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結城(大森南朋)と美海(一色香澄)の裏面「人の心は万華鏡」【あなたを奪ったその日から】

2025.05.19

結城(大森南朋)と美海(一色香澄)の裏面「人の心は万華鏡」【あなたを奪ったその日から】

『あなたを奪ったその日から』第5話 レビュー

保育園の調理師から転職し、結城が事業責任者を務めるスーパー「スイッチバック」のお客様相談室に配属された中越紘海(北川景子)。『あなたを奪ったその日から』第5話は新しく登場したお客様相談室のメンバーたちとの関わりとそこから見えてくる結城旭(大森南朋)の価値観が見えてくる回となりました。

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紘海は、お客様相談室の先輩である村杉結愛(田山由起)から指導を受けることに。結愛は結城を尊敬しているようで、何かと結城にべったりです。紘海はお客様相談室で、スーパーに届いたお客様の声の投書を仕分ける仕事をすることに。ある店舗から届く投書の中に「幼児殺し」や「クソ情無」など、結城を中傷する内容がたびたび混じっていました。

『あなたを奪ったその日から』第5話
中越紘海(北川景子)

紘海は結城の近くで仕事をしながら、結城が食品事故に関して隠蔽していることを暴こうと、同僚たちに聞き込みを実施。結城がタイナスに転職するときにYUKIデリの社員の中からひとりだけ連れて来なかった人物がいたことが明らかに。紘海は、その人物を投書の犯人として疑い、YUKIデリの人物であったのなら食品事故について知っているのではと、調査を進めます。第3話では戸籍取得、第4話では玖村から話を聞き出し、第5話では投書の犯人探し。改めて、紘海の行動力と頭脳は、結城の事件のために使われているなと思いました。ヒューマンドラマでありながら、ミッションを遂行するまでのドキドキ感も味わえるドラマですよね。

結愛と結城が投書について、たいしたことではないかのように受け流す様子から、紘海の娘が亡くなった食品事故は遠い昔に起きた不慮の事故として片付けられているんだなと思いました。自分の娘が亡くなった事件を軽んじるような人たちと一緒に仕事をしなければならない紘海の苦しさをヒシヒシと感じます。

『あなたを奪ったその日から』第5話
三浦勝昭(大浦龍宇一)、村杉結愛(田山由起)、中越紘海(北川景子)

紘海が投書についての調査を進めるなか、東砂羽(仁村紗和)は結城の部下・望月耕輔(筒井道隆)に接触。砂羽は望月に「もしかして何も知らないんですか?」と揺さぶりをかけます。砂羽は、YUKIデリの調理責任者だった鷲尾勇(水澤紳吾)がタイナスに転職せずに辞めさせられていたことを知っていたのです。何も知らなかった望月は、結城を疑うように……。第4話で玖村が目撃したと語っていた結城と鷲尾のもめ事。二人は一体何を隠しているのでしょうか。

結城旭(大森南朋)、望月 耕輔(筒井道隆)

紘海はSNSの投稿などから、投書をしていると見られる人物を特定。喫茶店で待ち伏せし、後を追いかけるとスーパーで投書をしている場面を発見します。その人物の正体は、鷲尾ではなく、お客様相談室の室長・三浦勝昭(大浦龍宇一)でした。三浦は現場経験が豊富なベテラン社員でしたが、何の経験もない結城が常務になっていることを恨み、投書という行動に出ていたのです。紘海は人の強い恨みを目の当たりにし、それを結城に報告すべきかどうか悩みます。

三浦勝昭(大浦龍宇一)

結城は社員からの批判だろうと予想がついていたようです。「人の心は万華鏡みたいなもの」で、誰でも見方を変えれば、別の姿が見えてくる。自分以外の人間が何を考えているのか分からないと、結城の達観した考えが感じられました。紘海は、社員の声を伝えるのは業務外だと、三浦の仕業であったことを結城に告げないことを決めます。人から憎しみを向けられたときの反応から結城の人間性が見えてくる場面でした。

結城は紘海が面接で告げた意見を参考にして、ミールキットを開発するなど、自分の意見に固執することなく柔軟な考えができる人物のようです。社員として関わる結城は非の打ちどころのない良き経営者に見えます。でも、食品事故を起こして幼児を死なせてしまったのは事実。結城の心の内を知っていく中で、これまで結城に敵意を剥き出しにしていた紘海の心が大きく揺らいでいることが分かります。

ひと段落ついた時、紘海が以前務めていた保育園の園長・雪子(原日出子)から連絡が。第4話で出会ってしまった雪子と美海(一色香澄)。美海は雪子との出会いをきっかけに、紘海には聞けなかった自分の父親のことを雪子に聞きにきていたのです。「お母さん、お父さんの話するとすっごい困った顔するんだよね」という美海のちょっとした言葉にも、紘海への愛情が詰まっています。美海にも自分が知らない姿があるという事実に戸惑いを隠しきれない紘海。本当の父親が誰なのか言えるわけもなく、紘海は美海をただ抱きしめます。親子の絆が一層深まるシーンであると同時に、美海が本当の家族を求めて、いつか離れていってしまうのではないかという紘海の恐怖心と執着心を感じるシーンでもありました。

中越美海(一色香澄)

その頃、美容クリニックの受付として働き、27歳になった結城の長女・梨々子(平祐奈)はマッチングアプリを使って玖村(阿部亮平)に接触。梨々子は結城に結婚して家を出ると語っていましたが、人生のどん底に突き落とした玖村と再び接触するその狙いはなんなのでしょうか?

第5話の最後に結城とお客様相談室の元に鷲尾からのメッセージ動画が。「あなたには真実を明らかにする責任があるはずだ」と結城を糾弾します。鷲尾はやはり何かを知っているようです。第6話も見逃せませんね!
取材・文:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
miyoka
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