秋になると、なんとなく体がだるく、気分が乗らない…。そんな経験はありませんか?これは「秋バテ」によるものかもしれません。「秋バテ」は、季節の変わり目に体が追いつかず、自律神経が乱れてしまうことで起こります。
元カンテレアナウンサーで、SBT(※)1級メンタルコーチとして第二の人生を歩んでいる片山 三喜子(かたやま・さきこ)さんに「秋バテ」の原因・症状と今から実践できる3つの対処法についてうかがいました。
(※)SBT:スーパーブレイントレニングの略。脳科学と心理学に基づいたメンタルトレーニング
「秋バテ」と症状と主な原因について
「秋バテ」は、夏から秋へ季節が変わるタイミングでの自律神経の乱れと共に、日照時間の短縮や気温の変化などが影響して起こります。日照時間の短縮によって脳内のセロトニンの分泌が減少し、気分が落ち込みやすくなることも「秋バテ」の一因とされています。
夏の暑さで疲労が蓄積しているところに、急な気温の低下や寒暖差を感じると、自律神経が乱れやすくなります。自律神経が乱れると、心身のバランスが崩れ「やる気が出ない」「眠れない」「食欲がない」といった症状が現れます。心身の回復には睡眠が重要です。しかし、セロトニン不足で睡眠の質が低下すると、心身が回復しにくくなり、疲れがたまっていきます。疲れが蓄積すると、さらに自律神経を酷使することになります。こうして、負のスパイラルが続いてしまうのです。
ネガティブな感情を抱くのはごく当たり前のこと
「秋バテ」に伴い、気分が沈みがちになり、ネガティブな思考にとらわれることもありますが、ネガティブな感情を感じるのは悪いことではありません。アメリカ国立科学財団の研究によると、人間は1日に6万回以上も自分自身と対話しており、そのうち約8割はネガティブな内容だと言われています。また、年齢を重ねるにつれて、ネガティブな経験が記憶に残りやすくなるため、自然とネガティブな感情が湧いてしまいます。だからこそ、ポジティブな感情を意識する必要があります。特に、“ネガティブな感情に引きずられないこと”が重要です。
ネガティブ感情に引きずられないための対処法3つ
❶「プラス言葉」「中間言葉」を発して脳を味方にする
「疲れた」と感じたときに、それをそのまま口に出すのではなく「やりきった」というような「プラス言葉」に言い換えることで、脳にポジティブな信号を送ることができます。また、ポジティブな言葉を使うのが難しいときは「中間言葉」を使うこともおすすめです。例えば、上司からハードルの高い仕事を依頼されたときに「無理だ」「絶対できない」といったネガティブな言葉を口にすると、脳の特徴から“無理な理由”や“できない理由”ばかりを探してしまいます。「やってみないとわからない」「チャレンジしてみよう」といったニュートラルな言葉を使うことで、フラットな状態で状況を受け止め、ポジティブな考えに繋げることができます。
他人に向ける言葉には配慮できても、自分自身に対する言葉は厳しい人が案外多いものです。何かミスをしたり、嫌なことがあったときに「私、ダメだな」「最悪」と嘆くのではなく、「最善を尽くした」「なんとかなる!」など、自分に優しい言葉をかけてあげましょう。
❷ 寝る前10分は自分が心地よいことを考える
寝る直前に、ネガティブなことを考えると、それが寝ている間に脳内で繰り返され、潜在意識にマイナスの影響を与えてしまいます。寝る前は、その日の良かったことを思い出しましょう。もし、気分が落ち込んでポジティブなことを考えるのが難しいときは、好きな音楽を聴いたり、アロマの香りに癒されたり、リラックスできるパジャマを着て寝るなど、心地よい環境を整えるだけでも効果的です。昔のアルバムを見返したりして、過去のポジティブな記憶を借りるのも一つの方法です。
寝る直前にスマートフォンを見るのはおすすめできません。寝ている間に私たちの脳では情報が整理されて、疲れもリセットされるのですが、睡眠に入る直前まで脳を使っていると、この機能がうまく働かなくなると言われています。
❸「失敗した!」のままで終わらせない
失敗をそのままにせず「どうすればうまくいったか」を考え、脳に成功した自分のイメージを上書きします。過去の出来事は既に終わった事象として脳内で一度「クリア」することが大切です。 そして、嫌な感情は忘れて切り替えましょう!
失敗は誰でもしますし、避けることはできません。それをどう受け止めて、改善できるかを考えることが、ストレスを軽減し、前向きに生きるための近道です。
まとめ
「ストレスフリー」な人というのは、ストレスを全く感じない人のことではなく、ストレスに柔軟に対応し、立ち直る力を持っている人です。日常のストレスを完全に排除することは難しいですが、そのストレスに対してしなやかに対応し、心のバランスを取り戻すことが重要です。これを「レジリエンス」と呼び、“心の回復力”ともいいます。メンタルが揺らいだとしても、自分自身を元の状態に戻す力を鍛えていくことが「ストレスフリー」な生活への第一歩です。
誰もが「秋バテ」になる可能性があります。ネガティブな感情を引きずられず、ポジティブな言葉や行動で切り替えていくことで、心身のバランスを保つことができます。そして「秋バテ」の根本的な改善には、バランスの良い食事と適度な運動が必要不可欠です。日々の生活で、自分に合ったストレス解消法やポジティブな習慣を取り入れて、心身が乱れやすい秋を乗り越えましょう。
本の紹介
今回、「秋バテ」によるネガティブ思考の対処法の一つとして紹介した「プラス言葉」。ネガティブな感情をそのまま言葉にせず、一度「中間言葉」を挟むことで徐々にポジティブに導く「プラス言葉3段活用」は、片山さんの著書「ストレスフリーの人がやっている ポジティブ・フレーズ言いかえ事典」で詳しく解説されています。職場やプライベートでも役立つ内容がたくさんあるので、ポジティブになれる方法をもっと詳しく知りたい、という方はぜひチェックしてみてください。
▼プロフィール
片山 三喜子
同志社大学卒業後、カンテレにアナウンサーとして入社。宣伝部長、CM部長を経て退職。SBT1級メンタルコーチ、産業カウンセラー資格などを持つ。
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