食べてみよか

「見るからにボロネーゼ」わかぎゑふの料理コラム✨

2024.11.27

「見るからにボロネーゼ」わかぎゑふの料理コラム✨

ぷるぷるの国

 先日、生まれて初めて海外公演に行ってきました。劇団のメンバーと韓国に招待されたのです。と言っても小さな演劇祭のゲストなので、40分くらいの家族の会話劇を作って持って行っただけなので思い切り芝居できたかと聞かれると消化不良な部分もありましたが、それでも初体験だったので毎日がワクワクでした。
 日本では毎年、沖縄でリッカリッカフェスタという、子ども向けの芝居を中心にした世界フエスがあり、そこには3回ほど招待されて行っていたので、海外の人に芝居を見てもらう感覚には慣れてましたが、いざ行ってみると韓国の演劇事情はまた違いました。
 第一に韓国側のスタッフが全員、時間にルーズであること。これは沖縄でも同じようなことが多かったので全然心配もしませんでしたが、やっぱりかという思いはありました。朝の9時に劇場の前に集合と言われてゾロゾロ行ったのは日本人ばかり、韓国人のプロヂューサー、スタッフ、劇場関係者はそろって来ていない状況。仕方がないのでみんな劇場の前に座りこんで待つことに。そのうち近くのマクドナルドに1人行き、2人行き、とうとう最後には入れ替わりで全員が朝マックするという始末。
 そんな彼らなのに、来るとみんな礼儀正しくて、優しくて、もう最高に芝居好きな人たちばかり。こちらの上演が終わると劇場から出て行こうともせずに芝居の感想を喋りまくるという毎日でした。
 そしてプロデューサーのH氏が毎晩のように「今日はあの店に行こう」と全員で飲みに行くのも当たり前。その店に近所で飲んでいた他の演劇人が立ち寄って、あっという間に膨れ上がり、あいさつしまくり、酒を酌み交わしまくりという夜が続き「なんやこれ、今は祭りの時期か?」と思うほどだったのですが、日常茶飯事のようでした。ちょっと日本の90年代の小劇場ブームの頃を思い出して、懐かしくもなりました。
 毎晩、違う店に行ったわけですが、主となるメニューは豚料理。サンギョプサルや、豚足のおいしいお店、超柔らかいトンテキなど。それを大量の野菜で包んで食べる韓国スタイル。野菜とコラーゲンたっぷりの豚肉の日々。そりゃあお肌ぷるぷるになるよねと納得した4日間です。
 驚いたことに、毎夜の支払いはいつの間にか誰かが済ましてしまい、私たち日本側のメンバーはゲストだからとおごられて一回もお金を払いませんでした。ある日は別の芝居に出ていた25歳の韓国人俳優の男の子が、生まれて初めて主役を務めたのでと、私たちの分まで全部払ったとか。一緒に行った在日三世の友達に「毎日おごられてて、大丈夫なん?」と聞くと「これがこっちの流儀なんで、心配いりません」とのこと。そのへんは昭和な感じがまだまだ主流なんだなと文化の違いを実感しました。
 韓国は2000年代に入って国から演劇や音楽に手厚い助成金が出るようになり、一気に文化が開花して今に至ります。ご存じの方も多いように韓ドラや映画、K-POPの躍進ぶりはそのたまものです。小学校の授業にも演劇の時間があるとか。文化予算の少ない日本とは違い、うらやましい限りです。
 ところで、街中でご飯を食べても、宴会でも想像以上に辛い食べ物は出てきませんでした。韓国に行ったのは今回で5回目くらいですが、毎回行くごとに思うのは辛そうに見えるだけで実際にはマイルドな味のものが多いことです。豚だけでなく、鶏や魚を使った料理も多く、健康にもいい食べ物だらけです。そんな彼らはほとんど牛肉を食べません。
 というのも、やはり牛肉は高いので特別な日の食べ物だからだそうです。韓国人に言わせると「日本の焼き肉屋で食べる牛肉が最高」らしく、韓国では特別な日は焼き肉よりもステーキ屋に行くとか。これも見解の違いですね。
 初めての韓国公演で思ったのは、芝居はどの国に行っても変わりはないということ。人の機微を描けば、その国の事情と照らし合わせて、人間の在り方を受け取ってくれるのだと改めて思いました。
 そして韓国の俳優さんたちが思った以上に日本語を話すことに驚きました。あちらでは演劇は盛んだけれども、日本のように伝統芸能の文化が少なく、作るのは現代劇ばかりだそうで、日本の演劇界に憧れの念があるそうで、そのため日本語を勉強する人が多いのだそうです。知らないこととはいえありがたい話でした。
次は着物を着る芝居を持って行きたいものです。
 お肌だけでなく、気持ちもプルプルになった初韓国公演でした!

ボリュームたっぷり「ボロネーゼか?」と思うパスタ料理

【見るからにボロネーゼ~ちょっぴりダイエット】
 韓国人を見習って、今回は牛肉を使わないけど、ボリュームたっぷりの一見「ボロネーゼか?」と思うパスタ料理をご紹介します。食欲の秋から冬にかけて、ちょっぴりダイエットにもお役立てください。
(材料)
・エノキ1束
・シーチキン1缶
・市販のアラビアータ またはボイルドトマト缶
・パスタ
・オリーブオイル(少々)
・塩こしょう(少々)
・チキンブイヨン(適量)
・チューブのにんにく(適量)
・パセリ(お好みで)

(作り方)
①エノキ1束を1センチ幅くらいに切ります。
②シーチキン、1缶をボールに入れてエノキと混ぜ合わせます。
③ 市販のアラビアータ2人前。あるいはボイルドトマト缶半分をフライパンに入れて、オリーブオイル、塩、こしょう少々、チキンブイヨン適量、チューブのにんにく適量をフライパンに入れ②を混ぜて煮詰めます。
④パスタを硬めにゆでて③に入れて2分ほど絡めながら煮立てたら完成!
お好みでパセリなどを振ってください。
★エノキを使うととろみが出るので、一見するとお肉か?と思うようなボロネーゼもどきの完成です!
わかぎ ゑふ(劇作家・演出家)大阪府出身。
関西小劇場界の老舗劇団、「リリパットアーミーII」2代目座長。
芝居制作処、玉造小劇店の代表。
大阪弁のオリジナル人情劇を数多く手掛けている。古典への造詣の深さも有名で
落語、歌舞伎、新作狂言の作、演出や衣裳デザインなども手掛ける。
小劇場から大劇場まで縦横無尽に活躍する数少ない女性演出家の一人。
エッセイも多数出版。2023年には大阪市民表彰を受賞した。
miyoka
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