『あなたを奪ったその日から』第2話 レビュー(Xの反応)
『
あなたを奪ったその日から』第1話で、娘が死亡する原因となった食品事故を起こした結城旭(大森南朋)の娘・結城萌子(倉田瑛茉)をひょんなことから誘拐してしまった主人公・中越紘海(北川景子)。第2話では、紘海と萌子の擬似親子生活と、萌子を懸命に捜索する結城を通して結城家の実態が描かれました。
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第1話では、萌子の首を締めて殺そうとするなど、結城への憎しみが全面に出ていた紘海。第2話では、萌子を前に憎しみだけを出すことはできない、あらがえない母性が溢れてしまうシーンがたくさんありましたね。隣人から渡されたどら焼きを萌子に食べさせたり、萌子のために買ってきた食べ物はアレルギー対応のものだったり。憎い相手の子どもとしてではなく、守るべき3歳の幼い子どもとして萌子に接する姿が印象的でした。
特に萌子に「お母さん、ぎゅっとしていい?」と聞かれる場面。亡くなった娘・灯(石原朱馬)とのやりとりを思い出して、表情を歪める紘海に胸が締め付けられました。このシーンは、萌子も生まれた時から母親がおらず、寂しい思いをしているという事情もあり、紘海と萌子がそれぞれに抱えている悲しみが交差し、互いに心の隙間を埋める場面になっていました。
涙を流し、正面から萌子を抱きしめようとする紘海。そこで、萌子が熱を出していることに気づきます。紘海は急いで夜間診療へ。第1話でも描かれましたが、灯のために使っていたであろうチャイルドシートに萌子を乗せているのがなんとも切ない。二人は親切な医師に迎え入れられますが、紘海は萌子の保険証を持っていません。紘海は改めて、萌子との擬似親子生活が簡単でないことを自覚します。
とはいえ、正直紘海と萌子の擬似親子生活が穏やかなものであることも事実。スーパーに買い出しへ行った時には、大きなツバの帽子を被り、笑顔でマサバや海苔の佃煮、イカの塩辛を紘海のところに持ってくる萌子の姿に癒されてしまいました。それを受け取りながら、笑顔で「渋好みなんだ」と返す紘海の笑顔にもほっこり。道を歩きながら、「ミッション発生」という紘海に「ラジャー」とツバを下げて顔を隠す萌子もなんともかわいらしい。互いの辛い過去を埋めるようにコミュニケーションを取っていく二人はいい親子になれるのではないかとさえ思ってしまいました。サバみそや筑前煮を作り、サバをほぐして萌子に食べさせる紘海。穏やかな時間からは、愛情溢れる紘海の本当の姿が感じられました。
一方で、萌子を探す結城や萌子の姉・梨々子(平祐奈)の様子は不穏。萌子を必死に捜索する結城は、梨々子の家庭教師・玖村(阿部亮平)からの目撃証言を頼りに、元妻・木戸江身子(鶴田真由)と記者の東砂羽(仁村紗和)に疑いをかけます。結城が元妻の居場所を知っていたことに驚き。萌子があれだけ母を求めているのだから、会わせてあげればいいのに……。
すでに高校生の梨々子は、結城の態度が保身に走っているように見えるのでしょう。声を荒げて、結城を責め立てても、結城に響かない様子に憤っている様子。そのストレスが、玖村を誘惑したり、あることないこと告げ口したりすることにつながっているのでしょうか。父親から心配して欲しいという思いが空回りしていることに苦しくなります。
擬似親子生活はうまくいくわけがないと自覚した紘海は、萌子を結城の自宅へ帰らせようと交番の前まで連れていきます。しかし、母からの愛を初めて知った萌子は、紘海を失う寂しさを実感してしまいます。「悪い子だから捨てるの?」なんて言われたら、置いて行くことなんてできない……。結城への憎しみではなく萌子へのいとおしさから、紘海は萌子を抱きしめ家に連れ帰ります。
その頃、紘海が川べりに捨てた萌子のジャンバーと靴が川の河口で発見され、結城の頭には、梨々子が発した「因果応報」という言葉がよぎります。そんなことが起きてたまるかと口にする結城。食品事故との関連を語る記者に対し、結城は「1年前の事件とはなんのことですか?」と返します。それをテレビで目にする紘海。テレビで結城のその言葉を聞いた紘海の顔に、再び憎しみの感情が。紘海は萌子を育てることを決心し、中越美海という名前を授けますが、その表情はにこやかなのに目が笑っていない。北川さんの狂気じみた表情にゾクっとしてしまいました……!
紘海と萌子の擬似親子なのに愛に溢れた様子と、結城と梨々子の実の親子なのにすれ違っている様子の対比が印象的な第2話でした。紘海は明らかに犯罪を犯していますが、萌子が語る結城家の歪さを踏まえれば、紘海を応援したい気持ちになってしまいます。
放送直後のX(旧Twitter)では、「萌子と共に暮らしたことで、紘海が明るくなっていることが分かる。一方、結城家は荒れてる」という意見が。2つの家族の対比を感じる演出が印象的な回でした。梨々子から濡れ衣を着せられた玖村のゆくえを心配する声もありました。
気になったのは、砂羽が語った食品事故の内容。結城の店にはエビのストックは無く、立ち入り検査でもエビは見つからなかった。砂羽は結城による隠蔽を疑っているようですが、結城がだれかに陥れられた可能性もあるでしょう。紘海と萌子の擬似親子生活のゆくえだけでなく、食品事故の真相も気になるところ。次回の放送も楽しみです!
取材・文:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
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