前回ラストで、食卓を一緒に囲んだ瞳(奈緒)の友人・岸(深澤辰哉)を「彼、また会いたいねえ!」と気に入っていた雅彦(木梨憲武)。再び自宅に呼び、何をするかと思えば……葬儀屋の岸に「自分の葬式を仕切ってほしい」と頼んでいました。これ、一馬(濱田岳)との結婚を反対する雅彦にとって、瞳の新しい交際相手に岸がふさわしいかどうか確かめているフシがあるのでは? というのは筆者の勝手な憶測ですが、そのリトマス試験紙が自分の葬式だなんて悲しすぎます。
「葬式は3月末になりそう」と自らの余命をあっけらかんと話す雅彦に、戸惑いを隠せない岸。とはいえ、人生のラストを飾る葬儀を雅彦本人から託されたことは、瞳を想う彼の背中を強く押した側面もあったのではないでしょうか。事実、偶然出会った瞳の婚約者・一馬に「結婚を延期するか、いっそのこと取りやめては」「それでも(強行)するなら、僕はあなたの良識を疑います」「瞳にあなたはふさわしくない」と宣戦布告するくらいですから。回を重ねるごとに存在感を増していく岸の言動、今後も注目です。
一方、学習塾の講師として働き始めた一馬は、東大中退の頭脳と芸人としてネタに使っていた画力とトーク力を生かした授業が大好評! 前回、ネタの決めゼリフ「どんまいどんまい、僕は好きだよ」を授業中に繰り出し、生徒から「カズマルくん?」と芸名を呼ばれ身バレしそうになっていました(小学生にネタが浸透してるの胸アツだったなぁ笑)。塾講師としての適性を発揮し始めた一馬に、早くも正社員としての採用が決まります。「経済的に安定すれば、反対されていた瞳との結婚を雅彦に認めてもらえるはず」と考える一馬ですが、すなわちそれは芸人廃業を意味することに。一馬よ、君はホントにそれでいいのか?
今回は、一馬の覚悟をめぐって周囲に巻き起こる余波が描かれました。まず、春にこの世を去ってしまう父との時間を優先しようと結婚の保留を一馬に提案した瞳。「余命わずかな雅彦に娘の花嫁姿を見せたい」という一馬の優しさを理解しつつ、泣く泣く保留を決意した自分の気持ちが置き去りにされたようでモヤモヤが募ります。さらに、浮ついた芸人稼業を不安視していたはずの雅彦から「他人から言われて芸人をやめるなんて、その程度の覚悟だったのか」と思わぬ反応が。
とんだちゃぶ台返しに驚きましたが、思い返せば雅彦は芸人の一馬を応援し始めてもいましたよね。一馬が出場したお笑い賞レースの予選で彼に一票を投じたり、緩和ケア医の阿波野(光石研)から記入を勧められた人生ノートの「興味があること」欄に「ドンマイのネタ」と書き入れたり。一馬に芸人として成功してほしい気持ちはありながら、娘の幸せを思うと素直に背中を押せない雅彦の気持ちも……よくわかる。
一方で、一馬と雅彦の板挟みになってどうしていいかわからず途方に暮れる瞳の苦悩もよくわかる。彼女に気持ちを寄せすぎて、見ているこちらまでツラくなってきたほど。誰か瞳のしんどさを分け合ってもらえないだろうか……と思っていたところ、瞳が働く助産院の院長・節子(小林聡美)が「一人で抱え込まず、時には気持ちを誰かに聞いてもらうのも大事だよ」と言って抱きしめてくれました。瞳が打ち明けたのは父・雅彦の余命についてのみでしたが、「だから最近、元気がなかったのね」と節子。直接の解決策にはならなくても、こうして見守ってくれる人がいるだけで、ずいぶん気持ちが救われるよね。瞳にそういう相手がいて、よかった。
一馬の決断は、気づかないうちに息子・龍之介(石塚陸翔)との親子関係にも暗い影を落としていきます。塾講師の仕事が軌道に乗って忙しくなり、一緒に食卓を囲む時間すら取れません。揚げ句、「さがさないでください」とメモを残して家出してしまう龍之介。雅彦が保護して連れ帰ってくれましたが、家出の理由を「僕はいない方がいい」「仕事と瞳ちゃんのことで忙しいパパの足かせになりたくない」と話す息子の気持ちに涙してしまいました。そこまで大人にならなくていいんだよ、龍ちゃん……。
このドラマ、互いが互いを思いやるあまりにすれ違っていく様子が本当に切ない。予告によれば、瞳は倒れて入院してしまうし。一馬に対して「いまの私には無理だと思った」と告げているし(何が無理なんだよぉ涙)。「もうカズマルと会わないつもり?」と問いかける雅彦に、「その方が、お父さんも安心でしょ?」と返す瞳。一馬は、岸に「瞳ちゃんのことを、よろしくお願いします」と言って頭を下げているじゃないですか。なのに雅彦の「死ぬまでにやりたいこと」リストにあった、楽しくにぎやかな「ホームパーティー」を描く回にもなりそうで。感情の振れ幅が大きそうで、私まで瞳ばりに気持ちが追いつきません!
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文:岡山朋代
編集・ライター。朝日新聞社「好書好日」、ぴあ各メディアなどで主にカルチャーやエンタメ分野の取材・インタビュー・執筆を手がける。
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