『あの子の子ども』 第2話レビュー
前回、避妊に失敗したためにアフターピルを処方してもらおうと病院へ行ったものの、受診をためらってしまった福。そこへ、陸上の地区予選会場にいる宝(細田佳央太)から電話があり、福は再度受診しようとするのですが、結局診療時間外になってしまいます。
今回は、宝が福に電話をかけたときに「ビビってました、正直」と心境を明かす場面からスタートしました。病院の診療時間が午前中までだと確認していた宝は、福が受診したかどうかが気になって電話したのでしょう。けれど、福の声を聞いた宝は「福の優しさに甘えて、自分は安全な場所にいる」「福一人にかぶせた」と罪悪感を持ちながら、でも何もできない自分を、はずかしい、悔しい、と感じます。
こんなふうに「2人のこと」と考えられる宝の人間性に、少し安心します。だけど、考えているだけでは現実は変わらない。そのことを16歳の宝が知らないのは、当然かもしれません。
2話では、福と宝のそれぞれの家族の雰囲気もわかりました。
福を元気づけるために唐揚げを作る母・晴美(石田ひかり)。その唐揚げを食べたすぎてバイトを休もうか考える兄・幸(野村康太)。そして家族LINEで単身赴任中の近況報告をするも、みんなから塩対応される父・慶(野間口徹)。川上家のほのぼのとした日常が垣間見えると、よりいっそう福の不安が引き立って見えるようです。
福は、晴美が心配しているとわかっているけれど、どうしても相談することができません。晴美は福の変化に気づきながらも「何かあったの」と聞きたい気持ちをおさえます。どんなにいい親子関係でも、プライベートな性のことを相談するのは難しいものですよね。福にとっては、うそをついていた後ろめたさや、親子関係が変わってしまうことへのこわさがあるのかもしれません。
そして、月島家ではひとり親で宝を育ててきた介護士の母・直実(美村里江)が登場します。仕事が忙しくても宝の大会の応援へ行き、宝の夢を応援する直実。クールな印象だけど、宝を見つめる目はとても優しい。この家庭で育ったから、宝はあんなに気遣いができる優しい子なんだな、と納得しました。
福の母・晴海と宝の母・直実。タイプがぜんぜん違う2人ですが、それぞれの言葉のはしばしから、子どもへの深い愛情が伝わってきました。
福と宝、お互いにはっきり確かめる事もできないまま、だれにも相談できないまま、月日がたっていきます。取り返しがつかなくなるかもしれないのに、相手を気遣ってなのか、勇気が出ないのか、向き合って話し合わない2人に、正直やきもきしました。現実から目を背けたくなってしまう気持ちはわかります。だけど「考えないでいれば、なかったことになるような、そんな気持ち」と2人の声のナレーションに、なんとも言えないもやもやとした感情が湧きました。
福の変化に気づいたのは、母だけではなく、親友の矢沢(茅島みずき)もでした。教室に登校した福を心配そうに見つめ、ぎゅっと抱きしめる矢沢。言葉がなくても大事に思っていることが伝わりました。そして、そこへ「おれも〜」と現れた飯田(河野純喜)の軽やかさと「キモイ」と言われても折れない明るさに心が和むシーンでした。
2話の終盤では「生理が来た」と安心して涙を流す福の姿が。「ずっと1人で不安だったよね、福ちゃん」って、抱きしめたくなりました。ときに女性が、「もしかしたら……」「今は無理」「はやく生理が来てほしい」と孤独に抱える不安のことを、福の姿を通して若い人たちにこそ知ってほしいと感じました。
「生理きた」と福からの連絡を受けた宝。宝も不安を背負い、福を心配していたことがわかり、救いに感じました。これだけ福と同じ思いでいてくれるなら、「もしも」があっても2人で乗り越えられるかもしれません。
若すぎる2人の不安と葛藤が、繊細にていねいに描かれた今回。せめてだれかに相談できれば、と思わずにいられませんでした。
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文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。「たまひよ」など主に子育て系メディアで取材・ライティングを行う。
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