味方良介「すべての罵声を浴びる立場でいたい」『小麦とバターと復讐と』で演じる最低な夫と、選択を後悔しない覚悟

味方良介「すべての罵声を浴びる立場でいたい」『小麦とバターと復讐と』で演じる最低な夫と、選択を後悔しない覚悟
10月7日にスタートした、カンテレ・フジテレビ系全国ネットの連続ドラマ枠・水ドラ★イレブン『小麦とバターと復讐(ふくしゅう)と』(毎週水曜よる11時放送)。同作は、夫と自分の助手に裏切られ、命を落としたパン職人・野崎ミチル(伊原六花)が2年前にタイムリープし、過去をやり直しながら奪われた人生と本当の幸せを取り戻していく痛快リベンジ・エンターテインメントです。今回は、ミチルを裏切り不倫に走る夫・賢人を演じている味方良介さんに、役作りへのこだわりや作品のテーマにちなんだ自身の人生観について話を聞きました。
――味方さんが今回、演じる賢人は第1話から憎らしい面を前面に見せてくれますね。
今は、さまざまな面で善人のイメージが求められる時代です。ただ、そうした風潮に息苦しさを感じる方も多いのではないでしょうか。気をつけなければいけないことや、細かなルールも増えました。だからこそ、ドラマの中では役を通して、それらを度外視して振る舞えることが非常におもしろいです。みんなが二択で選ばないほうを迷わず選んでいける。それが賢人という役の魅力です。極端な言い方をすれば、何でもできる。嫌われることを恐れる必要もなければ、自制心を働かせる必要もありません。

『小麦とバターと復讐と』1話

――実際に第1話の賢人を見て「うわっ、何てひどい男なんだ…」と感じた視聴者も多かったはず。
そう受け取ってもらえることが、この作品における賢人の役割だと感じています。視聴者のみなさんが、ミチルに「そんな男、早く捨てなよ」と言いたくなるような(笑)。すべての罵声を浴びる立場でいたいです。
――ただ第1話終盤では、タイムリープしてきたミチルから本性をすべて見透かされていることもあって、滑稽に映るところもあります。
賢人はやっていることは最低なのですが、単純に「すっげえ悪いやつ!」という印象になっていなければ嬉しいです。僕自身は、「こいつは真っすぐなバカだな」という感覚で捉えています。欲望に対して純粋すぎて、「自分がそうしたいから、そうする」という人間です。後先を考えずに行動するからこそ、結果として何らかの罰が当たる。世の中にも、こういうタイプの人は少なからずいるかもしれません。そこがどこか愛らしくもあり、そのズレた感覚が滑稽にも映るのではないでしょうか。
――この作品では、ミチルらが様々な“選択”に迫られます。賢人にもそういう場面は訪れるのでしょうか。
賢人が、突きつけられた現実をどう受け止めるか、という場面があります。また彼は、自分の過ちを誰かのせいにしてしまうところがあるのですが、伊能優吾(七五三掛龍也)と対峙(たいじ)したりする中で、自分自身と向き合うことにもなります。

『小麦とバターと復讐と』2話

――味方さんご自身は、これまで人生で何かの選択に迫られて、その結果に後悔をしたことなどはありますか。
僕は何かを選択するとき、自分なりの覚悟と意思を持つようにしています。だからこそ、その結果を後悔したくありません。後悔することは自分自身を裏切ることにもなりますし、期待してくれた周りの人たちを裏切ることにもつながります。もちろん、自分の選択を反省することはあります。ただ、そのときの自分にとっては最善の選択だったと受け止めるようにしています。「まあ、いいじゃん。後悔してもしょうがない」と。どんな結果であっても、そこから次に進み、経験を生かして、より良くしていく。その積み重ねを大切にしています。
――これまでで、味方さんがもっとも頭を悩ませた“選択”はありましたか。
ずっと舞台を中心に活動してきたので、映像作品に参加するときには、ある種の葛藤がありました。「僕は舞台でまだ何も成し遂げていないのに、新たなフィールドに進んでいいのか」「映像作品に参加することで、自分は舞台俳優ではなくなってしまうのではないか」という気持ちがありました。出るか、出ないか。悩みましたが、最終的には「映像にチャレンジしてみよう」と覚悟を決めて飛び込みました。
――この作品は、ミチルが幸せを選び取ることで、賢人たちを見返していく姿が痛快に描かれています。味方さんは「見返したい」と思ったことはありますか。
この仕事を始める前から俳優になることを目標にしていたのですが、周りから「そんなの無理だ」とよく言われていました。確かに俳優を仕事にすることは簡単なことではありませんし、「絶対無理」と言う人の気持ちも理解できます。それでも、当時僕の夢を否定していた人たちのことは、いつか見返してやりたいです。だからこそ、長く仕事を続けて、いろいろな作品に出演し、「君たちが無理と言っていたことを、ちゃんとやっているぞ」と胸を張りたいです。今は俳優としてまだまだですが、何年かかってでも、その姿を見せたい。いつか「味方さんがこうなること、分かっていたよ。すごいじゃん!」と、手のひらを返して歩み寄ってくるくらいまで頑張りたいです。
――『小麦とバターと復讐と』の賢人は、味方さんにとってこれまであまり演じてこなかったタイプの役でもありますね。賢人役が、俳優としての新たなイメージにつながる可能性もありそうです。
こういう役を演じる機会はなかなかなかったので、「味方にはこういう幅もあるんだ、こんな役もできるのか」ということを知ってもらえたらうれしいです。ただ、僕の一番の望みはこのドラマの作り手の方たちの存在が広く知られることです。その中で、作品をより楽しんでもらうための選択肢の一つとして、僕のことも加えてもらえたらありがたいです。そして「ゲスな男性の役だったら、やっぱり味方良介だよね」と印象付けることができれば、今後の自分の俳優生活にもつながっていくはずです。

『小麦とバターと復讐と』5話

文:田辺ユウキ
芸能ライター。大阪を拠点に全国のメディアへ寄稿。お笑い、音楽、映画、舞台など芸能全般の取材や分析の記事を執筆している。
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