食べてみよか

「おつきあい〜野菜ざんまいのうれしい日々」わかぎゑふの料理コラム✨

2024.05.30

「おつきあい〜野菜ざんまいのうれしい日々」わかぎゑふの料理コラム✨

おつきあい〜野菜ざんまいのうれしい日々

 「何かを頂いたら、お返しに何をするか?」これは大人の永遠のテーマですねぇ。私が今までに頂いたものの中で一番びっくりしたのは神戸の通販会社フェリシモさんから届いたお歳暮です。フェリシモさんはとても律儀な会社で、社長さんから「社員に演劇のワークショップをしていただけませんか」というご依頼を受けて、行ったことがありまして。要するにプレゼンをする時などに俳優の訓練が役に立つのではないかという話でした。

 欧米では大学の授業で演技を学ぶことは珍しくありません。医者、弁護士など人と対峙 (たいじ)して話をしなくてはならない職業を選ぶ人たちは、落ち着いたしゃべり方、説得力のある態度を身に着けるために演技を学ぶわけです。もちろん一番大事なのは人となりですが、演技の勉強をしておくと、その助けになります。
 日本では大学を卒業するとすぐに社会に放り出され、プレゼンなどで度胸を試されて大汗をかくという話がよくありますが、演技の勉強を少ししているだけで視線の定め方や、きれいな立ち方、落ち着いて見える態度などで自分の言葉を信用してもらうことが出来るわけです。大学側も就職率を上げたがっているのなら演技の時間を少し取り入れたらいいのにとよく思います。

 そんなことでフェリシモさんに演技のワークショップをしに行ったわけです。と言っても今から十数年前のことです。それなのに必ず毎年お歳暮が届くので、律儀すぎる会社だなと感心してしまいます。
いつもオリジナルのワインとか、ある時は色鉛筆数十色とか、オリジナルチョコとコーヒーとか、会社で独自に開発なさっているものを贈って下さるので感心しています。

 ある年の暮、玄関のチャイムが鳴ったので出てみると宅配便の方が「お届け物です」と言うので「あ、家の中に入れてください」と言うと「あの、これは無理です」と答えられました。見ると大きな白い布に白いリボンが掛けられた大きな包みが置かれていたのです。
 開けてみると、なんとフェリシモさんから中国の文化革命時代に一家に一台あったという自転車の復刻バージョンが届いたのです。「嘘やん…」と立ち尽くしましたね、あの時は。
 先にも書いたように、私は2年ほどワークショップに伺っただけで、それ以降はお仕事も何もしていません。いくら律儀でも、これはやりすぎやろう!と秘書の方に連絡しましたが「いいえ、今回は限定台数を復刻して、当社の大切な方だけにお贈りしましたので」と答えられました。ありがとう!フェリシモさん、いつかまたお返しします!と心の中で叫びましたね。
 その自転車は戦前の日本のものとも似ているので、今でも芝居の小道具として舞台で使っています。ただ当のフェリシモさんにはいまだに何もお返し出来てはいないのが心苦しい限りですが…。

 さて、この春はあっちこっちからいろんな野菜をいただきました。まず前々から懇意にしている大学教授の家が、偶然にも芝居の稽古に通っていた近所だったと分かり「そら豆とスナックえんどう要ります?」と連絡が来ました。なんと彼は大阪市内の家の庭で畑を作っているそうで、稽古の前にちょっと寄ったら奥さまが畑に案内してくれました。
 「本当にマメな人なんですよ」と100坪もある畑の色んな野菜を見せてもらい、そら豆とスナックえんどうをゲット。5月の頭だったのでお土産はかしわ餅にしました。もぎたての野菜は甘くて最高においしかったです!スナックえんどうは次の日にビビン麺にのせて食べましたが、ピリ辛のコチュジャンに甘みのある新鮮な野菜、最高のマッチングでした。

