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伏線回収を超えた上田誠脚本の“あたたかさ”が、吉岡里帆の秘技「つじつま合わせ」を生む?

2023.10.25

伏線回収を超えた上田誠脚本の“あたたかさ”が、吉岡里帆の秘技「つじつま合わせ」を生む?

『時をかけるな、恋人たち』第3話レビュー

職場全体に結婚報告までしておきながら、「今夜、ふたりで会えませんか?」と常盤廻(吉岡里帆)にメッセージを送ってきた後輩の広瀬航(西垣匠)。第2話のラストに、X(旧Twitter)上の視聴者も「広瀬、おめえ婚約してんだろうがよ!」「梓(田中真琴)に鼻の下伸ばしておきながら恐ろしい」「最後に爆弾落としてきた」とザワザワしていました。ほんとそれな!

で、第3話の幕開けは廻と広瀬の食事シーンから。案の定、広瀬は「結婚、やめようと思っていて」と切り出し、揚げ句の果てには「僕、常盤さんのことが……」と告白未遂まで。結婚報告を受ける前まで広瀬に思いを寄せていた廻が、彼を制する姿に安心しましたよ。だってもうわたし、時空を超えた廻&井浦翔(永山瑛太)カップルの成立を応援しちゃっているので。廻に仕掛けた壁ドンあごクイを目撃され、「令和のプロトコル(広義:コミュニケーション上の規約)の訓練」と言い張る翔に、されるがままの廻。あーもう、かわいいかよ!

廻のモテ期はさらに続き、初恋相手の同級生・諸星(ラランド・ニシダ)にも再会します。ここでは「(少年だった頃から)感じが変わってるし、関西弁になってるし」という廻のモノローグに合わせ、ニシダ諸星のぽっこりお腹を映し出すカメラワークにほくそ笑んでしまいました。にしても気になるのが、別れ際に諸星の放った「あの時、手紙くれたやろ?」という言葉。あれ、回想シーンによれば、廻は諸星に手紙を渡せなかったんじゃなかったっけ? これも脚本の上田誠さんが張り巡らせた伏線でしょうか?
一方タイムパトロール基地では、23世紀で公務員をしながら令和に何度も訪れて夜の歓楽街に通っている違法トラベラー・水無瀬チサ(清水くるみ)が発見されました。廻と翔がカップルのふりをして尾行すると、チサはホストの永遠(吉村界人)に入れあげている様子。取り調べでチサは「彼も運命を感じてくれていると思います!」と相思相愛を猛アピールするも、疑似恋愛のプロであるホストが相手ということもあって、オペレーターの天野りおん(伊藤万理華)、メカニック担当の八丁堀惣介(シソンヌ・じろう)、隊長の和井内秀峰(石田剛太)はまったく取り合いません。
しかし、3人と意見を異にする翔はチサへの同情心を廻に打ち明けます。チサに自分を重ね、「未来人と過去人が愛し合うことで、何か新しい意味が生まれるのでは」と迫る翔の切実さが光るシーン。と思っていたのに、2人でいるところを天野に見られ、「もう言うよ? 付き合ってる!」と言って嫌がる廻の肩を抱き寄せる翔には大いに笑わされました。なんでもいいけど翔よ、チサの尾行時からどうして制服の下半身を脱いでトランクス一丁なんだね? 相変わらずビーチサンダルだし。このトンチキ感、なんかもう愛せる。

基地に戻った翔は「今回は見逃しませんか?」「恋に落ちるのは理屈じゃない」と隊員に訴えるも、天野に「恋に落ちるのに理屈はなくても、一緒になるには理屈がいる」と一蹴されてしまう。そこへ「つじつま合わさせてください」と助け舟を出す廻。指名手配犯の時空賊・マギー&キケロがクローンベイビーを盗んだ事件も絡みながら、事態は急展開を迎えます。そこは本編を観てのお楽しみ、で。
思えば毎回、時空SFを得意とする上田脚本の妙がさく裂していますよね。かつ第3回まで視聴して強く感じるのは、伏線回収を超えて発揮されるハートフルな“あたたかさ”。元の世界へ戻った違法トラベラーの後日談がエンドロールで展開されるのも作品に横たわる“あたたかさ”の一例で、視聴者をなごませているのがXの反応からうかがえます。

さらに上田さん自身がXで「各話のサブタイトル楽しみにしててください」と投稿しているように、時間にまつわるSF映画をオマージュしたサブタイトルがニクい!

第1話「アバウト・タイムパトロール」←『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(2013年)
第2話「10年先の彼女」←『1秒先の彼女』(2020年)
第3話「きみがぼくを見つけた夜」←『きみがぼくを見つけた日』(2009年)

上田さんはこうも続けます。「ロゴまで毎話(映画に)寄せてくださっているらしいと聞いて震えている」と。見比べてみると、オープニングアニメの最後に登場するサブタイトルのフォントは、モチーフになっている映画ビジュアルのタイトルロゴにそっくり! 山岸聖太監督をはじめとするスタッフの遊び心が細部にまで散りばめられているのを感じ取りたくて、目を皿にように凝らしながら毎話3回ほどTVerで“おかわり”しています。

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文:岡山朋代
編集・ライター。ぴあ、朝日新聞社「好書好日」など主にエンタメ系メディアで取材・執筆を手がける。
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