パラレル夫婦 死んだ“僕と妻”の真実 第3話レビュー
前回、幹太(伊野尾 慧)がなつめ(伊原六花)の不倫を疑い、ぶつかりあってしまった2人。今回で、2人が結婚してからどんなふうにすれ違ってしまったのかが見えてきたように思います。
お互いのいないパラレルの世界を生きる幹太となつめは、2人の世界がすこしだけ混ざり合う空間を「ミックス」と名づけましたが、“ヤマっち”とホテルで会う約束をした土曜日の夜、なつめはミックスに現れませんでした。もちろん不倫をしていたわけではなく、なつめは実家に帰って母親(南野陽子)と過ごしていたのです。
“ヤマっち”が誰なのかわからないまま、焦りを募らせ、丸山(野村康太)のゲームバーを訪れた幹太。丸山からの話で、実は丸山となつめは幼なじみだったことがわかります。“ヤマっち”は丸山のことだけれど、なつめが行こうとしていたのは農業体験で、しかも集合時間は夜ではなく朝の9時だったことも……。
とんでもない勘違いをしていたことに気づき、ふがいなさからか酒に酔って「幼なじみなんかに嫉妬した」とくだをまく幹太。それに対して丸山は「その嫉妬は間違っていません。僕の方がずっとなっちゃんのこと愛してます」とつぶやきます。ずっと片思いをしていた相手が亡くなってしまった丸山の心情を思うと、とてもせつないシーンでした。
一方、なつめの世界では、実家で過ごすなつめのもとへ丸山が訪れ、なつめへの思いを打ち明けます。茶化そうとするなつめに「なっちゃんを守りたい」と抱きしめる丸山。こんなにすてきな幼なじみにここまで思われても、なつめは幹太とのことを考えているように見えます。はっきり答えを言わずに立ち去ろうとするなつめを見つめる丸山の視線もとても切なかったです。どちらの世界でも、なつめに片思いのままの丸山を応援したくなりました。
そして数日後ミックスに現れたなつめは、なにかを決意したような表情。なつめは幹太に、夫婦生活で自分の気持ちを押し殺して飲み込むようになってしまったことや、幹太とちゃんと向き合うことから逃げていたことを話します。そして「これから私たちが夫婦になるのは難しい」と涙を流すのです。なつめが言うように、結婚生活3年の間に作ってしまった溝を、これから毎日たったの3分で埋めることは難しいのかもしれません。
幹太はきっと悪気なく「なつめのため」を思って言っていたはず。自分の幸せがなつめの幸せだと思って疑わなかった幹太ですが、なつめの言葉で、自分が「間違っていた」と気づきました。
幹太となつめのように、お互いに対して感じるモヤモヤが大きくなっていったり、心の溝が少しずつ深まってしまったりすることって、多くの夫婦にとって“あるある”なのでは、と感じました。毎日一緒に生活しているからこそ事を荒立てたくない、とか、忙しいから話し合うのは面倒とか、あえて空気を悪くしたくないとか……「少しくらい我慢すればいいか」と後回しにしてしまうと、いつの間にか取り返しのつかないことになってしまうこともありますよね。
なつめと幹太の上司・守谷(八嶋智人)は、「くだらないことでも奥さんとぶつかりあった、だから絆が深まった」となつめに話していました。幹太となつめも、これからのミックスでのわずかな時間で、ぶつかり合って絆を深められたらいいのに。亡くなったはずの妻・夫と会える奇跡の時間があるのだから、あきらめないで! と2人に声をかけたくなる第3話でした。
文:早川奈緒子
川崎市在住のフリーランスライター。10代の子ども3人の母。子育て系やエンタメ系記事の取材・ライティングを行う。
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