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表現力が光る「Seventeen」専属モデル 重なった筆者のつらい記憶 ドラマ・『僕達はまだその星の校則を知らない』

2025.08.04

表現力が光る「Seventeen」専属モデル 重なった筆者のつらい記憶 ドラマ・『僕達はまだその星の校則を知らない』
磯村勇斗さん主演の月10ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)の第4話が8月4日に放送されました。

「宇宙の一部になりたい」。
独特の感性を持つがゆえに人生にも仕事にも臆病だった弁護士・白鳥健治(磯村勇斗)が、少子化による共学化で揺れる私立高校に『スクールロイヤー』として派遣されることになり、法律や校則では簡単には解決できない若者たちの青春に、不器用ながらも必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマです。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 白鳥健治(磯村勇斗)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 白鳥健治(磯村勇斗)

「世界の中の人がみんな私にそう言ってる気がする」

第4話では、「教師のミスによる個人情報漏えい」が扱われました。近年、多くの学校でデジタルツールやインターネットを活用した「ICT教育」が導入されています。

「個人情報流出」は、ICT教育の導入を進めるうえであってはならない問題です。しかし、健治の勤める濱ソラリス高校では、「1年梅組」の成績が全校生徒に流出する事件が起きてしまいました。

成績一覧が流出したことで、成績がクラスで最下位であることを知られてしまったのが江見芽衣。
演じるのは、第103回全国高校サッカー選手権大会応援マネージャーを務めたSeventeen専属モデルの月島琉衣さん(17)です。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 左:濱ソラリス高校・井原久校長(尾美としのり)中央: 江見芽衣(月島琉衣)右:母・果歩​​(安藤玉恵)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 左:濱ソラリス高校・井原久校長(尾美としのり)中央: 江見芽衣(月島琉衣)右:母・果歩​​(安藤玉恵)

江見は成績が最下位であると同時に、学習評価に「トンチンカンな面あり」と書かれていたことに、ショックを受けます。さらに一部の生徒に「あ〜トンチンカンの」と揶揄(やゆ)されてしまいました。

「なんか、世界の中の人がみんな私にそう言ってる気がする」

​自宅で「トンチンカン、トンチンカン、トンチンカン……」とつぶやく江見を見て、思い出したことがありました。たった1人の一言がきっかけで「みんなに嫌われた」と思い込み、心を閉ざした記憶。筆者は江見に過去の自分が重なり、胸が苦しくなりました。

守るべきは学校の体裁か、生徒の心か

​​情報漏えいの原因は、副校長・三宅夕子(坂井真紀)が成績一覧を“誤って公開”したこと。
江見の学習評価に「トンチンカン」と記載したのも三宅副校長でした。
第1話でスラックスの制服を履いていた女子生徒に「そっちだったの?」と失言するなど、あまりにも「うっかり」が多い印象です。ただし、情報漏えいは「うっかり」では済まされません。​
『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 副校長・三宅夕子(坂井真紀)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 副校長・三宅夕子(坂井真紀)

​​理事長の尾碕美佐雄(稲垣吾郎)に校長・井原久(尾美としのり)と、スクールロイヤーの健治が状況を報告する中、学校の顧問弁護士である​​長谷川良樹​​(田村健太郎)は三宅副校長に自主退職を迫ります。
三宅副校長は「生徒に謝罪したい」と訴えますが、長谷川は「謝罪しないでください」と​​一蹴​​。​

​対応方針も健治と長谷川で意見が分かれました。
健治は生徒の心に寄り添い、必要があれば保護者説明会の実施や裁判所への情報開示請求を行うことを​​主張​​します。
一方、長谷川はできる限り事を荒立てず、三宅副校長に責任を負わせる形で処理したい考え。

尾碕理事長は、健治ではなく、長谷川の意見を採用しました。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 左:顧問弁護士・長谷川良樹​​(田村健太郎)、右:理事長・尾碕美佐雄(稲垣吾郎)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 左:顧問弁護士・長谷川良樹​​(田村健太郎)、右:理事長・尾碕美佐雄(稲垣吾郎)

学校の体裁を考えるなら長谷川が正しいのでしょうが、個人的には健治の口ぐせのように「ムムス」とうなりたくなります。
トラブルが起きても本質的な改善をせず、「とりあえず」誰かを処分して対応終了。
「謝ったら負け」の考え方にも同意できません。

今回の情報流出は確かに三宅副校長のミスが原因ですが、社会の嫌な部分を見せつけられました。
学校の顧問弁護士・長谷川役の田村さんの演技も絶妙にいやらしく、対比する形で健治の生徒に対する真摯さが際立っていました。

「トンチンカン」に込められた副校長の真意

​放課後、江見の母親の​​果歩​​(安藤玉恵)と、母を追ってきた江見が学校に現れます。
対応した校長・井原久(尾美としのり)から三宅副校長が退職すると聞き、動揺した江見は「副校長は悪くない、悪いのは自分だ」と訴えます。

会話を聞いていた健治は、「江見は悪くない」と断言。
うっかりミスをした副校長も、ミスやうわさ話を広めた人間も、そういう環境を作った学校も……「つまりみんなが悪い」。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 中央:白鳥健治(磯村勇斗)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 中央:白鳥健治(磯村勇斗)

【江見】「つまり……副校長先生のミスというビッグバンから罪なる宇宙の膨張が始まったということですか?」
【健治】「そう! わかりやすいですね」
【江見】「ということは、白鳥さんはビッグバン前は無の状態ではないという宇宙のインフレーション派ですね?」
【健治】「そうです! あなたは?」
【江見】「私は、“量子的ゆらぎのみ”ってほうが好き」

健治の話を聞き、ビッグバンの話と結びつける江見。そのまま2人は天文の話で盛り上がりました。

「もうテストの話より僕は、江見さんと一緒に星を見たいと思っています。」

聞いた相手が「口説き文句なのでは?」と勘違いしそうな台詞を躊躇(ちゅうちょ)なく口に出せるのは健治の強み。健治のまっすぐな言葉が、江見親子の気持ちを解きほぐしました。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 幸田珠々(堀田真由)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 幸田珠々(堀田真由)

健治たちが屋上へ向かうと、三宅副校長と国語教師の幸田珠々(堀田真由)がいました。
三宅副校長は、江見親子を目にした瞬間、走り寄って謝罪。
「トンチンカン」を江見の「おもしろい感性」を表現するオノマトペとして使ったと説明しました。

同じ言葉でも使い方や捉え方次第で、誰かを励ますこともあれば傷つけることもあります。頭では理解していても、誤解させないように言葉を紡げているかどうか、今回のエピソードを通じて改めて考えさせられました。
第4話を通じて印象に残ったのは、月島さんが演じる江見の表情の豊かさです。

成績流出を知った時の絶望。

三宅副校長の退職を聞かされた時の焦り。

星を見る時のキラキラした笑顔。

月島さんが江見の心情の変化を、クルクルと表情を変えて表現していました。
月島さん自身も「星を見ることが好き」とのことなので、江見はぴったりの配役です。第5話以降も、等身大の星が大好きな「江見芽衣」を見せてくれると確信しています。
『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話  江見芽衣(月島琉衣)

『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話 江見芽衣(月島琉衣)

取材・文:宅野美穂
都内在住のライター。主に、インタビュー記事を執筆。本とゲームと音楽が好き。
miyoka
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