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『ハリポタ』Gデザイナーのミナリマ、大阪のファンと交流

2025.07.11

『ハリポタ』Gデザイナーのミナリマ、大阪のファンと交流
2025年6月21日(土)、来日中のMinaLima(ミナリマ)のふたり、ミラフォラ・ミナとエドゥアルド・リマによるトーク& Meet&Greet イベントが行われました。

MinaLimaは、ミラフォラ・ミナとエドゥアルド・リマによる英国のグラフィックアートデュオ。映画『ハリー・ポッター』シリーズの美術デザインで知られ、その独自の世界観と緻密なビジュアルは世界中のファンを魅了してきました。
なんばパークス(大阪市浪速区)にある「ハウス・オブ・ミナリマ」はMinaLimaによる常設ギャラリー兼ショップで、『ハリー・ポッター』シリーズの書籍やグッズの他、童話をMinaLima独自の感性で再構成したクラシック・シリーズなどを購入することができ、連日多くのファンで賑わっています。

会場となった、なんばパークス7階のパークスホールに足を踏み入れると、集まったファンの皆様がトークショーが始まるのを今か今かと待ち構えていました。いよいよMinaLimaが登場すると場内が一気に沸きあがります!

映画『ハリー・ポッター』シリーズの美術デザインをてがけるMinaLima(ミナリマ)のトークショー
2025年6月

まず、「7年前にまいた種が今、形になりました」と感慨深く語るふたり。MinaLimaは25年間の活動を続けており、その原動力はファンの支えによるものだと厚く感謝を伝えます。

映画制作のグラフィックデザインはキャラクターの視点で考えること、「なぜ・どうして」というリサーチが大切だということ、『ハリー・ポッター』シリーズ終了後にふたりでスタジオを設立した経緯など、時にジョークを交えながら軽快に語るふたりに、会場は温かいムードに包まれます。また、童話をMinaLima独自のデザインで再編集したクラシック・シリーズの本についても触れ、映画とは違って決まったサイズに全て収めることの難しさや、今後の発行予定などについて語りました。
その後は交流&サイン会が行われました。参加者ひとりひとりと言葉を交わし、グッズにサインをして写真を撮るふたり。実に3時間にも及ぶサイン会となりましたが、MinaLimaに会えて感極まって涙する方、ふたりに触発されて自らもクリエイターとなったことを報告する方、結婚を報告する方など、どの方も熱い思いを伝えていらっしゃったのが印象的でした。

MinaLima(ミナリマ)トーク& Meet&Greet イベント(大阪市)の様子
2025年6月

サイン会が終了したところで、少しだけお時間をいただいてMinaLimaのおふたりにお話を聞きました。
-クラシック・シリーズについて伺いたいのですが、手がける作品はどういった基準で選んでいるのでしょうか?

ミラフォラ:まずは、私たちが大好きな物語であること。そして、特定の状況や場所に限定されず、イラストとして物語を伝えられる多様性を持ったストーリーであることです。

エドゥアルド:物語が持つメッセージも大切です。例えば、今後発行する『宝島』には勇気と決意というメッセージが込められています。iPadや電子書籍ではなく、紙の本であることにもこだわっています。

-特にお気に入りの物語はありますか?

ミラフォラ:(今後発行予定の)『星の王子さま』です。本当に大好きな作品だったので、声がかかったときは、もう迷うまでもなく「ぜひやらせてください」と即答しました。まるでどこか不思議な星から導かれたかのように、サン=テグジュペリ家からの招待状がふっと届いて――まさに運命のように感じましたね。

エドゥアルド:『星の王子さま』で作業したものを確認するたびに、いつも涙がこぼれてしまいます。でもそれは悲しみではなくて幸せの涙です。この物語にはきっぱりとした「終わり」も、「元に戻ること」もなくて——ただ心の奥に残り続けるんです。子どもの頃からずっと大切にしてきた特別な一冊で、何度読んでも美しい物語だと思います。

-自分たちの本が日本語に翻訳されたものをご覧になって、新たな発見などはありましたか?

ミラフォラ:私たちは文字のデザイン(タイポグラフィ)に強いこだわりがあるので、自分たちのタイトルが漢字というまったく新しい文字で表現されているのに、それでもちゃんとMinaLimaらしい個性が感じられるのを見ると、「わあ、まるで魔法みたい!」と思います。言葉の意味がわからない時って、形として文字を見ることになりますよね。そうやって“イメージ”として捉えると、なおさら不思議で魅力的に感じられます。

-トークショーでオリジナルストーリーを制作中とおっしゃっていましたが、オリジナルの物語はどのように生み出しているのでしょうか?

ミラフォラ:私たちは、建築や本など、心を動かされる何気ないものからインスピレーションをもらうことが多いんです。たとえば、5年ほど前に新聞で読んだ小さな実話。それがきっかけで、「もしこの出来事のあとにこんな展開があったら?」と想像をふくらませていくうちに、気づけばストーリーの骨組みができていて、スタジオの仲間たちとテーブルを囲みながらアイデアを出し合い、物語にさらに命を吹き込んでいきます。そうしていると、ある瞬間ふっとキャラクターが現れる。

私たちは文章の専門家ではないので、作家と協力してそのアイデアを言葉にしてもらいます。チームで物語を仕上げて、最後に私たちが絵を描く。でも、実は絵を描く作業は簡単で、本当に難しいのは——物語を“生み出す”ことなんです。

-今回の日本滞在はいかがでしたか?

ミラフォラ:素晴らしかったです。今回の来日は1週間しかなかったのですが、東京と大阪を新幹線で行き来して、できるだけ多くの方たちに会うべく頑張りました。

エドゥアルド:私たちにとって大阪は特別な街です。日本でのスタート地点であり、第2の故郷のように感じています。一緒に働く素晴らしいスタッフがいる場所でもあります。ハウス・オブ・ミナリマがなんばパークスに移転したことで、より多くの方々に知ってもらえると期待しています。

-思い出深いファンとの交流はありましたか?

ミラフォラ:クリエイターや芸術家は誰でも、たった1人でもいいから誰かに影響を与えたいと思うものです。だからこそ、「あなたの作品に勇気づけられました」といった声をいただくと、私たちの仕事がようやく一つの円を描いて完結したような気持ちになります。私たちの創作は常に“伝えること”が核にあり、読者や観客との対話があってこそ意味を持ちます。その作品に本当の命を吹き込んでくれるのは、ほかでもない、受け取ってくれる皆さんなのです。

エドゥアルド:今の世界は、複雑で困難な状況にあります。だからこそ私たちは、イベントを通じて人々と直接触れ合い、アートや想像力、そして創造性について語り合うことを大切にしています。物語の力、そして創作の力が、少しでも世界を明るく、前向きな方向へと導く一助になれば――そんな思いで、日々取り組んでいます。

MinaLima(ミナリマ)トーク& Meet&Greet イベント(大阪市)
2025年6月

House of MinaLima Osaka(ハウス・オブ・ミナリマ大阪) 大阪市浪速区難波中2-10-70なんばパークス5F
House of MinaLima Osaka公式Instagram
取材・文=八巻綾
テレビ局で舞台・展覧会などのイベントプロデューサーとして勤務した後、関西に移住。映画・演劇ライター。
miyoka
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