食べてみよか

神戸のソース専門店「ユリヤ」が語る関西のソース愛&活用法

2025.04.26

神戸のソース専門店「ユリヤ」が語る関西のソース愛&活用法
家の冷蔵庫に、ソースは何本入っていますか?

“粉もん”が愛されている関西では、「お好み焼きには○○ソース」と決めていたり、焼きそばにお好み焼きソースは使わないという人も多くいます。ちなみに我が家には現在、お好み焼き・焼きそば・ウスターの3種類のソースが冷蔵庫にスタンバイしています。

なかには、ソースメーカーまでこだわっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

神戸のソース専門店「ユリヤ」【4/15 撮影】

ソース専門店「ユリヤ」(神戸市長田区)には、約20メーカー、サイズ違いも合わせると約180種類のソースがずらりとならんでいます。そこにやってくるお客さんは、かなりの割合で何の迷いもなく決めているメーカーの1升サイズ(1,800ml)のソースを手にレジに向かいます。

驚いて見ていると、店主の中島吉隆さんが、「やっぱり地元の『ばらソース』の指名買いが多いですね。特に長田区はお好み焼き屋さんの数が、面積のわりに多いと言われていて、皆さんようさんソース使ってはるから」と日常の風景だと笑います。

同店は昔からソース専門店だったわけではありません(今も酒屋さんです)。阪神淡路大震災で大きな被害があった長田からほかの地域に避難した人たちに「移り住んだ場所には欲しいソースがないんや。置いてたやろ?送ってくれ」と頼まれて、地元のソースを送っているうちに今の状態になりました。

「ユリヤ」の店頭【4/15 撮影】

また震災で閉業したソースメーカーのソースを「家のソースが全部なくなってしまってなぁ。あれやないとあかんねん」と探しにきた人もいたそうです。「みなさん育ってきた味に、それだけこだわりがあるってことなんでしょうね」と中島さん。現在は、地元神戸を中心に、大阪、京都、岡山などのソースを扱っています。

そんな中島さんの家にはソースが常に15種類ほど開いていて、味見を兼ねてせっせと使っているそう。店頭のいろいろなソースを見ていたら楽しくなってきて、メーカーの違いやソースの使い方を教えてもらいました。

ばらソース(串カツ)、日の出ソース(ウスター)、敬七郎(ウスター)、ウスターブラザーソース、プリンセスソース(ウスター)、ニッポンソース(ウスター)【4/15 撮影】

−普段、ソースはどのようにして使っているのですか?

たとえばお好み焼きのときは、ソースをならべて「どれで食べる?」みたいな。今日はこっちの「どろ」でいこうとか、ミックスしたり、1本でいこうというときもあります。

−「どろ」ソースは辛いのですよね。

どろソースはウスターソースを作るときに、溶けきらなくて底に溜まったスパイスや野菜のうまみを熟成させたものなんです。だからうまみもあるけど、スパイスの辛さがあって。甘いソースのあとにどろをちょっとかけて、自分の好みの辛さにして食べる習慣があるんですよ。実は「どろ」は、オリバーさんが商標登録していて、ほかのメーカーさんは別の名前を使っています。

プリンセスソース、オリバー、ブラザー、ニッポンソースが販売している“どろソース”【4/15 撮影】

−だからほかのメーカーさんは「どろからソース」とか「旨辛どろ」という名前なんですね。知りませんでした。

密かに、シャバシャバしているどろの上澄みだけで焼きそばを焼いてもおいしいんです。

あとは、冷やしトマトにソースが合うんですよ。青臭さが消えるんで、トマトが苦手な人でも、子どもでも食べられました。ウスターでもとんかつソースでもいいです。

−トマトにかけたことなかったです。いろいろな使い方があるんですね。

豚まんとかしゅうまい、キャベツには日常的にかけます。あとは目玉焼きとか。「阪神ソース」創業者・安井敬七郎氏の明治時代のレシピからつくられたウスターソース『敬七郎』は上品で、目玉焼きが高級になりますよ。

ほかにおいしくてよく作るのが、手羽先の炒め煮ですね。油を入れたフライパンでガーリックの香りを出して、手羽先をカリッと焼いて、ウスターソースをチャーっと浸るくらいたっぷりかけます。ふたをして火を通せば完成です。思ったより濃くならない。子どもも食べるし、お酒にもあうから大人も喜びます。

ニッポンソースのウスターソースで作った手羽先の炒め煮

−そんな使い方も! 神戸とほかの地域のソースの違いはありますか?

神戸のソースは基本的に甘め、でも、スパイスがきちっときいているのが多いです。大阪は甘めで酸味も穏やかだったりする。京都は京都らしいというか、はんなりじゃないけど。だしを入れているものもあります。

地域性があって、子どもの時からその味で育ってきたというのがあると思うんですが、神戸の人はスパイスが効いたものがいいという人が多いから、ばらソースが人気になってくるのかなと思います。ばらソースさんは酸味もスパイスも強いのが特徴で、甘口って書いてあっても他と比較したら実はそんなに甘くないです。

「ユリヤ」の店内に陳列された無数のソース【4/15 撮影】

−「ばらソース」さん以外で、あんまり知られていないけど、中島さんが推したい地元のメーカーさんもありますか?

ニッポンソースさんやプリンセスさんですね。どちらも後継者がいなくて、ひとりとかふたりでやっていて、いつなくなるかみたいな状態です。だから後継者が現れるくらい、もうかると言ったら違うかもしれませんが、回るように応援したい。ソースは神戸発祥と言われているから、どこも終わらせたくないと思っています。

神戸のメーカーが作るソースたち【4/15 撮影】

すっかりソースに魅了された筆者は、味比べように5本を購入。さっそく手羽先の炒め煮も作ってみました。味付けはソースだけで決まって簡単! 家族にも好評だったのでまた作ろうと思っています。味比べも楽しくて、ソース沼にハマりそうです。

公式HP:https://www.yuriya.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/yuriya_kobe/
文:太田浩子
「美味しい」&「楽しい」関西の魅力をご案内。プライベートでは和菓子にハマっています。
miyoka
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