

―茜、江藤らが通う学園は全国トップの進学校ゆえ、入学できれば将来の成功が確約されるところです。ちなみに樋口さんは、将来への確約は欲しいですか。
自分は性格的にも自由が好きなので、確約されていない人生の方が楽しいです。その方がもっといろんな人と出会ったり、インプット、アウトプットができたりする気がしています。もちろん、将来が確約されていて安定した道を歩むのは素敵なこと。むしろ多くの人が確約された将来を欲しがるのではないでしょうか。実は昔の自分もそうだったんです。僕は高校まで15年間、サッカーにずっと打ち込んでいて、プロになることを夢見ていました。一方、「もしサッカーの道がダメだったとき、自分はどうしたらいいんだろう」と不安に襲われ、安定という言葉を探す自分がいました。

―サッカーではプロ育成選手にまでなられましたね。
高校卒業後プロ育成選手になれましたが、ケガが原因でプロ選手の夢を断念しました。ただ、ケガがなくてもプロになれなかったと思っています。常に実力不足を実感していましたから。「自分はプロにはなれないんだ」と気づき始めたとき、めちゃくちゃ悔しかったです。プロになることだけを目指してそれまで生きていたので、現実に直面し、どん底に落ちました。そういう意味でも、将来はどうなるのか分からないものだと痛感しています。だけど今は俳優として新しいチャンスをいただけて、二回目の人生を歩んでいる感覚。だからこそこの瞬間を大切にしたいし、チャンスを掴まなきゃいけないし、焦ったりすることもあるのですが今は楽しいです。

―周りからの刺激はどうですか。たとえば小学生の頃からの友人であるお笑いコンビ、笑い時々音の亀井さん、藤尾さんのように、芸能活動をおこなっている同級生がいると「自分もがんばろう」となれるのではないですか。
そうですね。特に二人からは、「お笑い芸人をやってみたいけど、勇気が出ない」と相談を受けて、「やった方がいい!」と後押ししたので。僕自身も俳優の世界に入った時だったのでお互いにがんばり続けたらいつかバラエティで共演できるかもしれない!「そういう夢を見てもいいんじゃないか」って。お笑いの世界も俳優の世界も厳しいでしょうし、でもまだ24歳。一緒にがんばろうという話を会うたびにしています。

樋口幸平
2025年4月撮影

―『MADDER』の仲野茜は世の中につまらなさを感じ、乾いた日常を埋めるために犯罪の世界に足を踏み入れていきます。でも今の樋口さんは、退屈している時間はなさそうですね。
今の僕は、退屈な時間はひと時もいらないと思っています。それでも出演作と次の出演作の撮影期間があいて、いわゆる退屈になる時間ができることがあります。今はそういう時間は必要としてないので、退屈に思わない過ごし方を意識しています。なかなか会えていない人に会ったり、ジムに行ったり、映画見たり、自分自身の成長に繋がる時間にしようと心がけています。。

―そしてすべて仕事に繋げていく、と。
今は頭の中が常に仕事モード。だからもっともっと忙しくなりたい!って言いながら忙しくなると退屈への憧れが生まれるはず(笑)

―俳優は常になにかの役と向き合っていますし、そういう意味で樋口さんにとって俳優業はすごく合っている気がします。
自分にとって初めて「この仕事は向いている」と思えたのが、俳優業でした。でもお仕事をさせてもらっている中で感じるのは、運の良さです。今の事務所やマネージャーさんが支えてくださっていること、『ドンブラザーズ』などの素晴らしい作品に出会えたこと、そして撮影現場でスタッフさん、共演者のみなさんなどの優しさに触れられること。それらはすべてめぐり合わせですし、その縁が繋がって現在があるので。

―逆にこれまではどうでしたか。
サッカーをやっているときは「ツイていないな」と感じることが多かったんです(苦笑)。というのも、高校1年のときから試合に出ていたのに、一番大切な試合で骨折したり、調子が良いときに限ってどこかを痛めたり。自分に実力があればそんなことも跳ね飛ばせるけど、そうではなかったの時には余計に「運を持ってないな」と感じていました。

―出身地・兵庫県で暮らした少年時代は、まさにサッカーに明け暮れていらっしゃったんですね。
はい、学生の頃は、退屈な日が本当になくて。ほんと、退屈が欲しかったです。月曜日から日曜日まで毎日サッカーの練習で、ずっとグラウンドにいたので、地元での思い出はすべてサッカーのグラウンドにあります。

―そんな樋口さんが『MADDER』の中でどんな演技をされるか、期待している視聴者も多いはず。
僕が演じる江藤は日本一の進学校の中でもトップの成績を誇っています。しかし自分の上に仲野茜がいることを知り、劣等感なのか、それとも別のものなのか、なんとも言い表せない感情のまま、彼自身の物語も進んでいきます。ただ、後半になるにつれて人間味が出て来ます。仲野茜に対する気持ちがどうなっていくのか、ぜひご注目ください。

樋口幸平
2025年4月撮影

インタビュー・文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
『MADDER(マダー) その事件、ワタシが犯人です』公式HP☞https://www.ktv.jp/madder/
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