食べてみよか

「夏こそ体力~三度おいしいすき焼き」わかぎゑふの料理コラム✨

2024.08.01

「夏こそ体力~三度おいしいすき焼き」わかぎゑふの料理コラム✨

夏こそ体力~三度おいしいすき焼き

 うちの夫はグルメ番組が好きです。私もよく参考にしてます。テレビを見ながら「お、これおいしそう。今度作って」と言われることはしょっちゅうあるし、実際にレパートリーが広がるのでありがたいのはありがたい…のですが。
 なんせ食事時に見る番組が『吉田類の酒場放浪記』に『おんな酒場放浪記』それから『深夜食堂』と『孤独のグルメ』あとはアニメの『美味しんぼ』というラインナップです。カンテレの番組じゃなくて本当にすみません!
 それぞれに面白い番組ですし、参考にもなります。んが!私が作った夕食を食べながら毎日毎日そういう番組を見ては「おいしそう!」を連発するわけです。いや、いいんですよ。本当においしそうなんですから。
でもねぇ食事中に毎日はどうなんだ?と内心思っています。特に「美味しんぼ」を見てるときは、元俳優なので声優さんの声色の真似をしたりして実ににぎやかです。しかも同じ番組を何度も見るので、一緒に見てる私でさえ「あ、これそうめんの回やな」と分かってしまう時もあります。
 一応、彼の名誉のために言っておきますが私が作ったものにも同じように「うん、うまい!」とは言います。お世辞の言えない人なのでまずかったら「これは分からん。俺には合わんな」と、ちゃんと言う人です。
特に洋食系の凝ったものを作ると「おしゃれ過ぎて分からん、うちでは出さんとして」とかも言います。なので我が家の夕食は夫に合わせた和食が多いわけです。その反動で昼は自分の好きな洋食を作るんですが。
 夫の主張は「おいしい料理の番組を見ながら夕食を食べると、一緒に楽しんでる気になる」ということで、この癖は永遠に続くものと思われます。
 テレビを見てて「今度作って」から我が家の定番メニューになったものの一位は「ネギムンチ」、ネギを白髪切りにして水にさらし、ごま油と唐辛子の粉であえたシンプルな韓国風のサラダです。二位はこの連載の初回にご紹介した「ホタルイカのなめろう」でしょうか。三位は「深夜食堂」に出てくる豚汁。最近「やってみてほしい」と懇願されたのが、鮎(あゆ)を開いて塩をふり半日干しにした「鮎の開き」これは少々面倒くさいので休みの日限定ですが、確かに普通の塩焼きよりもうま味が増しておいしいです。
 で、今日ご紹介するのが栗山千明さん主演の『晩酌の流儀』という番組に出てきた、すき焼きです。不動産屋に勤める女性が、ビールとそれに合う料理をひたすら追求するドラマなのですが、レギュラーに知り合いの女優が出てて盛り上がり、定期的に見るようになりました。ちょっと凝った料理が多く、女性向なので我が家のメニューにはあまり参考になる料理は出てこなかったのですが、このすき焼きはハマりました。
 調理法は関東風の割り下を使うすき焼きです。普通は酒10、砂糖1、醤油1をブレンドしたタレでお肉から炒めますが、我が家は砂糖をほぼ使わないのでみりん1に対して、九州の甘い濃口醤油1をブレンドします。甘過ぎたら薄口醤油を足してください。
 ここからは我が家流ですが、焼き豆腐は最初から入れておきます。そしてお肉を入れて、後は野菜です。定番はネギと白菜、エノキなどですが、夏はセロリとネギ、菊菜の代わりにセロリの葉も使います。そして番組で見たトマトを投入!「すき焼きにトマトなぁ」と半信半疑でしたが、このトマトが煮崩れて、野菜に絡めて食べたらちょっとイタリアンな風味になって普通のすき焼きにプラスなお味に変身します。
 今まですき焼きは余ったら、次の日に肉うどんの具にして食べるのが定番でしたが、トマトを入れることでパスタにも合うようになり、三度おいしいすき焼きとなりました。
 おでんに丸ごとトマトを入れるというのも衝撃でしたが、すき焼きにトマトもなかなかのお味なので、ぜひやってみてください!ちなみにこのドラマでもやっていましたが、うちは卵に少しすだちを絞ります。柑橘系の絞り汁を少し入れることで卵の生臭さが取れて、さっぱりしますよ!
【すき焼きのレシピ】 ※2人前
≪材料≫
・牛肉(お好みなのでお好きなように)又は鶏肉。
・ネギ 1本(白い部分)
・セロリ 1本
・トマト 1個
・焼豆腐 1丁
・糸こんにゃく 200g
・お麩 10個くらい
・みりん、甘口の濃い口醤油、卵2個、すだち1個

≪作り方≫
①みりんと甘口の濃い口醤油は合わせておく。
②鍋の外回りに一口サイスに切った豆腐を並べて火を入れる。
③①のタレを少し入れて肉を焼き、味を調整する。
④野菜を入れ、炒め煮して、取り皿に生卵にすだちを絞って食す。
⑤糸こんにゃく、お麩は好みにもよりますが後で入れるほうが良いです。
 タレの味を吸うので濃くなりすぎるので。
わかぎ ゑふ(劇作家・演出家)大阪府出身。
関西小劇場界の老舗劇団、「リリパットアーミーII」2代目座長。
芝居制作処、玉造小劇店の代表。
大阪弁のオリジナル人情劇を数多く手掛けている。古典への造詣の深さも有名で
落語、歌舞伎、新作狂言の作、演出や衣裳デザインなども手掛ける。
小劇場から大劇場まで縦横無尽に活躍する数少ない女性演出家の一人。
エッセイも多数出版。2023年には大阪市民表彰を受賞した。
miyoka
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