藤原丈一郎(なにわ男子)主演『ロンダリング』2話レビュー
7月3日よりスタートしたドラマ
『ロンダリング』の第2話が10日深夜、放送されました。
同作は、なにわ男子の藤原丈一郎さんが地上波連続ドラマ初主演を務める社会派ミステリーです。藤原さんが演じる「死者の声が聞こえる」という特殊能力を持った青年・緋山鋭介が、その能力を買われて不動産会社・アマミ不動産に雇われ、事故物件などのワケあり部屋に一時的に住んで次の住人へとつないでいく「ロンダリング」をおこなっていきます。
第1話では緋山が、”自ら命を絶った”とされていた女性の部屋に住み、彼女がストーカーによって殺された事実を突き止めました。そして第2話では緋山が、アマミ不動産社長の天海吾郎(大谷亮平)に命じられて大阪で仕事をすることに。そこで、ゴミ屋敷と化した放置物件などのトラブルに巻き込まれていきます。
「プロの俳優になりたい」という夢以外に頼るものがない緋山
第1話のレビューでも指摘しましたが、『ロンダリング』には、同作の演出とチーフプロデューサーを担当されている木村淳さんのこれまでの作品にも描かれていた「居場所」の物語が感じられます。「居場所」というのはいろんな捉え方ができます。住むという意味での「居場所」。そして心のよりどころという意味での「居場所」。つまり、自分の「ホーム」はどこにあるのか、ということですね。
この第2話では「ホーム」というテーマが前回以上に濃く感じられました。
一つは、緋山の経歴です。彼は、俳優を目指して大阪から上京しました。現状はうれていませんが、彼からしたら、一旗揚げるまでは絶対に大阪に戻りたくないのでしょう。ところが第2話で、天海社長の指示で大阪へ行くことになってしまいました。緋山はやはり「俳優目指して“有名になるまでは帰らん”って気合で東京出てきたんスよ。そやのに、こんなんで大阪に逆戻りって…」と戸惑います。
さらに、大阪滞在中は前述したゴミ屋敷に住む予定でしたが、白骨化した頭部が見つかったため、警察の捜査もあって住むことができなくなります。住む場所がなくなって困る緋山に、天海社長は「実家にでも帰っていればいいだろ?」と言いますが、緋山は「いや、無理ですて。俺、家出同然で上京したんで」と身の上を明かします。
そもそも緋山は「死者の声が聞こえる」という能力のせいで、東京でも住む部屋を転々とする引越し貧乏に陥っていました。さらに、故郷の大阪も家出同然で出てきたことから実家に帰りづらい。つまり緋山は、物理的にも精神的にも「ホーム」がない若者であることが分かります。
彼には、「プロの俳優になりたい」という夢以外に頼るものがありません。だからこそ、仕事やお金のためとは言え、大阪に戻るのはためらうところが大きかったはずです。
「ホーム」とは、心の寂しさを埋める場所
「ホーム」がない若者という部分では、大阪に来たばかりの緋山が出会う“半グレ集団”とそのリーダーであるP.J.(橋本涼)たちもそうではないでしょうか。
大勢で群れて行動し、寂れた商店街の路地でたむろする。そうやってはみだして生きている彼らの「家」はどんなところなのでしょうか。一人暮らしをしているかもしれませんし、誰かの家に転がり込んでいるかもしれません。実家で家族と住んでいる場合ももちろんあるでしょう。自力でがんばっている人もいれば、誰かに頼っている人もいるはずです。パッと見は無軌道に生きているように思える半グレ集団の一人一人にも、なんらかの「ホーム」を持っています。そこでどんな暮らしを送っているのか、すごく気になりますね。
ただ、彼らにとって今の時点では、仲間といる時間と場所が本当の「ホーム」なのかもしれません。ツッパって生きている半グレ集団の若者ですが、結局「ホーム」がないと不安なのです。誰かと一緒にいないと気持ちがもたないのではないでしょうか。そう考えると「ホーム」とは、心の寂しさを埋める場所なのだと思います。
そう考えると、緋山はすごく強いと思いました。頼れるものは「プロの俳優になりたい」という夢だけ。精神的な部分だけですから。そして、だからこそむちゃ振りをしてくる天海社長であっても、気にかけてもらえたことにうれしさがあったのではないでしょうか。緋山は、大人になって初めて「ホーム」を感じているのかもしれません。そして天海社長も、そんな緋山に声をかけたということは、彼が持つ能力以上の何かを感じ取っている気がします。
第2話は、これからいろいろ起きるであろうストーリーの助走的な回でもありました。緋山の背景は少しだけ分かりましたが、天海社長の狙いはなんなのか、アマミ不動産大阪支社で働く蒼沢夏凜(菅井友香)はどんな事情を抱えているのか、半グレ集団を率いるP.J.とは一体何者なのか。同回では、気になる要素がいろいろ散りばめられました。次回以降、それらが回収されていくのではないでしょうか。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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