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娘を亡くした紘海(北川景子)、萌子(倉田瑛茉)誘拐の理由

2025.04.21

娘を亡くした紘海(北川景子)、萌子(倉田瑛茉)誘拐の理由

『あなたを奪ったその日から』第1話 レビュー

ある食品事故をきっかけに巻き起こるヒューマンサスペンスドラマ『あなたを奪ったその日から』。第1話では、主人公・紘海(北川景子)が、娘を失い、失意のどん底に落とされるきっかけとなった食品混入事故と、紘海が起こしてしまったある行動が描かれました。

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事件の始まりは1年前。紘海は保育園の調理師として働きながら、3歳になる娘・皆川灯(石原朱馬)、夫・景吾(高橋光臣)と共に楽しい生活を送っていました。たまに調理室まで訪れる灯の「お母さん」と呼ぶ声が何よりもの癒し。「保育園では先生でしょ?」と言いながら、灯が母を求める声うれしくて仕方がない様子。紘海の母性の強さを感じさせるワンシーンでした。

皆川灯(石原朱馬)、中越紘海(北川景子)

事件が起きてしまったのは、灯の3歳の誕生日。「YUKI デリ」という惣菜店で買い物する紘海と灯は、甲殻類アレルギーを持つ灯のために、アレルギー表示をしっかりとチェックし、ピザを購入します。紘海が買い物を終えたところに、「YUKI デリ」の社長・結城旭(大森南朋)が。結城が口にした「仕事なんてやってられないよ、こんな天気のいい日に」と言う笑顔が、強烈に記憶に残ります。このシーンをみて、真面目に仕事に取り組んでいないのでは?と思わせる結城のセリフに嫌な予感が。

皆川灯(石原朱馬)

その日の夜、ピザを口にした灯は、アナフィラキシーショックを起こし、命を落としてしまいます。かわいらしい赤いリボンが巻かれたツインテールのまま、眠るように手術室で横たわる灯。亡くなった灯の頬を触り、ぬくもりのなさに気づいてしまった紘海の表情と、景吾の悲痛な叫びからは、娘を失った大きな絶望が伝わってきました。

中越紘海(北川景子)、皆川灯(石原朱馬)

灯の葬儀を終えたある日、「YUKI デリ」の社長による記者会見が開かれますが、ピザにエビ・カニが混入した経路は分からないまま。結城は、「子どもが何を口にするかは、大人の手に委ねられています。何かあったら大人の責任です」と宣言。被害者である灯の親、つまり紘海が悪いとも取れる言葉に、紘海は大きなショックを受けます。勢いよくテレビを消し、頭を抱える紘海の表情からは自分を責める思いが伝わってきて、こちらまで苦しくなりました。

灯の死について自分を責める紘海は、景吾と離婚。「YUKI デリ」の食品混入の真相も分からないまま、結城は不起訴になっていました。悲しみから立ち直れず、憎しみがつのり続ける紘海は、情報を集めて結城と同じ料理教室に通い、接触をはかります。

1年ぶりに会った結城は会見と同じように、「子どもは親を信頼して口にするわけですから、子どもの責任は親にある」と紘海に向かって軽々しく言い放ちます。紘海からすれば、「お前がそれを言うのか」という気持ちのはず。震える手で包丁を握りしめる紘海の殺意溢れる表情に、恐ろしさを感じました。

結城旭(大森南朋)

包丁を手に結城の自宅へ向かう紘海。鋭い眼光を光らせ、いざ結城を殺そうと向かった矢先、結城の長女である梨々子(平祐奈)の家庭教師・玖村毅(阿部亮平)が。紘海は計画を断念。とんでもないことをしようとしていたと息を切らして、震えながら包丁を川に捨てる紘海。結城の自宅前に停めていた車に乗り、帰路につきます。殺したいほど憎いのに、殺人を犯そうとしている自分が恐ろしい。憎しみと恐ろしさの間で揺れる紘海の表情に胸が締め付けられました。

そのころ結城の自宅では、結城の次女・萌子(倉田瑛茉)は、かくれんぼとして勝手に隠れる遊びをしていました。萌子は、外に停めてあった紘海の車に隠れていたのです。萌子が出てきて驚く、紘海。ひょんなことから結城の娘を誘拐することになってしまった紘海は、萌子を殺してしまえば、別の形で復讐(ふくしゅう)が可能になることに気づき、萌子を自宅へと連れて帰ります。紘海の表情には怯えはなく、決意を固めたが故の冷ややかな狂気が感じられました。

からっぽの自室で凶器を探す紘海の目に止まったのは、灯の髪飾りに使っていた赤いリボン。葛藤しながら震える手で萌子の首を締めようとした瞬間、萌子がある歌を口ずさみます。それは、紘海と灯が登園しながら歌っていた汽車の歌。灯との幸せな日々を思い出した紘海は、表情をゆがめ、涙を流しながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と座り込んでしまいます。そんな紘海を慰める萌子。紘海が灯を失ってからの絶望の深さを表現する北川さんの演技は涙を誘いました。

中越紘海(北川景子)、結城萌子(倉田瑛茉)

萌子は、紘海に対して「もえのママ?」と話しかけます。萌子の問いに、紘海は「ママじゃないよ。お母さん」と答えます。亡くなった時の灯と同じ歳の萌子に「お母さん」と呼んでもらうことは、紘海にとって一種の救いになるものだったのでしょう。結城に対して憎しみを感じていたのとは、別の狂気を感じる紘海の表情に、ぞくっとさせられるラストでした。

第二子出産後初めての連続ドラマ主演となる北川さん。1シーン1シーンの紘海の葛藤が痛いほど伝わってきて、子どもを思い絶望する姿に何度も目が釘付けになりました。紘海目線で見れば、無責任な社長に見える結城。誤解を招く言動をしているだけで、結城自身にもさまざまな事情があるのでは?と感じました。

紘海が誘拐まがいのことをしてしまったところで幕を閉じた第1話。紘海と萌子の生活はどうなっていくのか。「YUKI デリ」の食品混入事故の真相、事件を追う記者・東砂羽(仁村紗和)の動きも気になるところ。次回の放送も楽しみです!

中越紘海(北川景子)

取材・文:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
miyoka
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