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紘海(北川景子)が娘の戸籍取得のために敵の元妻に接近【あなたを奪ったその日から】

2025.05.05

紘海(北川景子)が娘の戸籍取得のために敵の元妻に接近【あなたを奪ったその日から】

『あなたを奪ったその日から』第3話 レビュー

あなたを奪ったその日から』第2話で、萌子(倉田瑛茉)を手放すことができず、萌子に中越美海という名前を与え、共に暮し始めた主人公・中越紘海(北川景子)。第3話では、第2話から3年の月日が経過し、美海(前田花)は6歳になっていました。

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紘海と美海の暮らしは、穏やかで明るいものに。部屋には家具が増え、第2話までの状況とは様変わりしています。美海は明るく活発で、電車が大好きな“子鉄”に成長。結城家で暮らしていたときの様子とは全く異なり、紘海と暮らしているからこそ今の美海があるのかもしれないと思ってしまいました。

中越紘海(北川景子)、中越美海(前田花)、野口初芽(小川李奈)

とはいえ、紘海と美海の暮らしは簡単なものではない様子。戸籍も住民票もない美海は保育園にも幼稚園にも通うことができない。紘海は、職場に子どもを育てていることを告げられないため、廃棄の絵本を持ち帰る時もごまかすシーンも。3年間、嘘と共に美海を育ててきた紘海はどこか吹っ切れているようにも見えます。

結城旭(大森南朋)は、元妻・江身子(鶴田真由)の父が経営する会社の役員として働き、新業態のスーパーの責任者になっていました。一方で、萌子のことを諦めたわけではなく、ビラを配るなどして3年間ずっと捜索を続けています。新しい仕事をして、毅然(きぜん)とした態度を取っていても、萌子を亡くした苦しみは癒えていないのでしょう。態度には出ない結城なりの子どもへの愛を感じます。しかし、それは大学生になった梨々子(平祐奈)には伝わっていないのでしょう。二人の間には相変わらず険悪なムードが漂っています。

“子鉄”へと成長した美海の夢は電車の車掌になること。学校に通って勉強して、大学を出て、鉄道会社に就職したい。しかし、戸籍がなければ高校にも入学できなければ、就職はもちろん、アルバイトも困難です。具体的な夢を語る美海のために、紘海は動き出します。区役所であることないことを語る紘海。嘘をつくときには淡々と語っていた紘海は、夢を持つ美海のためという主張になった瞬間、必死な形相に変化します。美海のために、学校に通わせたい、夢をかなえてやりたいという感情が、嘘ではないこと、美海に対して真の愛情があることが伝わる印象的なシーンでした。

中越美海(前田花)

戸籍を取るために紘海がやらなければならないことは2つ。元夫の景吾(高橋光臣)から「美海は自分の子ではない」と証言してもらうこと、紘海と美海の血が繋がっていることを証明すること。景吾と再会した時に、灯のいない人生を生きていくのは苦しい、正気になんてなれない。そう吐露する紘海を見ていて、灯の死について紘海は初めて悲しみを口に出すことができたのかもしれないと思いました。辛いですね……。

美海は灯の代わりではないが、それでも紘海の心を支えてくれている。憎き結城の娘であり、一度は殺そうとしたこともある美海との3年間の生活は、紘海にとってとても豊かなものだったのでしょう。それは美海にとっても同じ。大好きなガチャガチャの景品を紘海に渡し、お揃い!と喜ぶ様子から、紘海が3年間で美海に注ぎ続けた愛情の深さを感じました。灯に対する悲しみと美海への愛情や過去を奪った後悔に苛まれる紘海の感情はとても複雑です。しかし、どちらも一人の母親として成立する感情でしょう。北川さんのふとした表情からは、葛藤と決意のどちらも感じられ、引き込まれてしまいました。

中越紘海(北川景子)、中越美海(前田花)

紘海は、萌子の姉・梨々子のSNSをリサーチし、萌子の母・江身子が務めるスナックへ。実の娘に関心の無い江身子と美海を大切に思う紘海の対比を強く感じさせるシーンでした。萌子についても死んだと、諦めている様子です。紘海は江身子に睡眠導入剤を飲ませ、頬の内側の細胞を採取。しかし紘海は、江身子が寝つく直前に語った、灯が亡くなった食品事故の真相が気になってしまいます。美海との穏やかな生活を守るためには、結城に接触するべきではない。それでも、紘海の中に事故の後に抱えていた結城への憎しみが、生々しくよみがえってきてしまうのです。フラッシュバックに襲われていく紘海の表情は見ていて苦しかったです……。

中越紘海(北川景子)

灯を亡くした苦しみは、美海をどんなにかわいがろうとなくなることはないのでしょう。その時、景吾から「元夫として協力する」という連絡が。その連絡によって切り替えることができた紘海は、美海の頬の内側の細胞も採取しDNA鑑定の結果をゲット。美海には、無事中越美海としての戸籍が出来上がりました。紘海は、美海の未来のために結城への恨みは忘れようと心に固く誓います。車掌さんと同じ黒のランドセルを喜ぶ美海はとてもかわいらしく、それを見守る紘海の表情も穏やかです。このままなにもありませんようにと思わず願ってしまうほどでした。

木戸江身子(鶴田真由)、中越紘海(北川景子)

それから7年。美海は中学生になっていました。二人のやりとりは、まるで本当の親子のよう。幸せな7年だったことが伺えます。紘海は、結城への恨みと憎しみを捨てて生きてきたのでしょう。しかし、そんな穏やかな生活を脅かす出会いが。紘海は、梨々子の家庭教師だった玖村毅(阿部亮平)と再会してしまいます。10年前と様子が違う玖村に驚きました。結城家への恨みのある二人が出会うことで何が起きてしまうのでしょうか。その数週間後、紘海はスーツ姿で結城と対峙(たいじ)していました。

結城旭(大森南朋)

紘海の中にうずまく複雑な感情が痛いほど伝わってきた第3話。少しのきっかけで灯を思って涙を流してしまう姿や結城への憎しみを思い出してしまう姿に胸が痛みました。一方で、美海への愛情や未来への責任を感じているのも事実。一言では表せない感情を北川さんが巧みに表現しています。第3話までであっという間に10年が経過。この先、どんな展開になっていくのでしょうか。次回の放送も楽しみです!

中越美海(前田花)

取材・文:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
miyoka
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