「いじめ」から生徒を守るための『法律』描かれた限界
磯村勇斗さん主演の月10ドラマ
『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)略して「ぼくほし」の第2話が7月21日に放送されました。
「ぼくほし」で磯村さんは、独特な感性を持つ弁護士・白鳥健治を演じます。
少子化の影響で「男子校」と「女子校」が合併し、共学となった高校に「スクールロイヤー」(いじめなどの問題について、法律に基づいた助言や指導を行う弁護士)として派遣された健治。
国語教師・幸田珠々(堀田真由)のサポートを受けながら、校内のさまざまな問題に「法」の視点から向き合う学園ヒューマンドラマです。
第2話は、定義づけが難しい「いじめ」と、「いじめ」から生徒を守るためにつくられた法律の限界を投げかける内容でした。
今をときめく俳優2人が恋人役を熱演
ストーリーの核となった俳優は、恋人役を演じる日向亘さんと、菊地姫奈さん。
日向さんは、2019年ホリプロが開催した「メンズスターオーディション」で6400人を超える応募の中からグランプリに選ばれ、ドラマ「デスゲームで待ってる」(2024年・カンテレ)で主役も務めた注目の俳優。
菊地さんはnon-no専属モデルで、「令和の完売クイーン」としても知られるグラビアアイドル。
近年は俳優としても活躍の場を広げています。
第2話では、日向亘さん演じる3年生の藤村省吾が教室の中で、別の生徒の井上孝也(山田健人)につかみかかるシーンが登場します。
原因は、藤村の恋人・堀麻里佳(菊地姫奈)が、藤村と別れて1週間も経たずに井上と付き合いはじめたことでした。
いじめの「加害者」として元恋人に聞き取りを実施
三角関係がクラスメイトや教員の知るところになってしまった藤村。
「公開失恋」した藤村の心は傷つき、「スクールロイヤー」の弁護士・健治と国語教師の珠々に「いじめだ」と訴えます。
藤村の苦しみを感じ取り、自身もつらい過去を持つ健治は、「いじめ防止対策推進法」に基づき藤村を守ると宣言しました。
「いじめ防止対策推進法」は「いじめ」の早期発見と適切な対処を目的とした法律で、「被害者が心身の苦痛を感じる行為」を「いじめに該当する」としています。
健治は、この法律に基づき、藤村の元恋人・堀と、堀の彼氏である井上への聞き取りを実施します。
一方、国語教師の珠々は「取り調べみたい」と気乗りしない様子です。
健治と珠々が藤村の自宅を訪問した際、藤村は「許すとか許さないじゃない、リアルに苦しい」と訴えました。
筆者も似たような経験があるので、藤村の傷ついた気持ちも、学校に行きたくなくなる気持ちもよく分かります。
傷心の藤村に対して、健治は「無理に許すことはない」「あなたは何も悪くない」と伝えました。
藤村の父親も失恋が原因である点には驚きつつも、「子どもが苦しんでいるのは辛い」と藤村に寄り添います。苦しい時、味方になってくれる大人の存在は心強いなと思います。
子どもを守るはずの「いじめ防止対策推進法」の落とし穴
健治は藤村の「最善の利益」を守るため「いじめ対策委員会」を設置し、法的に対処しようと考えます。
しかし、珠々は健治の行動に反発。珠々は高校生の頃に好きだった先輩に振られた経験を話し、「これもいじめなのか」と健治に問います。
「心身の苦痛を伴ったならいじめだ」と答えた健治に対し、「失恋をいじめだとは思えない」と言い切る珠々。
珠々は先輩が「いじめてやろう」と思って自分を振ったわけではないことを理解していました。
そして、珠々は、自身が愛してやまない詩人・宮沢賢治の短編小説『よだかの星』の一節を例に挙げて「悪意がなくても、生きているだけで誰かを傷つけることがある」と続けます。
それでも法律を根拠に堀と井上への指導を主張する健治に対し、珠々は「法律がおかしい」と食い下がります。
2人の立場を鑑みるとどちらの意見も正しいとは思いますが、個人的には珠々に共感したくなります。
翌日、机に「ビッチ、いじめ乙」と書かれたメモを入れられた堀は、健治に「もう学校に来ません」と宣言します。
堀を「いじめの加害者」としたことで逆に「被害者」にしてしまったと気づいた健治は、「大変なことをした」と愕然(がくぜん)とします。
その日の夕方、所属する法律事務所の所長の久留島かおる(市川実和子)へ藤村と堀の件を報告する健治の姿がありました。
「いじめ加害は悪」だとしつつ、堀を傷つけたことを悔いています。
健治の上司である久留島は「苦痛を感じた」と声を上げるだけで全部いじめになってしまったら、教師や学校がパンクすると言います。「いじめ防止対策推進法」そのものに限界があると一蹴する久留島。
健治は「法律だけでは…」と何かに気づいた模様。
法律だけでは心を救えない、本当の「幸い」は自分で決める
翌日、「藤村の気持ちを知るため」に欠席中の藤村の席で珠々の授業を受ける健治。
同じく欠席中の堀の座席を見つめていました。
授業終了後、健治は藤村のクラスメイトである高瀬佑介(のせりん)に話しかけられます。
元天文部の高瀬は、「しし座α星レグルスと火星の大接近」を見るために、屋上の天文室に入る許可を取ろうとしたものの、引率の教師がいないことを理由にダメだったと健治に話します。
また藤村について「あいつバカだけどイイヤツなんですよ」と伝えました。
その日の夜、天文室には健治と珠々、高瀬、1年梅組・江見芽衣(月島琉衣)の姿がありました。
そこに現れる藤村。
実は天文室へ向かう前、健治と珠々、副校長の三宅夕子(坂井真紀)が藤村の自宅を訪問。
健治は「藤村を守りたかったこと」「結果として堀と井上を傷つけてしまったこと」「スクールロイヤーとしてできること」を伝え、藤村に「何が本当の幸いなのかを決めてください」と問いかけていました。
天文室で藤村は、「傷ついたけど、いじめじゃない」「いつか“許せないけど、いい思い出をありがとう”と伝えたい」と堀への思いを話しました。健治の問いに対して、藤村は自分にとっての「幸い」を見つけたようです。
第2話を見て、いじめ問題は本当に複雑だと感じました。一方が「いじめだ」と主張すれば、その気がなくても「加害者」が生まれてしまうリスクもある「いじめ防止対策推進法」。
故意に相手を傷つけているのが明確であれば有効ですが、今回のケースでは結果として堀が「被害者」になってしまいました。
学校側がいじめ対応に慎重になるのも分かる気がします。ただし、悪意あるいじめには相応の対処が絶対に必要です。
そういう時こそ「いじめ防止対策推進法」に基づいて、保護者と学校、スクールロイヤーが連携して子どもの最善の利益を守ってほしいと思います。
取材・文:宅野美穂
都内在住のライター。主に、インタビュー記事を執筆。本とゲームと音楽が好き。
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