家庭でもおいしくできる!梅雨を乗り切る薬膳料理レシピ
2024.06.06
梅雨はね、雨が降り続けて自然界に水が大量にあふれる季節なので、それに呼応するかのように、私たちの体内にも水があふれる時期なんですね。余分な水がどこにたまるのかによって出てくる症状が変わります。
―え、そうなんですか?
梅雨の湿気に弱いのが「脾」です。中医学では、「脾」は消化吸収に関する働きを担っていると考えられており、 湿気が「脾」に入ることで胃腸に関わるトラブルが起こりやすくなりますね。水が多いから浮腫むし、浮腫んでダル重くってやる気が出なくって、ああもうしんどい…とかね。
あと、くよくよしたり、悩みやすくなるといった、胃腸の弱りから来るメンタル面でのトラブルも起こりやすい季節です。
―ほかにも梅雨の時期に出る症状はありますか?
体の上部に水がたまると、頭痛やめまいが起きます。肺にたまれば、それが咳や痰になったり、肺は皮膚と関連深いので、梅雨になると水疱みたいな湿疹が出来やすいです。また、お腹にたまれば下痢などの不調を起こしたり、下半身に水がたまると関節痛とか下半身の冷えとか。元々体内の水分量が多い人にとってはあふれすぎるということで、いろんな不調が起きやすいかもしれませんね。
―じゃあ、キーワードは水のコントロールと「脾」(胃腸)のケアですね。何か最適な薬膳はありますか?
余分な湿気(水分)を出すことと、胃腸を整えることの両方がかなう食材というのが、豆類と黄色くて甘い食材。例えばトウモロコシやかぼちゃです。
―それぞれが持つ栄養素が有効だということですか ?
そうですね。効能として胃腸を整えながら水を出すという働きがありますね。 黒豆、大豆、緑豆、小豆、インゲン、そら豆とか豆類全般は基本的に胃腸によくて排出が得意なので、この時期にとりたい食材です。
そうなんですよ。私が薬膳を学び始めて最初に面白いと思ったのは、「食材全てに効能がある」ということでした。例えばキュウリって体を冷やすイメージがありますね。そしてうるおいも補給します。夏に食べたらすごくうるおい補給になって暑がりの方の体を冷ましますが、冬に夏と同様の食べかたをしたら冷えちゃって逆効果です。だから私たちは食べるときに食材が持つ効能をどう生かすのかが大切なのです。
―それが薬膳ですか?
そうです。体に足りなければ足して、多ければ出して、滞っていれば流すという、常に自分の状態に合わせて食材で調整するのが薬膳という考え方です。
「中庸」といって、偏りなく過不足なく調和を取り、常に真ん中(中庸)を目指して体も心もバランスを整えることが大切ですね。
―ではトウモロコシはどんな効能があるんですが?
トウモロコシも豆類と一緒で胃腸を整えます。黄色くて甘い食べ物は「脾」を整えますね。 トウモロコシの中で一番甘いのは芯なんです。そしてひげはすごく利尿効果が高いです。実だけ食べてもいいけれど、例えば、トウモコシごはんを炊くときは、芯もひげも一緒に入れて炊くことによって、トウモロコシの「胃腸を整えて利尿する」っていう全部の効能が浸透したごはんになります。ヤングコーンもひげを取らずに一緒に食べてほしいです。
―かぼちゃも黄色くて甘いからいいのですか?
