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二度と無い⁉ 京都・奈良・大阪で「国宝展」同時開催②

2025.04.08

二度と無い⁉ 京都・奈良・大阪で「国宝展」同時開催②
いよいよ大阪・関西万博(2025年4月13日~)の開幕が間近に迫ってきました。

万博が開催される関西エリア(奈良、京都、大阪)は、古くからの歴史と文化が今も残る地。万博にあわせて、関西の3つの大型ミュージアムで国宝にまつわる特別展が開催されます。

2025年4月19日から、奈良国立博物館(奈良市)で開館130年記念特別展『超 国宝―祈りのかがやき―』、京都国立博物館(京都市)で特別展『日本、美のるつぼ―異文化交流の軌跡―』が開幕。ちなみに関西の国立館(奈良博と京博)が特別展の同時開催をおこなうのは、初めてのことです。
4月26日からは、大阪市立美術館(大阪市)で大阪・関西万博開催記念 大阪市立美術館リニューアル記念特別展『日本国宝展』が開幕します。

三館どの展示作品も、私たちが小中学生・高校生時代に社会科や歴史の教科書・資料集で一度は目にしたことがある国宝や重要文化財ばかり。これほどまでに、関西で一挙にメジャー級の国宝が集結する機会は、おそらく二度と無いかもしれないので、絶対に見逃せません。一体どんな日本の美に出会えるのか?関西で開催される三大「国宝展」の各見どころをまとめてご紹介します。

【大阪市立美術館】大阪・関西万博開催記念 大阪市立美術館リニューアル記念特別展 「日本国宝展」

大阪市立美術館 外観 
撮影:佐々木香輔

1970年の大阪万博以来、大阪で2度目の万博が開催される記念すべき年に、開館(1936年)以来初めての大規模な全面改修を終えて、リニューアルオープンした大阪市立美術館。特別展「日本国宝展」は、そのどちらも記念して開催されます。(約130件出陳)

京都・奈良の国立2館と異なり、同展最大の特長は、出展作品すべて国宝(参考出品の数件を除く)で、幅広い時代・ジャンルが集結した点。さらに、大阪で開催される初の国宝展であることから、大阪ゆかりの国宝をまとめて紹介するなど、まさに国宝ずくし。同展こそ、もっとも「あ!教科書で見たことある」と分かりやすい圧巻の国宝が一堂に会します。

そのため、タイトルにある「国宝」について、同館の内藤栄館長は、事前記者会見で「国宝とは、昔の人たちが考えた未来社会のデザインだったのではないか。先人たちが未来に引き継ごうと思って残ってきたものであり、万博と共通する精神が「国宝」にも含まれています」と力を込めます。

国宝 桜図 長谷川久蔵筆[展示期間:4月26日~5月11日]
桃山時代 天正20年(1592)頃、京都・智積院蔵

国宝 楓図 長谷川等伯筆[展示期間:5月13日~6月1日]
桃山時代 天正20年(1592)頃、京都・智積院蔵

第1章「ニッポンの国宝―美の歴史をたどる」(6つのテーマ別)、第2章「おおさかゆかりの国宝―大阪の歴史と文化」、特別展示「皇居三の丸尚蔵館収蔵品にみる万博の時代」、「紡ぐプロジェクト・イマーシブ映像」(日本の美を世界へ―紡ぐプロジェクト)の大がかりな4つの構成で展開する同展。

縄文から江戸時代までの名だたる国宝を総覧できる第1章は、まさに教科書でおなじみの作品が目白押し。まるで、教科書の中に飛び込んだように実物を目の当たりにしながら日本の歴史を実感できるのです。
縄文土器と言えばコレ!の「火焔型土器(かえんがたどき)」(新潟県十日町市・笹山遺跡出土)は、約5000年前の縄文時代中期の土器で、大きく立ち上がった突起がまるで燃え盛る炎のような高いデザイン性が特徴です。

国宝 火焔型土器 縄文時代中期 約5400~4500年前  新潟・十日町市(十日町市博物館保管)
画像提供:十日町市博物館[通期展示]

そして、「漢委奴国王」の印文があまりにも有名な「金印」(福岡県福岡市志賀島出土)も。
中国の皇帝(後漢の光武帝)が倭(わ)の奴国王に贈ったものと考えられており、1世紀頃(弥生時代後期)の日本の外交や東アジアでの立場が分かる貴重な資料として、教科書によく載っています。

国宝 金印「漢委奴国王」 弥生時代 1世紀 福岡市博物館蔵
画像提供:福岡市博物館[展示期間:4月26日~5月7日]

そして、2週間限定展示の「伝源頼朝像」、「伝平重盛像」、「伝藤原光能像」の神護寺三像(京都神護寺が所蔵する三幅の絹本著色の肖像画)も注目です。特に教科書でおなじみの「伝源頼朝像」は、現在は人物が誰であるのかさまざまな議論を呼んでいますが、かつての教科書掲載には「伝」がありませんでした。

国宝 伝源頼朝像 鎌倉時代 13世紀 京都・神護寺蔵
[展示期間:6月3日~6月15日]

日本の歴史を実物の国宝で通覧するだけでなく、大阪の歴史も通覧できます。大阪には、古代(古墳時代)から、難波津と呼ばれる港湾施設があったことから、大陸からの技術や仏教伝来など、交易や文化交流の拠点でした。その後も経済や文化の中心都市であり続ける大阪の歴史や文化の厚みを振り返ります。
万博開催地・大阪ならではの初の国宝展だけあって、万博×国宝の色が3館のなかでもっとも濃い同館。特別展示「皇居三の丸尚蔵館収蔵品にみる万博の時代」では、皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)の収蔵品の中から、1900年のパリ万博や明治期の内国勧業博覧会への出品作などが登場し、万博と国宝の関わりを再認識できます。さらに、「紡ぐプロジェクト・イマーシブ映像」(日本の美を世界へ―紡ぐプロジェクト)では、国宝や重文などの文化財の現状を損なうことなく安全に次世代へつないでいく修理助成事業「紡ぐプロジェクト」が紹介され、万博のテーマへの深い理解へとつながる内容になっています。
大阪・関西万博開催記念 大阪市立美術館リニューアル記念特別展
「日本国宝展」
【会場】大阪市立美術館
【会期】2025年4月26日(土)~6月15日(日)
公式サイト https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kokuhou2025/
取材・文 いずみゆか
奈良を中心に関西の文化財やミュージアムを訪ね歩くのが大好きなライター
miyoka
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