このヨーロピアンなバラ園でのティータイム写真をご覧ください。実は、この場所が奈良・東大寺の大仏開眼(かいげん)に関わった名僧ゆかりの古寺の境内だと信じられるでしょうか? ※表示価格は全て税込、入山料は別
奈良市の霊山寺(りょうせんじ)は、国宝の本堂や重要文化財の本尊・薬師如来坐像をはじめとする多くの貴重な文化財が残る古寺。
昭和32年に開園した1200坪の近代庭園のバラ園があり、毎年、春(5月上旬から6月中旬)と秋(10月中旬から11月上旬)に200種類2000株のバラが咲き誇る、県内でも屈指のバラの名所として知られています。そして、このバラ園には、あるひとりの僧侶の強い平和への祈りが込められているのです。
オリジナル「ばらのアイスクリーム」は必食
園内には、バラの開花時期(春と秋)のみ営業するティーテラス「プリエール」があり、濃厚なバラのエキスが配合された見た目も非常に美しいさまざまなバラスイーツやローズティーも味わえ、色々な意味でバラ三昧が楽しめます。なかでも、同寺限定の「ばらのアイスクリーム」(※数量限定)は必食。
大輪系のつるバラ「ピエールロンサール」をイメージして、初代店長が考案した同寺オリジナルアイスクリームです。イタリアンジェラート専門店に特別にお願いしてつくったもので、特殊なスプーンでバラの花の形にしており、作り手が現在一人しかいないため、数量限定で提供されています。
味も香りもまさにバラ!驚くほど非常に濃厚で、まるでバラの花そのものを食べているかのような感覚です。
他にも、限定数で提供されるバラ花が咲いたようなゼリー「ローズドーム」も人気です。ローズティーやローズコーヒー、ローズソーダ、ローズジュースとローズティーが2層になったセパレートティーなど、優雅な気分でバラづくしのティータイムを楽しめます。
あの東大寺の大仏様に入魂したインドの名僧ゆかりの古寺
何度もしつこいようですが、皆さんが従来イメージする奈良の古寺とは一風変わったヨーロピアンな雰囲気を持ちあわせる霊山寺。しかし、同寺の歴史は、とても古く、飛鳥時代の遣隋使(けんずいし)・小野妹子の息子と伝わる右大臣・小野富人が登美山(とみやま)に閑居(かんきょ)して薬草を栽培し、薬草湯屋を建てて薬師三尊仏をまつり、多くの人々の病を治したことから「鼻高仙人」と尊称された縁起のお寺です。
奈良時代の聖武天皇の勅願(ちょくがん)により、東大寺の大仏建立に尽力した名僧・行基(ぎょうき)が創建。東大寺大仏開眼の大導師を務めたインドのバラモン僧・菩提僊那(ぼだいせんな)がインドの霊鷲山(りょうじゅせん)にそっくりだという理由から寺名を付けました。
境内には、約1300年前に庶民の病気を治した富人の薬草湯屋にちなみ、独自に配合した薬草を入れた薬草風呂で日帰り入浴できる「薬師湯殿」や「寺cafe 花美津姫(はなみずき)」もあり、バラ園とともにおすすめです。
平和への祈り、バラ園がある深い理由
実は、同寺のバラ園の開園には、ひとりの僧侶の深い平和への祈りが込められていました。バラも含め、どの草花も等しく丹精込めて育てられているのですが、そのなかで「ピース」というバラが同寺の象徴です。
バラ園を開園した先々代住職の東山圓教(とうやまえんきょう)師は、第二次世界大戦で徴兵され、終戦後に2年間のシベリア抑留を経験。食料不足や衛生状態の悪い極寒のシベリアの地での強制労働は、非常に過酷な体験であり、多くの犠牲が伴いました。日本へ帰還し、戦後の寺復興と共に願ったのが世界平和だったのです。
20世紀を代表する品種「ピース」は、1945年に戦争終結を記念して作出されたもの。第二次世界大戦後の平和のシンボルとなった品種です。
東山圓教師は、「花を見て美しいと思えるのは平和だからこそ。そのことに感謝し、平和の大切さを人々に感じてもらいたい」との思いを込め、世界中で愛されているバラの花園をつくろうと決意しました。そして、このピースを中心にバラ園をつくったのです。
先々代の思いを今に受け継いできた同寺では、もっと若い世代にも「平和への祈り」を伝えたいとの思いから、毎年5月に「薔薇会式・えと祭り」をおこなっています(令和7年は、5月18日13時~)。
バラが見頃を迎えた時期におこなわれており、ご本尊の薬師如来と八体仏にバラの花を供え、人々の健康と幸福を祈る法会です。
十二支の面をつけた十二支被面者(じゅうにしひめんじゃ)とバラ御輿(みこし)、導師・東山光秀(こうしゅう)管長、僧侶、信徒等がバラ園を練り歩く、同寺ならではのユニークな行列も見逃せません。
「現代でも、先々代住職の言葉のとおり、途絶える事のない戦争や争いがありますが、バラを見て心穏やかにお過ごしいただけたらと思います」(霊山寺・川崎 雅一郎さん)
「薔薇会式・えと祭り」タイムスケジュール(令和7年5月18日)
※雨天の場合は、本堂での法要と舞楽奉納のみ
13:00 バラ園奥より行列出発 バラ園内と参道を練り歩き、八体仏前へ
13:15 八体仏霊場にて法要
13:35 八体仏霊場法要終了後 再び行列にて本堂へ向かう
13:50 本堂にて法要
14:30 本堂にて法要に続いて舞楽奉納(天理大学雅楽部)
15:00 薔薇会式・えと祭り 終了
入山拝観料:大人 700円(1,000円)、小人 350円(500円)
※( )内料金は、バラ開花期【春期:4月29日から6月第2日曜日、秋期:10月23日から11月第2日曜日】の料金
公式HP
https://www.ryosenji.jp/index.html
取材・文 いずみゆか
奈良を中心に関西の文化財やミュージアムを訪ね歩くのが大好きなライター
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