生徒の孤独に寄り添った柏原実央(生見愛瑠)。ドラマ『GTO』第8話で重なった、教師と生徒それぞれの「必要とされたい」という思い

生徒の孤独に寄り添った柏原実央(生見愛瑠)。ドラマ『GTO』第8話で重なった、教師と生徒それぞれの「必要とされたい」という思い
いよいよ終盤戦に突入したドラマ『GTO』(毎週月曜 午後10:00~/カンテレ・フジテレビ系全国ネット)。その第8話が9月7日に放送されました。
第7話では、サッカー部特待生でゴールキーパーとして期待を集める細川大翔(西浦心乃助(The Right Light))が大ケガを負ったことで、担任の鬼塚英吉(反町隆史)や顧問の小泉望都子(高橋メアリージュン)の責任が問われることに。そんな中、大翔は元プロサッカー選手である父親・藤吾(波岡一喜)に言われるままの生き方ではなく、自分で道を切り開くことを決意。鬼塚、小泉の後押しもあり、改めてサッカー部の一員として再出発します。

少しずつ生徒たちの信頼を得ていく鬼塚ですが、第8話では、体調を崩して欠勤。そこで副担任の柏原実央(生見愛瑠)が臨時担任を務めることになります。一方、柏原は転職を考えていたため、何度も退職願を提出しようとしますが、生徒たちが抱える問題を次々目の当たりにしたことで思うように話が進みません。さらに柏原は、クラスの生徒・石橋心愛(北里琉)が“パパ活”をやろうとしていることに気づき…。
『GTO』第8話 反町隆史、北里琉

『GTO』第8話 反町隆史、北里琉

SNSの時代、自分に向けられる関心が可視化されるように

第8話冒頭、夏風邪をひいた鬼塚は「自分が生徒たちにどれだけ愛されているか知りたい」という理由で、柏原を通して生徒たちに「重い病気で余命わずか」とウソをつきます。さらに鬼塚は、「自分の葬式に来た人はどんなことを言うのか知りたいのと一緒で、どうしても気になって」となぜそのようなウソをついたのかを柏原に明かします。
『GTO』第8話 反町隆史

『GTO』第8話 反町隆史

ただ、そういうことを一度は考えた経験がある人も多いのではないでしょうか。自分がこの世からいなくなったら、悲しんでくれる人はいるのだろうか。そうなったとき、みんなはどんなことを言うのか。中には、それほど親しくない人まで「仲が良かった」と言うかもしれません。自分がこの世から去ったときのSNS上の反応も、たしかに気になります。

それにしてもなぜ、私たちはそんなことを妄想するのか。その理由の一つとして、自分がどれだけの人に求められているのかという不安があるからではないでしょうか。
『GTO』第8話 北里琉

『GTO』第8話 北里琉

SNSが中心の時代になり、いいねの数など自分に向けられる関心や評価が数字として可視化されるようになりました。フォロワーを多数獲得することや、バズることで自分が満たされる場合もあります。さらに生活や発言、身につけるものなどが支持されるインフルエンサーと呼ばれる立場が“憧れの職業”にもなりました。そうした風潮によって、自分が人や社会から求められている人間なのかどうかを、以前より気にするようになったのではないでしょうか。

たとえばSNSで自分の日常を発信しても、誰もコメントやいいねを付けてくれない――。そんなことが続くと、「誰も自分に興味を持っていないんだな」と疎外感を持つかもしれません。誰もリアクションしてくれないのに投稿していることが、なんだか虚しくなりますよね。そんなとき、見た目が良かったり、特技や才能を発揮したりして、大勢から認められている人を見ると、「自分もあんな風に生まれたかった」と羨む気持ちが生まれることも不思議ではありません。
『GTO』第8話 生見愛瑠、北里琉

『GTO』第8話 生見愛瑠、北里琉

『GTO』は副担任・柏原の変化を描いた作品でもある

1年B組の生徒・石橋心愛もまさにその一人と言えるでしょう。彼女は、自分の見た目や生まれ育った環境に劣等感を抱えています。周りは彼女の見た目を褒めますが、心愛自身が自分に納得できていないのです。

背景には、自己肯定感の低さがあるのではないでしょうか。パパ活をしようとしていたことが同級生にバレて、学校を無断欠席したときも、心配して自宅へやってきた柏原に対し「家族もあんなノンキな顔してるし、クラスメートの誰からも連絡来ないの」と嘆きます。それはまさに、自分は誰からも求められていないと考える、心愛なりの苦しみが描かれていました。彼女の言葉は、単に“若者の承認欲求”として片付けられず、誰しもが心当たりがあったり、自分との近さを感じたりしたのではないでしょうか。

一方で、鬼塚から心配のメールが届くと「そんなの仕事だからじゃない?」と素直に受け入れることをしません。前述したように自己肯定感の低さがそうさせているのかもしれませんし、本当に声をかけて欲しい相手や言葉ではないのかもしれません。誰にも求められていないと感じてしまう根底には、「こういう人から、こういう形で認められたい」という自分自身の理想の高さも影響していると考えられます。

柏原もそうです。心愛から見れば、柏原はまさに自分が羨む側にいる人物かもしれません。誰もが認めるような容姿を持っていますが、当然、柏原自身も悩みを抱えています。柏原は、鬼塚と出会うまでは教師という仕事にやりがいを感じていませんでした。その要因の一つには、自分が周囲から何も期待されていないという感覚もあったのではないでしょうか。彼女自身、そういう現実を淡々と受け止めていました。
『GTO』第8話 北里琉

『GTO』第8話 北里琉

しかし鬼塚は、学校やクラスには柏原が必要だとはっきり言います。最初はそうした鬼塚の評価に戸惑い、素直に向き合うことができませんでした。しかし、鬼塚と共に生徒が抱える問題を一つひとつ乗り越えるうちに、自分が誰かに求められている実感を得ることができているのではないでしょうか。

第1話と第8話では、柏原の表情や振る舞い方が明らかに変わっています。その変化を、1話ごとに表情や振る舞いの違いで見せている生見愛瑠さんの演技も印象的です。第8話の終盤では、心愛だけではなく柏原の成長も感じられます。『GTO』は鬼塚と生徒たちの物語であると共に、柏原という一人の社会人の変化を描いた作品であるとも言えるのではないでしょうか。
『GTO』第8話 生見愛瑠、北里琉、反町隆史

『GTO』第8話 生見愛瑠、北里琉、反町隆史

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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