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鈴木(中島)はなぜ殺された?明かされた貝沼(國村)の正体

2025.02.03

鈴木(中島)はなぜ殺された?明かされた貝沼(國村)の正体

『秘密~THE TOP SECRET~』第2話 レビュー

「罪はお前1人で負うべきものじゃないだろ?」「どこまでもお前について行くよ、薪」と、いつも薪(板垣李光人)を一番近くで支え続けた最高のバディ・鈴木(中島裕翔)が、まさか2話にしてあんな最期を迎えることになるなんて……。

三好雪子(門脇麦)

第九の事件捜査の要である、MRI特殊技術を開発した脳科学者・貝沼(國村隼)。1話では薪の良き理解者であり、頼もしい味方のように見えましたが、なんの前触れもなく自らの頸動脈を切り裂き自殺してしまいます。首元から勢いよく吹き出す鮮血、國村隼さんの穏やかながらゾクゾクした何かを感じさせる表情……すべての演出が衝撃的すぎて、「これを放送していいの?!」と、思わず目を覆いたくなってしまいました……!

「脳を第九のために役立ててほしい。ただし、映像を見るのは薪以外の人で」それが、貝沼の遺言でした。そのため、薪以外の鈴木をはじめとする第九の捜査員4名で貝沼の脳の映像捜査を担当することに。貝沼の葬儀に参列後、捜査室に足を運んだ薪は、突然の発砲音と意識不明状態の鈴木、そして正気を失い変わり果てた捜査員3名の姿を目の当たりにするのです。

鈴木たちが知ってしまった、恐ろしい秘密。それは、権威ある脳科学者であるはずの貝沼が、28人もの人を惨殺した殺人鬼であったという驚愕(きょうがく)の事実だったのです。

MRIで具現化される映像に、音声はありません。そのため状況を理解するには、映し出される人物の口元の動きから発言を読む“読唇術”が重要になります。鈴木は、映像に映る貝沼の口元から、「これは、薪剛くんへのプレゼントだ」と読み解いていました。28人もの猟奇的な殺人映像を薪にプレゼントするなんて、怖すぎる……そんな映像を見て、心身錯乱(さくらん)状態になるのも無理はありませんよね。

銃口を向けあう鈴木と薪の対面シーン。「もう、誰にもこんな画が見られないように」そう切々と訴える鈴木を、薪は……。これが「かつてないほど“切ないバディ”」の由来だったのですね。貝沼の恐ろしい秘密を、相棒である薪に見せるわけにはいかないと、自らを犠牲にしようとした鈴木。悲鳴にも近い薪の叫び声が轟(とどろ)いて……あまりにつらく悲しい現実に、胸が締め付けられました。

薪剛(板垣李光人)、三好雪子(門脇麦)

1ヶ月後。コンビニエンスストアの従業員だった小島郁子(池脇千鶴)が同僚を刺殺する事件が発生し、現場検証にあたっていた捜査一課の岡部(高橋努)は、警視総監から突如第九への異動を命じられます。その裏には、貝沼の一件で同僚を撃ち殺すという重大問題を起こした薪を失墜させ、警視庁が第九を乗っ取る思惑が。現場に足を運ばずに捜査を進める第九のやり方に反感を抱いていた岡部は、初めて見る脳内の映像に呆気に取られます。

本来明かされるはずのなかった死者の記憶をやみくもにのぞき見ることに、抵抗感を表す岡部。しかし脳内の記憶は、死者の主観的な記憶や思い込みが反映されていることもあり、客観性を持った捜査のためには、複数の映像検証が必要なのだと、薪は断言します。映し出される映像が、必ずしも真実であるとは限らない。本来見えないはずのものが見えてしまう分、より正確な判断のために多くの記憶と向き合わざるを得ないのが、第九の宿命なのです。

小島郁子(池脇千鶴)

鈴木の幻影に怯(おび)え、混乱する薪は、見ていて苦しくなるほどでした。少年のようにかれんで、かつ憂いを帯びた板垣さんの演技がすごすぎて……最愛の友を自ら手にかけるという恐ろしいトラウマから、どうしたら報われるというのでしょう。

情に厚い岡部は、そんな弱った薪の姿を見て、薪や第九の捜査方法へ理解を示していくようになります。組織としては歪(いびつ)な関係にある捜査一課と第九ですが、協力し合えば真相究明への大きな一歩に。MRI捜査にも積極的に取り組むようになった岡部の姿を見て、心なしか薪も頼もしく感じているように見えました。

“脳内の記憶は、死者の主観的な記憶や思い込みが反映されていることもある”。郁子が事件を起こした背景には、自らの見ていたい世界から思いもよらぬ形で現実に引き戻されてしまった悲劇がありました。すでに自死したはずの娘が微笑んでいるのを穏やかに見つめる郁子の父。結局人は誰もがそのままの現実を見つめておらず、自分の望む世界で、自分が見たいものだけを見てしまう生き物なのかもしれないと感じました。

薪剛(板垣李光人)、曽我育秀(濱津隆之)、岡部靖文(高橋努)、小池穂高(阿佐辰美)

次週は、いよいよ新人捜査員・青木(中島裕翔)が第九に登場!かつての相棒・鈴木の面影を感じさせる存在との出会いに、薪の心はどのように動いていくのでしょうか?
文・神田 佳恵
フリーライター 兼 一児の母。
取材・インタビュー、エンタメ記事、エッセイなど、複数媒体・分野で執筆中。
miyoka
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