 それから数日後、今度は夫の元上司に当たる方が、新潟からのお土産ということで山菜と日本酒を持ってきてくださいました。甘党だと知っていたので、その前日もらったチョコを買い置きしてあるオーガンジーの袋に詰めて、さも用意してあったかのようにお返しに渡しました。ちょっとしたプレゼントに便利なので、皆さんもきれいな袋を買い置きしておくことをお勧めします。ちなみに我が家のオーガンジーの小袋は船場センタービルにある「シモジマ」という文具店で買っております。 

実は毎年この時期に山菜を頂くのですが、その年によって中身が違います。今年はフキわらびでした。
フキは粗塩で板ずりしてさっと茹で、皮をむいて麺つゆ漬けと、細いところは甘辛く煮てきゃらぶきに。
わらびは重曹で煮て半日水にさらして、冷蔵庫に。サラダや、ナムルパスタの具にしておいしくいただきました。旬の山菜、最高でした!
さて、その後6月に入ると、今年の冬に6週間滞在して芝居の演出をしていた北海道のスタッフからグリーン、ホワイト、紫の立派な三色アスパラが届きました。
農家をやっていると聞いていましたが、出荷するほどの農園の方だったようです。生でも食べられると書いてあったので人生初の生のアスパラサラダを食べました。
明日には演劇関係の子たちがうちにやってくる予定なので天ぷらにして出そうと思っています。北海道へのお返しは「黒わらび餅」と決めています。向こうの人は食べないので送って舌をとろけさせてやるぞ!と思っています。ふふふ。

 送り、贈られ、大人のお付き合いは気も使いますが、発見もあります。特に野菜は市販では買えないものばかりだったので、料理の新しいレシピも増えて楽しめました。なにより「ああ、初夏だなぁ」という季節感を届けてくれた皆さんに感謝です!
【フキのめんつゆ漬け】
●こっちは少々面倒くさいですが、作ると女子力上がります!
(材料)
・フキ  スーパーなどで売っている切ったものワンパック
      (目安→20センチくらいのもの15~20本)
・粗塩  大さじ2杯くらい
・めんつゆ(ストレートのものでOK、割る場合は水1に対してめんつゆ3分の1の割合)
・タカの爪 市販の輪切りのもの少々

(作り方)
①フキは粗塩をかけ、まな板の上で1~2分板ずりして30分ほど置く
 (板ずり→手でゴロゴロと押し付けるように転げせばOK)
②お湯を沸かして、フキを投入!3分ほどゆで色が鮮やかになったら
 冷水に浸します。氷があったら氷水に。
③フキが冷めたら、包丁で端っこを引っかけて筋状の皮をむく
 (面倒くさいのはここ!)
④一口大に切って、めんつゆに漬ける。お好みでタカの爪を入れてもOK
【生アスパラのめんつゆ漬け】
●今回知った簡単で最強においしいアスパラの食べ方です!
(材料)
・アスパラ 3~4本
・めんつゆ(ストレートつゆならそのまま)
・塩   少々

(作り方)
①アスパラは塩をかけ、少しもみ5分ほど置く
②塩気を洗い水気を吹き、ひと口サイズの斜め切りにする。
③タッパやジップロックなどの入れ物にめんつゆを入れ、アスパラを投入!
④冷蔵庫で半日ほど寝かせれば食べられます。
わかぎ ゑふ(劇作家・演出家)大阪府出身。
関西小劇場界の老舗劇団、「リリパットアーミーII」2代目座長。
芝居制作処、玉造小劇店の代表。
大阪弁のオリジナル人情劇を数多く手掛けている。古典への造詣の深さも有名で
落語、歌舞伎、新作狂言の作、演出や衣裳デザインなども手掛ける。
小劇場から大劇場まで縦横無尽に活躍する数少ない女性演出家の一人。
エッセイも多数出版。2023年には大阪市民表彰を受賞した。
miyoka
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