食べてみよか

「コムタンラーメン」わかぎゑふの料理コラム✨

2025.01.27

「コムタンラーメン」わかぎゑふの料理コラム✨

優しさの果て

 先日、久しぶりに小説の帯を書くという仕事をしました。新刊を売るときに本の下の部分についている細い紙、あれを出版業界では帯というのですが、内容を的確にとらえて本が魅力的に見えるように宣伝する効果を要求されるので、コピーライターではない私には責任重大なお仕事でした。しかも作家は古い知り合いなのです。長年編集者をやっておられたのですが「なんでいまさら小説書くの?なんで私に白羽の矢を立てるかな」と内心モヤモヤとしました。

 小説は4篇からなり、内容は恋が芽生えるのではなく、不思議に気になる人との会話が中心でした。例えばひと組は長年離れていた父と息子、また別の組は小さなカメラ屋と写真を撮りにくる女という風に街のどこかでありそうな出会いの物語です。
 共通していたのは人に自分を押し付けない、深堀りしない、しつこく聞かない、それでいて興味を持つという、なんとも大人な人たちが登場する読みやすい小説ばかりでした。私は「この本の登場人物たちみたいな距離感で暮らせたら、世の中はだいぶ優しいに違いない。行きたい店、住みたい家ばかりだ。」という文章を送って、仕事を終えました。自費出版だそうなので、本屋に並ぶのかどうかも知りませんが、誰かがその小説を読むときに「この帯、全然だめじゃん。」なんて言わないように神に祈るのみです。(どこの神様でもいいのでよろしくお聞き届けのほどを!)

 仕事が終わって、ふと「優しさってなんだろう?」と考えました。昨今増えた外国人旅行者などが、よく日本人は親切で優しいと言いますが、どこがどう優しいんだろうか?と思ったからです。
 そこでSNSを覗いて「日本人 親切 優しい」というリサーチをかけてみました。すると「知り合ったお年寄りのご夫婦が家に招いて手料理を作ってくれた。その息子さんが「日本へようこそ」と書いたケーキを焼いてくれた」とか「道で地図を広げていたら案内してくれた」「荷物を運んでくれた」「商品が売り切れてたので、がっかりしてたら知らない人がゆずってくれた」「財布を拾ってくれた」などが上位にランクインしていました。さすがに見知らぬ外国人のために「ようこそ日本へ」と書いたケーキは焼きませんが、まぁ困ってそうな人がいたら普通にするよねという話ばかりではあります。ただし、これらすべてのコメントに「お金を渡そうとしたら、受け取ってくれなかった」というオマケが付いていました。
 そうか!お金を取らないこと、無償で他人のために何かをすることは親切で、優しい行為と思われるのか…世知辛いな外国人って…と思いますが、外国に行ったら確かに何をするにもチップと感謝のお礼の連続だなと改めて思いました。
そしてちょっとしたことでも「お礼です」とお金を渡すと「なんて優しいの」と言われます。全ては金なのか?とまたも世知辛いな外国人と思ってしまった次第です。
 
 うーん…今度はなぜ日本人はお金をもらわないのだろうか?と考えました。私が駅で困ってる外国人に切符の買い方を教えてあげたとして、もし彼らが千円札を差し出したら?うん、絶対受け取りませんね「NO NO」と断ってその場から足早に去るでしょう。なぜか?「お金が欲しくて教えたんじゃないから」ですね。
 じゃ日本人はお礼(お金)を渡す文化がないのか?いやあるんですよこれが!何かしてもらったら、ポチ袋にお金を入れて「お車代」とか「お食事代」を渡す文化はいまだに「いつ渡す?どうやって渡す?」という心理戦の応酬を繰り返してるじゃないですか!
 ではではでは、あれはなんで受け取るんでしょうか?ポチ袋に入ってるから?外国人がもしもポチ袋にお金をいれて「お礼です」って言ったらあなたは受け取りますか?身も知らぬ人からはやはり受け取りませんよね。そりゃまぁ10年も付き合ってる近所の外国人で、日本の習慣すっかり知ってる人から「奥さん、これこの間のお礼。受け取って」とか言われたら、二、三回の押し問答しつつ受け取るかもしれませんが、それは人種関係ないし。
ということで、結論として日本人は見知らぬ人からお金を受け取る文化がないし、自ら進んでやった行為に対価を求めない傾向がある。世界的に見たら、これは親切で優しい行為なのであろう。と、結論付けることにしました。

 ふぅ…久しぶりに頭使って疲れたので、胃に優しい物でも食べます。ということで今回は「いざという時の袋麺」をご紹介します。よく「そんなに料理するんだったら、カップ麺とかコンビニ弁当なんて食べないでしょ?」と聞かれるのですが、とんでもない。稽古中や劇場での本番中にいろんな軽食を食べますとも。そして袋麺を作らせたら日本一うまいラーメンを作りますよ!自称ですけど。
 それによく2つの袋麺のスープを混ぜ合わせたり、トマトジュースを入れたり、牛乳を入れて作る人がいますが、私はあくまでも袋麺本体のお味を尊重したいと思います。

わかぎゑふの料理コラム/韓国「コムタンラーメン」

今回ご紹介するのは韓国の「コムタンラーメン」という袋麺。コムタンとは牛肉を煮込んだ半透明のスープのことですが、このラーメンはソルロンタンという白濁スープに近いおだしです。ともかく今日のテーマ「優しい」お味ですので、軽く食べたい時などにお勧めです。
【コムタンラーメンの作り方】
袋麺をおいしく作るコツは水の量と麺の硬さです!
①どんぶりに水を入れ、ラーメンが入ったところを想像して計る。
すると大体どんぶりの半分強くらいの分量が適量になります。「え?こんな少ないの?」と最初はドキドキしますが、だまされたと思って、それをお鍋に入れてください。袋麺のおいしさはスープの濃さで決まります。水を入れすぎると味が薄くなり、少な過ぎると辛くなり、メーカーさんの提供したい本来のおいしさが損なわれます!

②お湯が沸騰したら袋麺を入れほぐします。そしてひと煮立ちしたら中火にして、一分ほどで火を止めます。
ここで「まだ硬いんじゃないの?」と思うかもしれませんが、勇気をもって火を止めてください。どんぶりに盛っている間にも麺に熱が入るので心配はいりません。

③お好きなトッピングを乗せてもよし、そのまま食べてもよし。出来上がりです。
ちなみに本日は冷蔵庫にあったスナップえんどうとゴマをふっていただきました。優しい~!

わかぎゑふの料理コラム/韓国「コムタンラーメン」

わかぎ ゑふ(劇作家・演出家)大阪府出身。
関西小劇場界の老舗劇団、「リリパットアーミーII」2代目座長。
芝居制作処、玉造小劇店の代表。
大阪弁のオリジナル人情劇を数多く手掛けている。古典への造詣の深さも有名で
落語、歌舞伎、新作狂言の作、演出や衣裳デザインなども手掛ける。
小劇場から大劇場まで縦横無尽に活躍する数少ない女性演出家の一人。
エッセイも多数出版。2023年には大阪市民表彰を受賞した。
miyoka
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