映像のちからをつなげたい~回想法シアターで目指すこと~
2023.11.13
審査会を経て採用されたいくつかある事業の中から、「回想法シアター」を起案した報道部の井村慎介さんと制作技術センターの堀田秀治さんに話を聞きました。
懐かしい映像を見て、思い出を語り合うレクリエーションプログラムです。
映像アーカイブを整理する中で60年代のドキュメンタリー映像をみていると、当時の街の景色や歩く人の服装など、どこを切り取っても昭和のカルチャーが映し出されていて、見ていて飽きませんでした。開局してから65年余りの映像を残してあり、これはカンテレのオリジナリティにあふれる財産だと思ったし、放送以外の事業を考えるうえで強みになるなという直感がありました。
映像をみながら当時のことを思い出して、誰かと一緒に思い出を語りあう。それはストレス発散につながりますよね。「そうそう」とか「こんなこともあった」なんておしゃべりが弾んで、楽しく生活することにより健康寿命が延びる手段に、映像が使えたらいいなとチームで話し合っていました。
医療介護の現場では懐かしい写真や家庭用品などを見たり触れたりすることで、当時の経験や思い出を語り合う「回想法」という一種の心理療法があり、認知症の方へのアプローチとして注目されています。そういったこともヒントになり「回想法シアター」が出来上がりました。
今年度は吹田市と西脇市で「回想法シアター」のイベントを実施しました。
吹田市からは高齢者生きがい活動センターがそこに集う方へのレクリエーションを新規開拓したいということで声がかかったのです。
吹田という場所、そして近々大阪・関西万博もあることから、テーマを「1970年の大阪万博」に絞りました。
そうしたら、もう会場は大盛り上がりです。参加者の方たちが語るエピソードがリアルで。
出てくるのは、いわゆる一般的に大阪万博を語るときに出てくる「月の石」とか「人間洗濯機」ではなく、地元の人たちや万博関連の仕事をしていた方たちの深いところに眠っているエピソードでした。例えば「小学校の宿題が万博の会場でだれでもいいので外国人のサインを20人分集めてくることだった」なんて話が出ていましたが、それが「そうそう!」ってみなさんの記憶が刺激されて、またどんどん話が広がっていくんです。いわゆるオーラル・ヒストリー(口述歴史)が山盛りでした。
それぞればらばらだったピースがパズルのように繋がっていき、モノクロだった映像がカラーになり、生き生きとリアルに記憶の泉が湧きあがる感じ。
イベントを開催して、参加者の様子を拝見したり、自分たちが疑似体験したことにより、「回想法シアター」の方向性は間違っていないなと確信につながりました。
「学校給食」とか「ミニスカート流行」とか「屋台のラーメン」「新婚旅行」なんてくくりで作ったコンテンツが今は約50テーマほどあります。映像としてはどれも芸能人が出てくるような華やかなものではなく地味ですが、当時の人たちがどういう風に生活をしていたのか、世相を知ることができる、今となっては貴重な映像ばかりです。
回想法シアター HP
【SD】集団就職・大阪駅(1960)
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