見てみよか

「いじめ」を罪に問おうとした小学生 弁護士の心に変化 恋の予感も ドラマ・僕達はまだその星の校則を知らない

2025.08.11

「いじめ」を罪に問おうとした小学生 弁護士の心に変化 恋の予感も ドラマ・僕達はまだその星の校則を知らない

【ネタバレ注意】『ぼくほし』第5話レビュー

磯村勇斗さん主演の月10ドラマbokutati『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)の第5話が8月11日に放送されました。
独特の感性を持つがゆえ、人生にも仕事にも臆病な弁護士・白鳥健治(磯村勇斗)。共学化に揺れる私立高校で、「スクールロイヤー」として校内で起きる数々の問題を解決するべく奮闘しています。第5話では学校を飛び出し、健治の家が舞台となりました。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話

『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話

「生徒の希望をかなえてあげたい」 健治の心の変化

健治が勤める濱ソラリス高校では、合併後初の夏休みを迎えました。生徒会役員任期終了による引き継ぎや三者面談などが行われる中、天文部の部員と顧問を務めることになった健治 、幸田珠々(堀田真由)は天文室兼スクールロイヤー室に集合し、夏合宿の打ち合わせをしていました。

第4話の終わりで1年生の江見 芽衣(月島琉衣)から健治の家で合宿をできないかとお願いされた健治。
ひどく動揺する健治ですが、 部活動の大切さ を力説する生徒指導担当教師の山田 美郷(平岩紙)から、「心を育てるのも学校の役割」と諭されました。

「生徒の希望をかなえてあげたい」と心を決めた健治は江見の提案を承諾。健治の家で天文部の合宿が行われることになりました。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話 

『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話

健治との会話を聞いた限りでは、山田は演劇部の顧問である模様。演じる平岩さん自身が劇団「大人計画」に所属していることもあり、「あめんぼあかいなあいうえお!」の発声が「本場の人のそれ」で貫ろくがありました。

筆者自身は中学、高校と部活に所属していたものの、恥ずかしながら真面目に取り組んでいたとは言えない状況でした。

「懸命に取り組んだ部活動は、懸命に取り組んだ受験勉強よりも心に残る」

「受験勉強よりも心に残っているか」と言われると残念ながらそんなことはなく、「もっとちゃんとやっておけば良かった」との後悔の念が生まれました。山田みたいな先生に出会えていたら、また違っていたかもしれませんが……。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話

『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話

天文部と健治が過ごしたひと夏の青春

8月上旬、天文部の部員と珠々から合宿の話を聞いて夜間採集を目的に参加した生物科学部の内田圭人(越山敬達)も 健治の家にやってきました。
昼寝をして準備を整え、近所の公園で星を見る生徒たちと健治と珠々。
「眠気覚ましに」 と江見が語った自作のSF小説の内容が、想像以上にエッジが利いていて筆者はひっくり返り そうになりました。
第4話で三宅副校長が江見について「おもしろい感性」と評価していたことに 納得。
筆者も中高生の頃はそれなりに「空想癖」がありましたが、「本当に“それなり” だったのだ」と数十年経って思い知らされました。江見のセンスがうらやましいです。
みんなの様子を撮影する天文部員の高瀬 佑介(のせりん)が持つカメラにもくぎ付けでした。

使い捨てカメラは、筆者世代には懐かしいアイテムです。スマホで撮影をするのが当たり前な現代においては使う機会がないアイテムだと思い込んでいたので、思わず「あれまあ!」と声を上げてしまいました。

写真の中のキャスト陣も、演技ではなく素の笑顔を見せていたように感じました。「ぼくほし」はあくまでドラマではあるけれども、撮影を通じて生徒役の面々もひと夏の青春を味わっていたのかもしれません。
なんだか心がほっこりしました。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話

『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話

「いじめ」を罪に問おうとした小学生

失恋によるトラブルや盗撮疑惑など、校内のさまざまな問題と向き合う中で徐々に距離を縮めてきた健治と珠々。ビーツを拾うシーンでは、分かりやすく少女漫画みたいな展開に胸がキュンとなりました。

そんな2人に急展開が訪れます。無自覚に心を許し始めているであろう珠々に、健治が自身の過去を打ち明ける川の場面。第1話の冒頭につながるシーンです。

健治は小学生の頃、感性が普通でないことが原因で同級生からいじめを受けていました。
いじめっ子役たちが子どもの残酷さをリアルに表現しており、本当に憎らしく見えました。

特に 健治が大切にしている本『双子の星』の表紙をビリビリにする場面は、本好きの筆者としては悲しみしかありませんでした。何があっても、本を破るのはあり得ません。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話 白鳥健治(磯村勇斗)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話 白鳥健治(磯村勇斗)

健治はいじめっ子たちから逃げるために駆け込んだ図書室で、ポスターに書かれたとある言葉を目にします。

「【弁護士(べんごし)】法律(ほうりつ)で社会の正義(せいぎ)をまもります!」

何かをひらめいた健治は小学生向けの法律の本を読み込み、大人になった健治が今、勤めている法律事務所の所長・ 久留島かおる(市川実和子)の元へ「学校を訴えたい」と自分で作った訴状 を持ち込みました。

子どもながらに「体と心を傷つけるいじめは犯罪だ」と理解し、行動した健治の姿に心がギュッとなりました。
小学生時代、健治は同級生や父親から拒絶されて孤独を抱えていました。母亡き後、ひとりぼっちで静かに星空を見ていた健治。

大人になった今は、天文部や珠々、濱ソラリス高校の教師たち、久留島など健治を受け入れてくれる人たちがたくさんいます。スクールロイヤーとしてはじめての夏休み、天文部員たちと一緒に見た星空は、健治の目にはどのように映っていたのでしょうか。

「おつきさまって、シャーベットのにおいがする。」

幼い頃、健治が母へ伝えたように、夜空の色や声を感じられていたら良いなと願わずにはいられません。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話 幸田珠々(堀田真由)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第5話 幸田珠々(堀田真由)

最後に、江見の自作SF小説では世界情勢や戦争がテーマに取り上げられていました。第5話でも言及がありましたが、今週末は終戦記念日です。今、こうやって原稿を書いている間も世界のどこかで誰かが傷ついているかもしれない、でも特別な何かができるわけではない自分に無力さを感じます。

星空を見上げながら、江見は言いました。

「祈りましょう、過去と今と未来のために。」

天文部のみんなが祈ったように、微力ながら筆者も祈ります。
取材・文:宅野美穂
都内在住のライター。主に、インタビュー記事を執筆。本とゲームと音楽が好き。
miyoka
0