『R-1グランプリ2026』で示した「一人コント」の最適解、今井らいぱち&トンツカタン・お抹茶の「ハイブリッド型コント」

今井らいぱち

日本一のピン芸人を決める『R-1グランプリ2026』は、今井らいぱちさんの優勝で幕を閉じました。

らいぱちさんが同大会で披露したネタは、ファーストステージが「講演会」、最終決戦が「絵描き歌」でした。「講演会」ではスペシャルドリームアドバイザーの財前一樹、「絵描き歌」では熱唱系歌手のYAMATOという濃いめの人物を登場させており、ジャンル的にはキャラクターコントと言えるでしょう。

さらにモニターを使ったデジタルフリップ芸の要素もあり、「絵描き歌」は歌ネタでもあります。つまりらいぱちさんのネタは、ピン芸における様々な手法を取り入れたハイブリッド型のコントと言えるでしょう。

純粋な一人コントの難しさ

一方で『R-1』では、芝居とストーリーで見せる純粋な一人コントは「上位には食い込むものの、優勝には届きにくい」という印象があります。一人コントでの優勝は近年でも、2021年のゆりやんレトリィバァさんなど限られています。『R-1』の歴史を振り返っても、おいでやす小田さん、吉住さんら一人コントの名手が数多くいますが、優勝までは届いていません。

中でも象徴的なのは、8度目の決勝進出となったルシファー吉岡さんではないでしょうか。今大会での「合コンでの王様ゲーム」と「文学」を重ねたストーリーは、もはや哲学的な深みすら感じました。話自体が抜群におもしろく、コメディの戯曲のよう。演技にも引き込まれ、一人コントの極みを感じさせました。

ルシファー吉岡

ほかにも真輝志さんの「恩返し」は、たぬきによる本質を見失った恩返しというストーリーとしゃべりの演技がとてもすばらしく、さすらいラビー 中田さんや九条ジョーさんの一人コントも発想の妙が光っていました。

しかし、順位的にその上を行ったのがトンツカタン お抹茶さんでした。お抹茶さんのファーストステージのネタ「ピアノ刀侍」は、刀がピアノになっていて(文字で説明すると「なんのこっちゃ」ですが…)、刀を振るうたびに音が鳴ります。ストーリー展開やセリフ回しにも音楽的なリズム感が重要視されていたことから、キャラクターコントにリズムネタの要素を重ねて見ることができ、らいぱちさん同様のハイブリッド型のコントに分類されると思います。お抹茶さんは最終決戦で同票2位となりました。

トンツカタン お抹茶

一人コントを「お笑い」として見せるためには?

なぜ、芝居とストーリーからなる一人コントで押し切ることは難しいのか?これはあくまで筆者の意見ですが、そうなると「ピン芸」というより「一人芝居」のような演劇に寄ってしまうからかもしれません。これは『R-1』のおもしろさであり、難しさでもあります。同大会は「お笑い」であって「コメディ」ではありません。つまり、観客の笑いを直接取りにいく間や仕掛けが求められる点で、物語性重視のコメディ演劇とは性質が異なるのです。

それでも芝居とストーリーが本格的になればなるほど、コメディ演劇の印象へと寄ってしまうのかもしれません。『キングオブコント』などに挑戦しているダウ90000はまさに「お笑いか、コメディ演劇か」で議論されていますが、ピン芸においても、一人コントの精度が高くなればなるほどコメディとの境界が曖昧になるのではないでしょうか。

ななまがり 初瀬

一方で、ななまがり 初瀬さんは「言い切る男」の中で、世の中の答えが出ていないものの答えを次々言い切る“羅列型”のネタに、ショートコントを加えてストーリー展開を作りました。そのことから、『R-1』の戦い方において一人コント的な要素は欠かすことができないとも考えられます。

一人コントを「お笑い」として見せるためには、現状、様々なお笑いの要素やアイデアを組み込んでいく必要があるのかもしれません。その点では、優勝したらいぱちさんや、2位タイのお抹茶さんは最適解の一つを叩き出したように捉えられました。

取材・文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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