カンテレとラジオ大阪が主催する『第60回上方漫才大賞』が2025年4月12日、オリックス劇場(大阪)で開催され、大賞を銀シャリ(鰻和弘さん、橋本直さん)、奨励賞をヘンダーソン(子安裕樹さん、中村フーさん)、新人賞を豪快キャプテン(べーやんさん、山下ギャンブルゴリラさん)が受賞しました。
「カミマン」の略称で知られる同賞は、上方(大阪)でもっとも長い歴史を持つお笑いの賞レースで、年間を通じて寄席、放送、舞台などで活躍した芸人たちを候補者として選出。大賞は事前選考で決定され、開催当日に受賞者を発表。
奨励賞は大賞受賞経験がない漫才師5組、新人賞は結成10年目までの漫才師7組が開催当日にネタを披露し、審査員、視聴者投票(カミマン投票)で受賞者が決まるものです。
新人賞の豪快キャプテンは「おでん」を題材とするネタで、『M-1グランプリ2024』準優勝のバッテリィズらを撃破。受賞の瞬間、山下さんは「僕らみたいなもんは、賞は獲れないと思っていました」、べーやんさんも「全然、人気もないのに」と驚きが隠せない様子でした。
本番終了後の会見で山下さんは「ジョックロック、バッテリィズが『M-1』で結果を出して頑張っていたので、僕たちもこれを機に漫才の賞とか、『M-1』とかもっと成果を出せるように頑張ります」と意気込みつつ、べーやんさんが「NGK(なんばグランド花月)に出てもウケる漫才師になりたいです。前、とんでもなくスベったんで」と言えば、山下さんも「この前、(よしもと漫才劇場でのバトルライブでは)7位だったんで」とまだまだ満足できる結果ではないと話しました。
奨励賞のヘンダーソンは「ぼったくりバー」のネタで爆笑を巻き起こし、マユリカ、天才ピアニスト、カベポスター、ダブルヒガシという強豪に勝利。二人とも舞台上で涙を流しながらも、子安さんは「立派な表彰状をいただいたんですけど、えんぴつでヘンダーソン(と書いている)」と言えば、中村さんは、司会者の太平サブローさん(太平サブロー・シロー)から「(2023年、2024年は奨励賞を逃し)歯を食いしばって帰るわけやんか」と労われても「そんなことなかったです…」と口にするなどして笑わせました。
本番後の会見で中村さんは「3年前まで『漫才を諦めよか』とコントを作り出して、さまよっていた時期があったので。『漫才をちゃんとしたいな』と、もともと僕がボケ、相方がツッコミでしたがフルモデルチェンジして今の形を見つけたんで」とコンビの転機について触れ、「今日、(自分たちの力を)試せるというワクワク感がありました」と自信を持って臨んだそう。
ちなみに2024年に立った舞台の数は822本。子安さんは「(漫才は)生活の一部。生活を続けていくためにはなにか更新していかないと(舞台に)呼んでもらえなくなるというのが、東京へ行ってより思ったので。奨励賞というデカいものを獲れて本当に良かったです」とホッとした表情を浮かべました。
大賞の銀シャリは、数日前に受賞が知らされてからも開催当日まで口外できなかったことが大変だったようです。鰻さんは「昨日、散髪に行ったんです。ただ今日、NGKの出番があったとき、テンダラーの浜本(広晃)さんに『お前、大賞やろ?』と言われました。なんで散髪に行ってんねん、と」と見透かされたことを振り返りました。
そんな銀シャリのお祝いに駆けつけたのが、大賞を2度受賞(2014年、2024年)している笑い飯の西田幸治さん、哲夫さん。橋本さんは「(自分たちの)若手のときに劇場のトップにいたのが笑い飯さん」「(笑い飯の)遺伝子が入っています」と憧れの先輩のからの祝福を喜びました。
西田さんは以前より、橋本さんから「『上方漫才大賞』の大賞をどうやったら獲れるのか」と相談を受けていたそうで、「『大丈夫、銀シャリは獲れるから』と言っていたのに、去年(2024年)、僕らが獲ってめちゃくちゃ気まずかった」と苦笑い。哲夫さんも「(NGKで)銀シャリが鬼みたいな顔をして(テレビを)見てたって、社員さんが」と悔しがっていたエピソードを明かしました。
記者会見で橋本さんは「内に秘めるタイプだったんですけど、(大賞を)獲りたいという魂を出していかないといけないなって。4年くらい前から自分たちの中で『獲りたい』と言い出して。でも、2年くらい前から人にも言い出して。夢は口に出していっていかないと実現しないんで」とし、「歴史に名を刻めたくらいの気持ち」と悲願の受賞に感無量。
一方、小型飛行機セスナの免許取得中の鰻さんは、その費用が960万円以上かかっているということで「単純に賞金(200万円)がめちゃくちゃうれしいです。ほんまにこのタイミングで良かった」と言葉にも自然と力がこもり、「また大賞が獲れるようなことがあったら、セスナで来たいなと思います。八尾空港から。また2年後くらいですけど、免許が取れるのは」と2度目の受賞の際にはセスナでの会場入りを宣言しました。
そして最後に橋本さんは「『上方漫才大賞』を獲った漫才師は、それだけすごいんだぞと思われるように(5月から始まる)全国ツアーをやりたい。先輩にも後輩にも常に見られている環境なので、ゆるめる瞬間はないと思う。しっかり漫才をやり続けて、今の漫才をさらにクオリティを高くしたい」と進化を約束しました。
ついに最高の栄誉を手にした橋本さんは「ここから新たなスタートだと思って」、鰻さんは「来年(の大賞)もまたよろしくお願いします、図々しいですけど」とさらなる飛躍を誓いました。
取材・文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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