B&ZAI・橋本涼が「謎の男」の冷酷さを見事表現 なにわ男子・藤原丈一郎の身を案じて感情あらわに【ドラマ・『ロンダリング』】

2025.08.01

B&ZAI・橋本涼が「謎の男」の冷酷さを見事表現 なにわ男子・藤原丈一郎の身を案じて感情あらわに【ドラマ・『ロンダリング』】

藤原丈一郎(なにわ男子)主演『ロンダリング』5話レビュー

7月よりスタートしたドラマ『ロンダリング』(カンテレ/毎週木曜深夜0時15分)の第5話が31日深夜、放送されました。

第4話では、アマミ不動産・大阪支社が管理し、キャバクラ嬢の獏良あゆ(春名真衣)が暮らしている「メゾン梅小水ハイツ304号室」が事故物件であることが判明。そこはかつて、ホストクラブへのツケが払えなくなった「レイラ」こと江出地すず(大出菜々子)がメンズエステ嬢として働かされていた場所。

彼女は、望まない仕事をおこなう日々と、思いを寄せるホストへの気持ちで追い詰められ、自ら命を絶った部屋でした。そんな部屋のロンダリングに臨んだのが、アマミ不動産スタッフで死者の声を聞くことができる能力を持つ緋山鋭介(藤原丈一郎)。彼はすずを鎮魂し、部屋のロンダリングも成功させました。

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『ロンダリング』3話 獏良あゆ(春名真衣)

そして第5話では、緋山(ひやま)が、解体直前の老朽化した共同住宅のロンダリングに乗り出します。ちなみにその共同住宅は、地元の有力地主である西大路絹代(宮田圭子)が所有するもの。アマミ不動産の天海吾郎社長(大谷亮平)にとって、トラブルを解決して今後の事業につなげたい案件です。ただその物件は、取り壊しを始めた解体業者が現場で次々と体調不良に見舞われる、危険な場所でした。

街の再開発 かつてそこで暮らした人たちの叫び

今回は都市や地域の再開発がテーマとして絡んでいます。たとえば『ロンダリング』の第2話以降の物語の舞台になっている大阪でも、中心部の梅田は大規模な再開発が進められています。なにせその再開発は「100年に1度」と言われるほどですから。10年前…いや、5年前と比べても街の雰囲気はがらっと変わりました。

ただ、再開発の裏には、長年に渡ってそこで生活していた人や建物の存在があったはずです。筆者は、梅田の再開発地区へ足を運ぶたびに「ここにあったあの古いお店や家の人たちはどうなったんだろう」と考えます。円満に物事が進んだとしても、家やお店が取り壊されるわけですから、それについて思うことはきっとあるはずでしょうし、そもそも生活自体を違う場所へごっそり移し替えなければいけませんし、それはものすごく大変な作業だったはず。

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『ロンダリング』2話 天海吾郎(大谷亮平)

再開発が良い、悪いということではありません。そういった事業には必ず「背景」があります。そして新しいものが生まれるたびに、忘れられていくもの、捨て去られてしまうものは確かにあります。再開発のにぎわいは存分に伝わってくる一方で、ずっとそこにいた人たちの「声」が私たちのもとに届くことはほとんどありません。そこにいた人たちはどんな風に、街の新たな発展を見ているのでしょうか。

『ロンダリング』の第5話はまさに、新しいものが築き上げられようとする中で、そこにいた人たちの声に耳を傾けようとする内容でした。

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『ロンダリング』3話 蒼沢夏凜(菅井友香)、獏良あゆ(春名真衣)

新しい生活の「地層」には、ほかの誰かの営みの記憶がある

解体直前の老朽化した共同住宅から聞こえてくるのは、「ここにいたい」「ここは俺たちの居場所だ」という霊の声です。解体業者に危害を加えるほどですから、相当な執念が感じられます。

今後の展開がどうなるのか分かりませんから、あくまで推察なのですが、もしその場所が完全に取り壊されてしまうと、その声の主たちがかつてそこで生きたという存在証明自体が失われてしまうのではないでしょうか。
『ロンダリング』5話 天海吾郎(大谷亮平)

『ロンダリング』5話 天海吾郎(大谷亮平)

それは第4話で、誰もが自分のことを「レイラ」と呼び、決して広くはないマンションの一室で客の相手をし続けて人生を終えた江出地すずの苦痛にも結びつくのではないでしょうか。彼女自身、自分の名前が「江出地すず」であることすら忘れかけていたわけですから。

そう考えると、再開発で街がどんどんと発展を遂げ、新しい雰囲気と価値観が塗り替えられ、私たちの生活も日々変化しているその「地層」には、ほかの誰かの営みの記憶があるのです。そうやって時代も積み重なっていくものなんですよね。

橋本涼さんが演じる謎の男、P.J.が初めて感情を表に

『ロンダリング』5話 天海吾郎(大谷亮平)

『ロンダリング』5話 P.J.(橋本涼)、緋山鋭介(藤原丈一郎)

物語のメッセージ性だけではなく、第5話では謎の男、P.J.(橋本涼)の意外な面を見ることもできました。

P.J.は、半グレ集団のリーダーであり、大阪・ミナミの複数のガールズバーなども経営する青年。裏社会ではかなり顔が知られています。そんなP.J.は、緋山が大阪滞在中の生活拠点としているゴミ屋敷となにやら関係性があるようです。しかし、ここまでまったくつかみどころがありません。

しかし、老朽化した共同住宅のロンダリングに臨む緋山に同行する形で、その一室で過ごすことに。そして最初の夜で緋山が霊の声に苦しみ始めたとき、珍しくP.J.は感情を表に出します。緋山の身を案じ、大きな声を出すのです。

それまでのP.J.は怪しさいっぱい。緋山はなぜ、そんなP.J.と気軽に接していられるのか。いろいろ事情があるとは言え、緋山は危機察知能力に欠けているのか、ただただお人好しなのか……。

第5話終盤は間違いなくP.J.というキャラクターの一つの分岐点になりそうな気がしました。演じているのは、アイドルグループ・B&ZAIの橋本涼さん。P.J.の冷酷さを見事に表現されていて、特に橋本さんの冷たい眼差しと口調は印象深いものがありました。

しかし、取り乱すP.J.を見て、そのキャラクターへの興味が俄然(がぜん)湧きました。彼の過去にはいったい何があるのか。そもそもなぜ緋山に付いてまわるのか。存在感を増していくP.J.と、橋本さんの演技にも注目です。
文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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