そうです。瓜類って全般的に利尿効果があるんですけれど、その中でかぼちゃだけは体を温めて胃腸に優しい食材なんです。他のキュウリやゴーヤ、冬瓜なんかは冷やしながら利尿させますが、かぼちゃは温めながら利尿効果も得られる唯一の瓜です。
そうですね。面白い考え方として湿気が多い時期には調理法も水分を飛ばす、例えばグリル料理なんかがいいと言われます。逆に乾燥している時期には湿気の多いもの、例えば蒸し物料理がいいですね。あと、ほんのりと辛いもの、生姜とか山椒なんかでちょっと辛みを取るのも湿気を飛ばすことにつながります。
―薬膳って何か特別な食材がいるのかと思っていました。
それもありますが、あらゆる食材の効能を生かした料理が薬膳ですね。スーパーで売っている食材全てに効能があるので、その時必要なものを選ぶことが大切です。特に梅雨の時期に胃腸を整えるものを探すなら、本当に身近な食材があてはまります。お米はエネルギー補給になるし、お味噌は大豆の発酵食品なので胃腸を整えてくれます。ごはんに梅干しとお味噌汁、そして鮭を焼いて。それが薬膳です。薬膳って言うと薬っぽいイメージを持つ方も多いかと思いますが、その時、自分に必要な食材を使った料理が薬膳です。けっして特別なことではありません。
例えば「今日は体が冷えるなあ」という時にはキュウリを食べない選択肢と、酢の物にして食べるという選択肢がありますね。お酢は体を温めてくれるので、キュウリの冷やす効能が緩和されます。ショウガと一緒に炒めると、それもまた緩和になりますね。 だから「浮腫んでいてしんどいし、キュウリ食べて水分出したいけれど、それだと冷える」っていう時には、スープにするとか、炒めものや酢の物にするというチョイスがあるので、必ずしも冷える人は冷やすものを食べたらだめっていうわけではないです。食材の持っている「寒熱」は変わらないけれど、調理の仕方でずいぶんと緩和されますよ。食べたい食材があれば料理で調節してくださいね。
―そういうことを考えながら献立を決めるのは楽しいですね。
時間がない時や疲れている時にスーパーやデパ地下でお総菜買って帰ろう、みたいな時もありますよね。食材の効能と食事をする自分や相手の体調や体質が分かるようになれば、選ぶものが変わってきます。それで体調コントロールできるのはいいですよね。居酒屋に行ってもメニューの選び方が変わったりして(笑)。
これは基本ベースとして胃腸を整える食材を使っています。コツは長芋。効能もたっぷりありますが、擦って卵と混ぜて焼くことで誰でもふわふわの天津飯が楽しめます。そしてアレンジがききます。卵にいろんな食材を追加したり、ごはんに混ぜごはんや炊き込みごはんを使ったり。材料を変えることや追加することによって、その時々の自分の体調に合わせた天津飯ができます。
「追加で梅雨薬膳」って書いているところは、 ぜひ梅雨の時期に合わせて追加してほしいものです。そのほかに鮭フレークや焼いたタラの身をほぐして餡に混ぜるといいですね。白身魚も「脾」を整える食材です。ほかの材料もごはんに混ぜたり餡に乗せたりして自由に料理してみてください。胃腸を整えながら、水を出す食材を一緒に食べられる自信の一品です!
長芋入りふわふわ天津飯
(分量は一人前)
➀鍋に水を入れ火にかけ、中華麹+酒+醤油+きび砂糖を加え,沸騰したら弱火で2分ほど炊き味をなじませる
②片栗粉を同分量の水でとき、①の鍋をよくかき混ぜながら少しづつたらしていき、そのまま1分ほど軽くかき混ぜながら片栗をなじませ、火を止めてからごま油で風味付けする
※写真は2人分
【追加で梅雨薬膳】
トウモロコシの実(適量)、エノキ(適量)、シイタケ(1つ)を追加
※写真は2人分
【追加で梅雨薬膳】
エノキとシイタケは細かく刻んでトウモロコシの実と一緒に少量の油で炒める
【追加で梅雨薬膳】
器にごはんを盛り、その上に炒めた追加具材をのせる
③長芋は皮を剥きすり下ろしたら、卵と合わせて塩を少し加えよく撹拌する
※写真は2人分
④フライパンを熱し油を加え(分量外)温まったら、油と絡めるように卵を入れ、菜箸でぐるぐると卵と油に空気を入れる感じでふわっと仕上げる
④をフライパンから滑らすようにごはんの上に乗せ整えたら、アツアツの②を流し込み、刻んだ三つ葉や海苔を添える
*食べるときにお好みで黒酢を少し加えてもおいしい
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